金(ゴールド)、再び2000ドル割れ
先週以降、金価格の上値の重さが目立ってきています。金の国際価格指標となるニューヨーク商品取引所(COMEX)先物は昨日18日、1トロイオンス=1954ドル台まで売られ、3月下旬以来の安値を更新しました。良好な米経済指標や相次ぐ米連邦準備理事会(FRB)高官からのタカ派発言を受けて米長期金利が上昇傾向を強めると、金利のつかない金の投資妙味が低下し、金先物への売りが広がりました。外国為替市場でドル高が進んだことを受けて、ドルと「逆相関」が生じやすいとされる金に売りが出た面もあります。
NY金先物は金融システム不安で2000ドル台を突破して、中心限月(6月)ベースでは2080ドル台とあと一歩で史上最高値更新というところまで急騰していましたが、今月4日には大きく上髭を付けて、その後はじり安の展開となっています。
NY金先物価格の日足チャート
出所:Trading View
市場関係者からは「せっかく2000ドル台が日常的になっていたのに再び2000ドルを割り込んだ。そもそも論として、そこまで買われていたわけではない。2000ドルより下の水準では買いが入りやすく値を戻すとは思うが、(2000ドルを挟んだ)不思議なレンジとなっている」との声が聞かれました。
NY金先物価格の月足チャート
出所:Trading View
FRBの利上げ継続観測が改めて浮上
今週に入ってからもFRB高官による「タカ派的な発言」が相次いでいます。その影響で市場では「FRBが6月も利上げを継続する」との観測が改めて浮上。米金利上昇&ドル高⇒金への売りにつながりました。以下はFRB高官の発言ですが、米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を有するウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、ローガン米ダラス連銀総裁の発言には特に注意が必要です。
★ボスティック米アトランタ連銀総裁「利下げは基本的な考えに入っていない」「インフレ率が急速に低下するとは考えていない」「インフレとの戦いはまだ長い道のり」
★カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁「まだ取り組むべき仕事がある」「わずか数カ月の良いデータに騙されてはならない」「インフレ目標に到達するにはまだ長い道のりがある」
★メスター米クリーブランド連銀総裁「労働市場の状況に若干の減速が見られるが、依然として労働市場はかなりタイト」「金利は十分に制限された水準にない」
★バーキン米リッチモンド連銀総裁「必要なら追加利上げの可能性」「インフレを最終的かつ確実に沈静化させたい」
★ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁「経済は容認できないほどの高インフレに直面」「政策の効果を実感するには時間がかかる」
★ローガン米ダラス連銀総裁「現在のデータは、利上げ停止を正当化しない」
★ブラード米セントルイス連銀総裁「インフレに対する保険政策として利上げを続けることを支持」
金価格とドル指数の推移
出所:Trading View
6月FOMCでは0.25%の利上げ確率がじわり上昇
米経済指標の上振れやFRB高官のタカ派的な発言を受けて、FRBの利上げ長期化観測が高まると、今後も米金利上昇&ドル高⇒金への売り圧力の構図となり、一段の下落余地が生まれます。次回FOMCまでは4週間ほどありますので、その間、様々な思惑で相場が上下することが想定されます。
なお、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、6月13-14日のFOMCでは0.25%の利上げ確率が1週間前の10.7%から36.2%まで上昇。据え置きの確率は1週間前の89.3%から63.8%まで低下しています。利上げ確率が50%近くになってくると、今は底堅く推移している米国株相場なども荒い値動きになる可能性があるため、注意が必要となりそうです。
出所:CME FedWatch Tool