金(ゴールド)、2000ドル近辺で高止まり
先週のコラムでもご紹介したとおり、金(ゴールド)先物は2000ドルの大台を突破し、昨年3月上旬以来約1年ぶりの高値を付けています。背景には、いわゆる「金融システム不安」があり、安全資産とされる金需要の高まりがありました。
ただ、今週に入るとこの「金融システム不安」が後退しています。経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)の引受先が決まったほか、米当局が緊急融資制度の拡充など銀行への支援策などを背景に、金融システム不安が薄れた格好です。貸し出し環境が厳しくなり景気を冷やすとの過度な警戒も和らでおり、株価などは戻りが顕著となっています。
ただ、金価格は節目の2000ドル近辺で高止まり。昨日30日のニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引の中心となる6月限の終値は前日比13.2ドル高の1トロイオンス=1997.7ドルとなっています。外国為替市場でドルが下落したため、ドルと「逆相関」とされる金に買いが入った格好です。
NY金先物価格の日足チャート
出所:Trading View
マーケットの不安は本当に薄れたのか?
ところで、マーケットの不安は本当に薄れたのでしょうか?もし、本当に投資家心理が改善しているようなら、今後、金相場の重しになる可能性があります。
ここで、株式や為替トレーダーがよく参考にしている指標「VIX=恐怖指数」を見てみましょう。
VIX指数の日足チャート
出所:Trading View
シカゴ・オプション市場(CBOE)でS&P500種株価指数オプションの値動きに基づいて算出される変動性指数=VIX指数は「金融システム不安」が高まった3月上旬以降、低下傾向が続いていることが分かります。昨日には一時18.85まで低下し、SVBの経営危機が表面化した3月9日より前の水準に低下しました。
このVIX指数は株式市場が不安定なときに上昇する傾向があるため、投資家の不安心理の動向を映し、「恐怖指数」とも呼ばれています。今週28日には市場の不安心理の高まりを示す水準とされる「20」を約3週間ぶりに下回り、29日と30日にも連日で低下しています。
VIX指数は通常、10~20の範囲内で推移しますが、30を超えると「警戒領域」と言われ、相場は不安定な状態となります。40を超えると過去の暴落の歴史に刻まれるような状況にあると言えます。なお、あの「リーマン・ショック」と「コロナ・ショック」のときには「80」を超える急騰となりました。
VIX指数以外でも投資家心理を確認
みなさんはFear & Greed Index(恐怖と強欲の指数)をご存知でしょうか?これはVIX指数よりも簡単に投資家心理を確認できる便利なツールです。
Fear & Greed Index
出所:CNN
「Fear & Greed Index」は米国のテレビ局CNNが提供している投資家心理に関する指標です。Fearが恐怖、Greedが強欲で「恐怖と強欲の指数」となります。
上の表を見て頂くと分かるとおり、この指数は0~100までの数値で表されており、0~25が「EXTREME FEAR」(極度の恐怖)、25~45が「FEAR」(恐怖)、45~55が「NEUTRAL」(中立)、55~75が「GREED」(強欲)、75~100が「EXTREME GREED」(極度の強欲)となっています。
株の世界では「0」に近づくほど投資家心理が冷え込み、必要以上に株が売り込まれていることから「株価が割安」と判断され、逆に「100」に近づくほど投資家心理が過熱しており、適正な株価を超えて株が買われていることから、「株価が割高」になっていると言われています。投資家心理を客観的に確認したい時にVIX指数とあわせて活用してみてください。株式や為替トレードに限らず、コモディティをトレードする場合にも参考になるはずです。
なお、上の表は30日の数字ですが、「44」となっており、「FEAR」(恐怖)となっています。ただ、あと1ポイントで「NEUTRAL」入りですので、かなり微妙な位置にあると言えそうです。