原油価格は2カ月ぶりの安値を更新
今週のコモディティ市場はさえない1週間となりました。
特に原油先物価格の下落は顕著。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)12月限は18日、一時1バレル=77ドル台半ばまで売られ、期近物としては9月下旬以来約2カ月ぶりの安値を更新しました。要因の1つは、中国の景気減速に伴う原油需要の減少を見込む売り。
中国国家衛生健康委員会の発表によると、中国本土で今週確認された新規の新型コロナウイルス感染者は2万5129人となりました。北京市内最高の人口を抱える朝陽区の飲食店では、今週末中の店内飲食が禁止されるなど、各地で感染拡大防止策が強化されています。同国の景気に与える影響が懸念される中、エネルギー需要減少の見方が強まったようです。
出所:Trading View
もう1つの要因は米連邦準備理事会(FRB)高官らによる講演や寄稿などで、インフレ抑制に向けた追加利上げの必要性に関する言及が相次いだこと。米金融引き締めの長期化が米景気を冷やすとの見方が改めて広がったことです。
17日にはブラード米セントルイス連銀総裁が「現行の政策金利は十分に制約的な水準を下回っている」「少なくとも5%程度まで金利を引き上げる必要があり、より厳格な仮定では7%以上への利上げが推奨される」と発言したほか、18日にはコリンズ米ボストン連銀総裁が「追加利上げは必要」「景気抑制スタンスはしばらくの間維持する必要」「0.75%の利上げは依然として検討されている」などと述べています。両氏が金融引き締めに積極的な「タカ派」姿勢を示したことから、マーケットではこのところ強まっていた米利上げペースの減速観測が後退しました。
ロシア産原油価格に上限設定
ただ、欧州連合(EU)は12月5日からロシア産原油の輸入を禁止します。これに合わせて、主要7カ国(G7)はロシア産原油の価格に上限を設けて同国からの供給を一段と絞る見通しです。一部報道では「ロシア産原油に設定する上限価格の水準を来週23日に発表する計画」と伝わっています。マーケットでは「世界の原油需給の逼迫につながる可能性があり、一段の下落は予想しづらい」との声が聞かれました。年末に向けては季節的な暖房需要増加の後押しもあり、需給は一段と逼迫する可能性が高く、在庫の取り崩しが一段と進むようになれば、投機的な買いも入ってきやすくなるとの指摘もあります。
米国や中国などの景気悪化やそれに伴う需要の落ち込みに対する懸念は引き続き原油相場の重しになっていますが、供給面の不安材料がそれ以上に相場を支援するとの見立てが多く聞かれます。