重要イベント「FOMC」を通過
米連邦準備理事会(FRB)は今週開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FF金利の誘導目標を0.75%引き上げて、3.75-4.00%としました。これは市場の予想通りの結果。そのうえで、これまでに実施した「金融引き締めの累積効果」を考慮して、今後の利上げ幅がより小規模なものになる可能性を示唆しました。
FOMC声明には「FRBの急速な利上げの影響がまだ浸透過程にある点に留意し、政策金利の水準を長期的なインフレ率の2%回帰に向けて、十分制約的な水準に設定することを意図する」との新たな文言が加わりました。
また、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「利上げペースを見直す時期が到来しつつあるとして、早ければ次回12月もしくは、その次の会合かもしれない」と述べています。ただ、12月会合での政策判断について「まだ何も決定していない」としたほか、利上げの「一時停止を考えるのは非常に時期尚早だ」とクギを刺しています。
前回の記事でもご紹介した米ウォールストリート・ジャーナルのFEDウォッチャー、ニック・ティミラオス記者がFOMC前に伝えた(かなりドタバタ劇がありましたが)ように、「終わってみればニック氏の記事通り」の内容になったかと思います。
主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスの60分チャートを見ると、「ドルは底堅く推移した」状況。週明け10月31日の110台後半から3日には113台前半まで値を上げています。
出所:Trading View
米国株は頭の重い展開
一方、米国株相場は頭の重い展開となっています。多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は週明け10月31日、3900付近でスタートしましたが、FOMC後には3700を割り込む場面がありました。第11回の記事でお伝えしましたが、米国株相場は巨大なマーケットのため、コモディティ市場にも大きく影響を与えます。そのため、米国株の動向には注意を払いところです。
出所:Trading View
なお、S&P500種株価指数は、米国大型株の動向を表す株価指数で、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。ちなみに、1982年から現在までのS&P500種株価指数と日経平均のパフォーマンスの推移を見ると、1987年のブラックマンデーや2000年代初期のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショックを乗り越えた後も、米国経済が力強い成長を続けてきたことが分かります。
ロシア・ウクライナ情勢で小麦価格は乱高下
プーチン露大統領は10月31日夜、ウクライナで滞留する穀物などを輸出するための国際的合意について、「破棄ではないが参加を停止する」と発言。「黒海イニシアチブ」と呼ばれる食糧輸出の合意は、今年7月に国連やトルコなどが仲介しており、ロシア政府は10月30日に合意停止を表明していました。これが大きな買い材料となり、国際指標である米シカゴ商品取引所の小麦先物(期近)は1ブッシェル=9ドルを上回りました。
ただ、ロシア政府は2日、この方針を転換し、黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意への復帰を表明しました。小麦先物はこれを受けて8ドル前半まで売り込まれました。
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もっとも、19日の期限を前にロシアが「黒海イニシアティブ」を駆け引きの道具に使うとの懸念は依然として残ります。
ある市場関係者からは小麦価格の今後の動向について「目先はまだ不安定で乱高下する展開が予想されるが、中長期的にはトレンドが強気に転じる可能性が高い。今週、ロシアによるウクライナの輸出合意への再参加表明を受けて売りが強まる場面もあったが、既にそれ以前の水準まで値を下げており、これ以上値を切り下げる理由とはならないだろう。ロシアがこの先再び離脱する可能性も十分に高く、一段と強硬な手段に打って出ることがあれば、欧米の制裁強化によって輸出が更に減少することもあり得る」との声が聞かれています。