欧州ガス先物価格の下落が顕著
欧州のガス先物価格の下落が顕著となっています。欧州の天然ガス指標のオランダTTFは今週、1メガワット時あたり51ユーロ台まで売られ、2021年9月以来の安値に下落しました。ロシアのウクライナ侵攻前の水準(約84ユーロ)を大きく下回っています。ロシアのウクライナ侵攻後の昨年8月には一時340ユーロ近くまで上昇していました。
天然ガス先物価格の日足チャート
出所:Yahoo Finance
背景には、欧州が記録的な暖冬となっていることなどが挙げられます。1月はドイツやポーランドなど過去最高気温を更新する国が相次ぎました。暖房の必要性が減ったことでガスの在庫枯渇の警戒感が和らぎ、ガス価格が下落した格好です。光熱費の上昇一服につながれば、高止まりが続く欧州のインフレが和らぐ可能性があるでしょう。
ロシアとの戦闘が続くウクライナでも気温の高い日が続き、首都キーウでは1月としては記録的な暖かさとなったようです。
エネルギー危機が緩和
今年残りの冬場を通して欧州のエネルギー市場が安定するとの見方は強まっています。スウェーデンは「域内のエネルギー供給危機が少なくとも今は最悪期を脱した兆しがある」として、停電リスクを「低い」に引き下げました。電力価格も値下がりしました。
これまで各国は冬のエネルギー配給や計画停電に備えていましたが、暖冬に加えて、失われたロシア産ガスの供給を埋め合わせるだけの十分な液化天然ガス(LNG)の輸入確保を受けて、欧州ではエネルギー配給や計画停電には至っていません。現在のガス在庫の水準は例年のこの時期を大幅に上回っているといいます。
EUのガス価格上限機能、今週から運用可能だが
欧州連合(EU)は昨年12月のエネルギー相理事会で、エネルギー価格高騰を抑えるため、天然ガス料金に上限を設定することで合意しました。一定の条件を満たせば、EUが市場に介入して上限を超えた取引は認めないとしてます。エネルギー価格の高騰に歯止めをかけ、企業や家計に安心感をもたらす狙いです。
なお、この制度はオランダTTFが180ユーロを上回り、LNG価格から35ユーロ高くなり、これが3日間続いた場合に発動されるという内容。いったん発動されれば、20日間は続くとされています。加盟国の書面手続きをへて発効し、今週15日から運用が可能になっていますが、当初は「ガスの安定確保には懸念が残る」との声が多く聞かれていました。
次の冬が本当の試練!?
国際エネルギー機関(IEA)は15日、臨時閣僚会合をオンライン形式で開き、来年冬に欧州各国が天然ガスを安定調達できるよう連携していくことで一致しました。ウクライナ侵攻後、ロシアは欧州へのガス供給を削減。「今年は記録的な暖冬で深刻なガス不足は生じそうにないものの、リスクは依然残る。エネルギー危機を回避するためには事前の備えが必要」と判断しました。
特殊要因で乗り越えた面が大きく、なおリスクは残ります。ビロル事務局長は「2023年から24年にかけての冬が本当の試練となる可能性が高い」との声明を出してます。
目先は天気予報を睨み
市場では天然ガス先物相場について「目先は不安定になりそうだ」との声が聞かれます。「天気予報を睨んだ売買で不安定な上下を繰り返す展開が続くと予想。ここまでの下落で記録的な暖冬による暖房需要の低迷は既に織り込み済みとなった可能性は高く、売られ過ぎというだけで持続的な買いは入りづらい。在庫は過去5年平均を5.2%上回る水準にまで回復、需給逼迫懸念が後退していることも相場の重しになりそうだ」(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅氏)。
家計の負担軽減!ガス料金は連続で値下げへ
都市ガス大手2社の4月請求分(3月利用分)は3カ月連続で値下がりします。東京ガスは3月から238円安の6026円程度、大阪ガスは同237円安の6577円程度となります。政府による支援策が2月から適用されていることに加えて、都市ガスの原料となるLNGの輸入価格下落を反映させて、料金が安くなるといいます。
今月請求分の電気代に驚愕した我が家ですが、まずはガス料金が連続して安くなったことに安堵しています。