FXとコモディティ
南アフリカ準備銀行(SARB)は9月22日、金融政策委員会(MPC)を開き政策金利を5.50%から6.25%に引き上げました。声明では「インフレ見通しに対するリスクは上向き」との見解を示しました。
これは市場予想通りの結果だったことから、政策金利発表後も南アフリカの通貨ランドはもみ合いの展開となりました。ただ、9月23日には1ドル=17.98ランド付近まで売られ、2020年5月以来の安値を更新しています。
英国の財政悪化懸念が強まると、英国債相場が暴落(利回りは急騰)。英株安・債券安・通貨安の「トリプル安」となり、それが欧米株安やコモディティの下落につながりました。
前回記事の冒頭でも指摘しましたが、巨大なマーケットである「米国株」が下落すれば、コモディティも仮想通貨もとにかくあらゆるリスク資産が下落してしまいます。となると、安全な資産はキャッシュ=ドルのみ。市場では「ドルはここ数十年で見られなかったほど安全な資金逃避先になっている」との声が聞かれるほどであり、主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスは2002年5月以来約20年ぶりの高値を付けています。
さて、FX(外国為替証拠金取引)では高金利通貨として人気があるランドですが、『コモディティ通貨』としての側面もあります。特にプラチナ価格の動向に影響を受けます。プラチナの最大の産出地が南アフリカで、それも「断トツ」となっているからです。下のグラフは2022年のプラチナ産出量の割合です。
出典:Johnson Matthey「Pgm market report」
そもそも、プラチナの産出地は金などよりも限られており、南アフリカとロシア、ジンバブエ、北米(アメリカとカナダ)など、ごく一部の地域でしか産出されません。中でも南アフリカの産出量は「断トツ」となっており、2020年の世界総産出量の約65%を占めています。次いで、ロシア、ジンバブエ、北米となります。
プラチナは単体で採掘されることが珍しく、パラジウムなど他の貴金属やニッケル、銅などと一緒に採掘されるケースがほとんどです。南アフリカの鉱山のみがプラチナを主として産出しており、ロシアではニッケル、北米ではパラジウムの副産物としてプラチナが採掘されるようです。
プラチナ価格とランドの相関
下の記事は9月に金融情報サービス「FXi24」で配信された記事になります。
南アフリカランドは売りが優勢。プラチナ価格が1%超下落していることで世界最大の産出量を誇る南アフリカの通貨ランドに売りが出た。対ドルでは一時16.9532ランドと2020年9月以来の安値を更新したほか、ランド円は8.01円まで値を下げた。
このように、通常であればランドは「プラチナ価格」の動向に影響を受けて、上げたり下げたりすることが多く見られます。下のチャートはプラチナ価格とランド(ZARUSD)の過去5年の値動きですが、見ると「強い相関がある」と言えそうです。
出所:Trading View
なお、ランドはプラチナ以外のコモディティの動向にも影響を受けます。現在は石油・ガスをほとんど産出していない南アフリカですが、原油の動向に影響を受けたカナダドルやメキシコペソなど「他のコモディティ通貨」と一緒くたに買われたり、売られたりすることもあるからです。
また、ランドは「新興国通貨」として側面もありますので、ブラジルレアルやトルコリラなどと似た動きをすることもあります。
プラチナ先物を単体でトレードする初心者の方は多くはないと思いますが、株式やFXなど他の金融商品をトレードする際、「プラチナ価格の動向」も参考にしてみてはいかがでしょうか。