コモディティという世界

【コモディティという世界】第25回「コーヒー(coffee)、下落傾向が続く 今年高値からは40%超の急落 国内価格にも影響か!?」

コーヒーの国際価格が急落


このところ、コーヒーの国際価格(高級コーヒー豆、アラビカ種)が急落しています。下記チャートを見ると、11月下旬には今年2月に付けた年初来高値から40%超の急落となっていることが分かります。これは2021年7月以来約1年5カ月ぶりの安値です。一大消費地の欧州では急激なインフレで景況感が悪化。コーヒーの消費が鈍り、需給を敏感に映す先物取引所の在庫が急増しているといいます。


出所:Trading View



アラビカ種の国際指標となる米インターコンチネンタル取引所(ICE)のニューヨーク先物(期近)は12月16日現在、1ポンド171.90セント。直近の高値だった2月上旬の260セント前半に比べて34%安い水準です。コーヒー先物価格は10月に入りレンジを下方向にブレイク。そのまま下げ足を速めて、11月下旬には150セント半ばまで売られ、その後も上値が重い展開となっています。

  

この背景には「欧州の需要減」があると言われています。米農務省によると、2020-21年度の欧州連合(EU)域内のコーヒー消費量は世界の26%を占めていますが、欧州ではウクライナ危機を背景に急速なインフレが起きています。これを受けて、欧州中央銀行(ECB)はインフレ抑制へ大幅利上げを続けており、景況感が悪化しています。




ECBはタカ派姿勢を維持


ECBは15日の定例理事会で、政策金利を0.50%引き上げ、来年3月から量的金融緩和策として買い入れた国債など資産の規模縮小の開始を決めたと発表しました。声明では「一段の金利上昇を見込む」「金利は安定したペースで大幅に上昇する必要がある」と指摘。


また、ラガルド総裁は理事会後の会見で「今後の利上げ幅についてはデータ次第」としながらも、「当面は0.50%の利上げが予想される」「来年2月と3月も0.50%の利上げの可能性がある」と発言しています。市場では「ECBは金融引き締めに積極的なタカ派姿勢を示した」と受け止められています。




ECBの積極的な金融引き締めはユーロ圏景気の悪化につながるとの懸念から、欧州の株式相場は軒並み急落。欧州を代表する株価指数のひとつユーロ・ストックス50指数は15日に3.5%超の大幅下落となりました。




ブラジルでは豊作見込まれる


アラビカ種の最大産地であるブラジルでは、好天による豊作が見込まれています。コーヒーの開花期にあたる10月までは、相次ぐ長雨や干ばつの影響で生産に先行き不透明感がありましたが、足もとは安定した気候が続くといいます。市場関係者からは「2023-24年度も産地の開花、結実の状況が良好のため豊作が期待できる」との声が聞かれています。

 

国内のコーヒーメーカーは、豆の価格高騰や円安進行を背景に、製品値上げを実施してきましたが、国際価格の大幅下落と現時点の円安一服がこのまま続けば、国内のコーヒー製品にも影響する可能性も。製品値上げに歯止めがかかることが期待されます。



薄いコーヒーはもう飲まなくて良い!?


大のコーヒー好きと自称する私は、コーヒー摂取量が非常に多く、1日あたり3-5杯は飲んでいます。秋の値上げラッシュ以降、いつも購入するショップの価格も上がったため、「節約」との意識が頭の片隅に。ドリップする際のお湯の量が徐々に増えていき、最近では「薄いな」と感じる次第です。

去年までと同様に、美味しいコーヒーが飲めるように国際価格のさらなる下落と円高進行を密かに願っています




この連載の一覧
「価格推移へのコメント」を担って実感したプラチナの価値
第54回「小麦の国際価格、急伸 今後もロシア・ウクライナ関連ニュースに注目」
第53回「米国のインフレ鈍化鮮明に 株価は上昇・コモディティは反発傾向」
第52回「トレード準備 まずは口座開設」
第51回「金(ゴールド)、価格調整進む 3カ月半ぶり安値」
第50回「穀物相場は反発傾向 各国中銀は相次ぎ利上げ」
第49回「NY金相場は反発 FRBのタカ派姿勢はブラフ(はったり)!?」
第48回「小麦の国際価格、下げ渋り 2年半ぶり安値から戻す」
第47回「米国株相場は堅調 ただコモディティ関連ETFを見てみると」
第46回「ゴールドマン、コモディティ相場に強気見通し」
第45回「金(ゴールド)、再び2000ドル割れ」
第44回「小麦の国際価格、下落継続 2年ぶりの安値」
第43回「国内外の金(ゴールド)価格、伸び悩み 底堅い基調は続く?」
第42回「原油価格、今週は下落 100ドル突破の声と下落継続の声」
第41回「国内ガソリン価格、4週連続値上がり! 軽油も灯油も値上がり!」
第40回「原油価格、急反発 先行きに強気な見方多い」
第39回「金(ゴールド)、2000ドル近辺で高止まり マーケットの不安は本当に薄れたのか?」
第38回「金(ゴールド)、2000ドルの大台を突破!!! 約1年ぶり高値」
第37回「原油価格が約1年3カ月ぶり安値 昨年高値からほぼ半値」
第36回「小麦の国際価格、1年8カ月ぶり安値 なお政府の売渡価格は5%値上げ」
第35回「小麦価格、1年半ぶり安値 世界の食料価格も21年9月以来の低水準」
第34回「コーヒー(coffee)、反発傾向を強める これ以上の価格上昇でコーヒー値上げは困る」
第33回「欧州ガス先物価格の下落顕著、21年9月以来の安値 ガス代は値下げへ」
第32回「WTI原油先物、しばらくは横ばい推移か!?」
第31回「金(ゴールド)、FOMCで急騰しECBで急落」
第30回「ゴールドマン・サックス『今年はコモディティの年になる』と予想」
第29回「センチメントに踊らされるマーケット 金(ゴールド)は着々と大台目指す」
第28回「米インフレ鈍化でドル安 金(ゴールド)には追い風」
第27回「今日は年内最終取引日 今年1年間のパフォーマンスは?」
第26回「コーヒー(coffee)、下落一服も今年高値からは35%安の水準 薄いコーヒーはもう飲まなくて良い!?」
【コモディティという世界】第25回「コーヒー(coffee)、下落傾向が続く 今年高値からは40%超の急落 国内価格にも影響か!?」
【コモディティという世界】第24回「小麦は1年2カ月ぶり・原油は1年ぶり安値 疲弊した家計負担は軽減するか!?」
【コモディティという世界】第23回「円安ドル高は終了か!? Thank you 財務省! Thank you パウエル!」
【コモディティという世界】第22回「WTI原油先物価格、今週は乱高下 一時は10カ月ぶり安値を付ける」
【コモディティという世界】第21回「コモディティ市場はさえない1週間 原油相場はほぼ2カ月ぶり安値」
【コモディティという世界】第20回「やはりドルは天井を打ったのか!? 金(ゴールド)には追い風!!」
【コモディティという世界】第19回「重要イベントの相次いだ今週、小麦価格は乱高下 今後は如何に!?」
【コモディティという世界】第18回「ドルは天井を打ったのか!?金や原油などコモディティには追い風」
【コモディティという世界】第17回「電気代は来春以降、2割から3割値上がりする可能性!?」
【コモディティという世界】第16回「投資は余裕資金で! 今こそPayPayポイントで金(ゴールド)投資 」
【コモディティという世界】第15回「FXとも密な関係 南アフリカの通貨ランドとプラチナ」
【コモディティという世界】第14回「主要中銀の金融引き締めでリスク資産下落 シートベルトの着用は必須」
【コモディティという世界】第13回「私が考える最強のコモディティ関連ETF『四天王』・その2」
【コモディティという世界】第12回「私が考える最強のコモディティ関連ETF『四天王』・続」
【コモディティという世界】第11回「コモディティ関連ETF『四天王』「ククク…奴は四天王の中でも最弱」と言われるあの銘柄は?」
【コモディティという世界】第10回「投資の神様が保有するコモディティ関連銘柄」
【コモディティという世界】第9回「秋の値上げラッシュ迫る!すぐにでもコモディティに投資したいが商品多すぎ・・・」
【コモディティという世界】第8回「値上げラッシュの秋迫る!岸田首相は小麦の売渡価格据え置きを指示」
【コモディティという世界】第7回「金(ゴールド)の主な価格変動要因は?」
【コモディティという世界】第6回「金(ゴールド)の「調整局面」は終了か?「台湾有事」への懸念高まる!?」
【コモディティという世界】第5回「原油の価格変動要因って何?最高値を付ける可能性はあるの?」
【コモディティという世界】第4回「石油はあと30年から50年で枯渇する!?」
【コモディティという世界】第3回「そもそもコモディティ(商品)って何(続)」
【コモディティという世界】第2回「そもそもコモディティ(商品)って何?」
【コモディティという世界】第1回「原油高騰と円安で物価上昇!家計を直撃 どうする?」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

中村 知博の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております