原油価格、急反発
今週、原油価格は大きく窓を開けて始まりました。先月には米国の銀行破綻やクレディ・スイス・グループの経営不安が高まったことで、欧米株式相場が軟調に推移。価格変動リスクの高い原油先物が売られ、1バレル=64ドル台まで下落。2021年12月以来およそ1年3カ月ぶりの安値を付けていました。
ただ、石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は2日、日量約116万バレルの追加減産を行うと発表。5月から開始し、今年末まで継続すると表明しました。これは予想外のことで、週明け早朝取引から原油先物には買いが先行することとなりました。
なお、国際ニュース通信社ロイターによると、「OPECプラス」の減産量は日量366万バレルになるようです。これは世界需要の3.7%に相当します。
WTI原油先物価格の日足チャート
出所:Trading View
米国、中東での存在感低下がより鮮明に
「OPECプラス」の追加減産は、米国にとってインフレ圧力となるほか、ロシアを利する形となります。反発が予想される中で、産油国があえて減産を決めたことは米国の中東での存在感低下と分断の深刻さを浮き彫りにしています。市場では「問題なのは、サウジアラビアなどが原油市場の安定を優先して、米国の希望を意に介さない姿勢を鮮明にしたこと」との指摘が多く聞かれています。
足もとでは、米国の消費者物価指数(CPI)の伸びはエネルギー価格の低下で鈍化していましたが、このタイミングでの減産はインフレ懸念を再び高める可能性があります。実際、米バイデン政権はこの減産決定を受けて、「このタイミングでの減産は賢明ではない」と批判しています。
原油の先行きに強気な見方
市場では原油相場の先行きについて「強気な見方」が多く聞かれます。「OPECプラス」が追加減産を打ち出したことは、この先も価格の押し上げ要因となる可能性は高く、一部では「この減産によって実際に需給がどの程度引き締まってくるのかは微妙なところ」との指摘もありますが、産油国がこれ以上の価格下落を容認しないとの姿勢を示したことは無視できません。
「原油価格が下落すれば、追加減産が打ち出されるとの安心感が更に買いを呼び込むことになるだろう。ドライブシーズンに向け在庫の取り崩し傾向が強まるなら、こちらも下支えとなりそうだ」(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅)。
なお、米国では脱炭素への対応でシェールオイルの生産が低迷となっています。米エネルギー情報局(EIA)によると、米国の原油生産は今年1月時点でコロナ禍前のピーク(2019年11月)を4%下回るなど、中東の減産分をカバーするのは難しい状況となっています。
出所:EIAホームページ
ゴールドマン、ブレント原油年末予想を95ドルに上げ
「OPECプラス」による追加減産を受けて、米金融大手ゴールドマン・サックスは今年末の北海ブレント原油予想を95ドルに引き上げました。24年についても97ドルから100ドルに上方修正しています。
ゴールドマン・サックスはリポートで「われわれが論じてきた通り、OPECプラスは過去と比べ極めて大きな価格決定力を持っている。予想外の減産発表は、市場シェアを大きく失うことなく、先手を打って行動する彼らの新方針に合致する」と指摘しています。