コモディティという世界

【コモディティという世界】第19回「重要イベントの相次いだ今週、小麦価格は乱高下 今後は如何に!?」

重要イベント「FOMC」を通過


米連邦準備理事会(FRB)は今週開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、FF金利の誘導目標を0.75%引き上げて、3.75-4.00%としました。これは市場の予想通りの結果。そのうえで、これまでに実施した「金融引き締めの累積効果」を考慮して、今後の利上げ幅がより小規模なものになる可能性を示唆しました。

 

FOMC声明には「FRBの急速な利上げの影響がまだ浸透過程にある点に留意し、政策金利の水準を長期的なインフレ率の2%回帰に向けて、十分制約的な水準に設定することを意図する」との新たな文言が加わりました。

 

また、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「利上げペースを見直す時期が到来しつつあるとして、早ければ次回12月もしくは、その次の会合かもしれない」と述べています。ただ、12月会合での政策判断について「まだ何も決定していない」としたほか、利上げの「一時停止を考えるのは非常に時期尚早だ」とクギを刺しています。

 

 

前回の記事でもご紹介した米ウォールストリート・ジャーナルのFEDウォッチャー、ニック・ティミラオス記者がFOMC前に伝えた(かなりドタバタ劇がありましたが)ように、「終わってみればニック氏の記事通り」の内容になったかと思います。

 

 

主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスの60分チャートを見ると、「ドルは底堅く推移した」状況。週明け10月31日の110台後半から3日には113台前半まで値を上げています。


出所:Trading View




米国株は頭の重い展開


一方、米国株相場は頭の重い展開となっています。多くの機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数は週明け10月31日、3900付近でスタートしましたが、FOMC後には3700を割り込む場面がありました。第11回の記事でお伝えしましたが、米国株相場は巨大なマーケットのため、コモディティ市場にも大きく影響を与えます。そのため、米国株の動向には注意を払いところです。

 

出所:Trading View

 

 

なお、S&P500種株価指数は、米国大型株の動向を表す株価指数で、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。ちなみに、1982年から現在までのS&P500種株価指数と日経平均のパフォーマンスの推移を見ると、1987年のブラックマンデーや2000年代初期のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショックを乗り越えた後も、米国経済が力強い成長を続けてきたことが分かります。




ロシア・ウクライナ情勢で小麦価格は乱高下


プーチン露大統領は10月31日夜、ウクライナで滞留する穀物などを輸出するための国際的合意について、「破棄ではないが参加を停止する」と発言。「黒海イニシアチブ」と呼ばれる食糧輸出の合意は、今年7月に国連やトルコなどが仲介しており、ロシア政府は10月30日に合意停止を表明していました。これが大きな買い材料となり、国際指標である米シカゴ商品取引所の小麦先物(期近)は1ブッシェル=9ドルを上回りました。

  

ただ、ロシア政府は2日、この方針を転換し、黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意への復帰を表明しました。小麦先物はこれを受けて8ドル前半まで売り込まれました。

 

出所:Trading View

 

 

もっとも、19日の期限を前にロシアが「黒海イニシアティブ」を駆け引きの道具に使うとの懸念は依然として残ります。

 

ある市場関係者からは小麦価格の今後の動向について「目先はまだ不安定で乱高下する展開が予想されるが、中長期的にはトレンドが強気に転じる可能性が高い。今週、ロシアによるウクライナの輸出合意への再参加表明を受けて売りが強まる場面もあったが、既にそれ以前の水準まで値を下げており、これ以上値を切り下げる理由とはならないだろう。ロシアがこの先再び離脱する可能性も十分に高く、一段と強硬な手段に打って出ることがあれば、欧米の制裁強化によって輸出が更に減少することもあり得る」との声が聞かれています。




この連載の一覧
「価格推移へのコメント」を担って実感したプラチナの価値
第54回「小麦の国際価格、急伸 今後もロシア・ウクライナ関連ニュースに注目」
第53回「米国のインフレ鈍化鮮明に 株価は上昇・コモディティは反発傾向」
第52回「トレード準備 まずは口座開設」
第51回「金(ゴールド)、価格調整進む 3カ月半ぶり安値」
第50回「穀物相場は反発傾向 各国中銀は相次ぎ利上げ」
第49回「NY金相場は反発 FRBのタカ派姿勢はブラフ(はったり)!?」
第48回「小麦の国際価格、下げ渋り 2年半ぶり安値から戻す」
第47回「米国株相場は堅調 ただコモディティ関連ETFを見てみると」
第46回「ゴールドマン、コモディティ相場に強気見通し」
第45回「金(ゴールド)、再び2000ドル割れ」
第44回「小麦の国際価格、下落継続 2年ぶりの安値」
第43回「国内外の金(ゴールド)価格、伸び悩み 底堅い基調は続く?」
第42回「原油価格、今週は下落 100ドル突破の声と下落継続の声」
第41回「国内ガソリン価格、4週連続値上がり! 軽油も灯油も値上がり!」
第40回「原油価格、急反発 先行きに強気な見方多い」
第39回「金(ゴールド)、2000ドル近辺で高止まり マーケットの不安は本当に薄れたのか?」
第38回「金(ゴールド)、2000ドルの大台を突破!!! 約1年ぶり高値」
第37回「原油価格が約1年3カ月ぶり安値 昨年高値からほぼ半値」
第36回「小麦の国際価格、1年8カ月ぶり安値 なお政府の売渡価格は5%値上げ」
第35回「小麦価格、1年半ぶり安値 世界の食料価格も21年9月以来の低水準」
第34回「コーヒー(coffee)、反発傾向を強める これ以上の価格上昇でコーヒー値上げは困る」
第33回「欧州ガス先物価格の下落顕著、21年9月以来の安値 ガス代は値下げへ」
第32回「WTI原油先物、しばらくは横ばい推移か!?」
第31回「金(ゴールド)、FOMCで急騰しECBで急落」
第30回「ゴールドマン・サックス『今年はコモディティの年になる』と予想」
第29回「センチメントに踊らされるマーケット 金(ゴールド)は着々と大台目指す」
第28回「米インフレ鈍化でドル安 金(ゴールド)には追い風」
第27回「今日は年内最終取引日 今年1年間のパフォーマンスは?」
第26回「コーヒー(coffee)、下落一服も今年高値からは35%安の水準 薄いコーヒーはもう飲まなくて良い!?」
【コモディティという世界】第25回「コーヒー(coffee)、下落傾向が続く 今年高値からは40%超の急落 国内価格にも影響か!?」
【コモディティという世界】第24回「小麦は1年2カ月ぶり・原油は1年ぶり安値 疲弊した家計負担は軽減するか!?」
【コモディティという世界】第23回「円安ドル高は終了か!? Thank you 財務省! Thank you パウエル!」
【コモディティという世界】第22回「WTI原油先物価格、今週は乱高下 一時は10カ月ぶり安値を付ける」
【コモディティという世界】第21回「コモディティ市場はさえない1週間 原油相場はほぼ2カ月ぶり安値」
【コモディティという世界】第20回「やはりドルは天井を打ったのか!? 金(ゴールド)には追い風!!」
【コモディティという世界】第19回「重要イベントの相次いだ今週、小麦価格は乱高下 今後は如何に!?」
【コモディティという世界】第18回「ドルは天井を打ったのか!?金や原油などコモディティには追い風」
【コモディティという世界】第17回「電気代は来春以降、2割から3割値上がりする可能性!?」
【コモディティという世界】第16回「投資は余裕資金で! 今こそPayPayポイントで金(ゴールド)投資 」
【コモディティという世界】第15回「FXとも密な関係 南アフリカの通貨ランドとプラチナ」
【コモディティという世界】第14回「主要中銀の金融引き締めでリスク資産下落 シートベルトの着用は必須」
【コモディティという世界】第13回「私が考える最強のコモディティ関連ETF『四天王』・その2」
【コモディティという世界】第12回「私が考える最強のコモディティ関連ETF『四天王』・続」
【コモディティという世界】第11回「コモディティ関連ETF『四天王』「ククク…奴は四天王の中でも最弱」と言われるあの銘柄は?」
【コモディティという世界】第10回「投資の神様が保有するコモディティ関連銘柄」
【コモディティという世界】第9回「秋の値上げラッシュ迫る!すぐにでもコモディティに投資したいが商品多すぎ・・・」
【コモディティという世界】第8回「値上げラッシュの秋迫る!岸田首相は小麦の売渡価格据え置きを指示」
【コモディティという世界】第7回「金(ゴールド)の主な価格変動要因は?」
【コモディティという世界】第6回「金(ゴールド)の「調整局面」は終了か?「台湾有事」への懸念高まる!?」
【コモディティという世界】第5回「原油の価格変動要因って何?最高値を付ける可能性はあるの?」
【コモディティという世界】第4回「石油はあと30年から50年で枯渇する!?」
【コモディティという世界】第3回「そもそもコモディティ(商品)って何(続)」
【コモディティという世界】第2回「そもそもコモディティ(商品)って何?」
【コモディティという世界】第1回「原油高騰と円安で物価上昇!家計を直撃 どうする?」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

中村 知博の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております