コモディティという世界

「価格推移へのコメント」を担って実感したプラチナの価値

当メディアのお仕事ではありませんが、2024年3月からある買取サービスで「プラチナ」の価格推移に対し、毎日の価格推移を専門家として分析するお仕事をしています。ここ数年、金の高騰が話題になっていますが、プラチナ(白金)も金と同様、毎日の価格が推移することで所有者に資産性をもたらします。1カ月間、毎日プラチナを見続けて感じた「プラチナとは何か」を、投資メディアへの寄稿としてお伝えします。


ボラティリティの激しいプラチナ

プラチナは金のような資産性もありますが、金よりも世の中の動きを値段に反映する素材です。プラチナの最大の特徴は、価格変動性(ボラティリティ)がとても大きいことです。今日20円上がったかと思えば、翌日には20円下落することも頻繁に発生します。かつ、その理由が複合的で、なかなか分析が難しいことです。そのなかでプラチナの動きには2つの特徴があるといえます。


株式相場の影響

まずは株式相場の影響です。プラチナは全世界の製造現場で利用されているため、世界景気が上昇すればプラチナの需要が上がります。反対に景気が下落すると、プラチナの値も下がります。アメリカで発表される様々な統計や、それをもとにしたダウ平均株価などの指標は、プラチナの値動きと連動します。


例外もあります。指標が上昇するということは、それだけ多額のお金(投資資金)が株式や投資信託に流入することを意味します。そうするとプラチナを投資対象として所有する人が減るため、プラチナの価格は下落します。


2024年の春は日本がマイナス金利の撤廃を発表し、今後の本格的な利上げの可能性を示唆されています。対してアメリカも利下げの可能性を報じており、筆者のコメントでも言及が多くなっている部分です。また円高・円安の為替相場も各国の株式に影響力を有しているため、間接的にプラチナの価格と関連するといえます。


ロシアをはじめとしたカントリーリスク

一方、プラチナは生産国リスクもあります。主なプラチナの生産国(採掘国)としては、南アフリカ・ロシア・オーストラリアが代表的です。このなかで投資家が最も懸念するのは、ウクライナ侵攻を続けているロシアです。


ロシアは進行を続けていることで、アメリカや日本をはじめとした西側諸国から経済制裁を受けています。この制裁がプラチナの生産と、複数の消費国への輸出に弊害があるとすれば、プラチナの価格は下落すると考えられます。


残る南アフリカとオーストラリアはロシアに比べると治安は安定していますが、今後はわかりません。どのようなカントリーリスクがあるのかを常に認識していきましょう。



プラチナに投資するにはどうするか

プラチナに投資するにはどうするか。手っ取り早いのは金の延べ棒と同様、プラチナの延べ棒を持つことです。この延べ棒のことを「インゴット」といいます。そうではなく、いわゆる株式投資としてプラチナの値動きに期待する場合、以下の2つが考えられます。


純プラチナ投資信託(プラチナの果実:三菱UFJ信託銀行)

プラチナを裏付けとした上場信託(ETF)です。三菱商事がプラチナを拠出し、三尾UFJ信託銀行が現物を裏付けとする受益権(ETF)を発行します。ETFとして東京証券取引所に上場しています。プラチナの果実と同様、「金の果実」や「パラジウムの果実」も存在します。


白金標準先物(プラチナ)

先物取引です。将来の決められた日にプラチナを売買することを事前に約束する取引です。白金の先物は500g単位の「白金標準先物」と、100g単位の「白金ミニ先物」、「白金限日先物」があります。


プラチナに関連する個別株に投資する

投資信託や先物ではなく、プラチナに関連する個別株に直接投資する方法があります。貴金属を扱う会社はもちろん、製造業にも幅広く使われているプラチナですが、あくまで製造素材です。プラチナの値動きが企業の株価まで左右する銘柄は多くはないでしょう。



注目は「次世代の」半導体

注目は半導体です。日本では熊本や北海道にて大工場が稼働することで特定地域の様子を大きく変えている半導体ですが、この技術にプラチナが使われています。急成長するアメリカのエヌビディア社も含め、半導体領域が成長すればプラチナの値が上がり、逆に半導体銘柄が下落すればプラチナも下落するという流れは間違いないでしょう。


ただ、半導体=プラチナが更に結びつきを強めるのは、「次世代」という声も強いです。現時点の現場で主流となっている技術よりも、研究段階であり、今後主力になっていく半導体の開発・提供技術において、よりプラチナの使用が増加していくという見解があります。


コモディティが大きいことは、上手に分散投資の1つと組み込むことで、着実な資産形成に繋げられることを意味します。ぜひ、さまざまな形でのプラチナ投資を検討してみましょう。

この連載の一覧
「価格推移へのコメント」を担って実感したプラチナの価値
第54回「小麦の国際価格、急伸 今後もロシア・ウクライナ関連ニュースに注目」
第53回「米国のインフレ鈍化鮮明に 株価は上昇・コモディティは反発傾向」
第52回「トレード準備 まずは口座開設」
第51回「金(ゴールド)、価格調整進む 3カ月半ぶり安値」
第50回「穀物相場は反発傾向 各国中銀は相次ぎ利上げ」
第49回「NY金相場は反発 FRBのタカ派姿勢はブラフ(はったり)!?」
第48回「小麦の国際価格、下げ渋り 2年半ぶり安値から戻す」
第47回「米国株相場は堅調 ただコモディティ関連ETFを見てみると」
第46回「ゴールドマン、コモディティ相場に強気見通し」
第45回「金(ゴールド)、再び2000ドル割れ」
第44回「小麦の国際価格、下落継続 2年ぶりの安値」
第43回「国内外の金(ゴールド)価格、伸び悩み 底堅い基調は続く?」
第42回「原油価格、今週は下落 100ドル突破の声と下落継続の声」
第41回「国内ガソリン価格、4週連続値上がり! 軽油も灯油も値上がり!」
第40回「原油価格、急反発 先行きに強気な見方多い」
第39回「金(ゴールド)、2000ドル近辺で高止まり マーケットの不安は本当に薄れたのか?」
第38回「金(ゴールド)、2000ドルの大台を突破!!! 約1年ぶり高値」
第37回「原油価格が約1年3カ月ぶり安値 昨年高値からほぼ半値」
第36回「小麦の国際価格、1年8カ月ぶり安値 なお政府の売渡価格は5%値上げ」
第35回「小麦価格、1年半ぶり安値 世界の食料価格も21年9月以来の低水準」
第34回「コーヒー(coffee)、反発傾向を強める これ以上の価格上昇でコーヒー値上げは困る」
第33回「欧州ガス先物価格の下落顕著、21年9月以来の安値 ガス代は値下げへ」
第32回「WTI原油先物、しばらくは横ばい推移か!?」
第31回「金(ゴールド)、FOMCで急騰しECBで急落」
第30回「ゴールドマン・サックス『今年はコモディティの年になる』と予想」
第29回「センチメントに踊らされるマーケット 金(ゴールド)は着々と大台目指す」
第28回「米インフレ鈍化でドル安 金(ゴールド)には追い風」
第27回「今日は年内最終取引日 今年1年間のパフォーマンスは?」
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【コモディティという世界】第25回「コーヒー(coffee)、下落傾向が続く 今年高値からは40%超の急落 国内価格にも影響か!?」
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独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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