コモディティという世界

第27回「今日は年内最終取引日 今年1年間のパフォーマンスは?」

今日は年内最終取引日


いよいよ今年も終わりに近づいてきました。既に仕事納めを迎えた方も多いと思いますが、マーケットは本日まで。市場では東証の大納会式典に、岸田文雄首相がゲストとして出席することが話題になっています。脚本家の三谷幸喜氏とともにあいさつし、年内の取引を締めくくる鐘を打ち鳴らすそうです。

 

SNS上では、「日本株にはマイナスなのでは!?」「暴落しないか心配」などといった声が聞かれています。「大発会に出席しないことはプラス材料かもしれない」との声も聞かれるなど、投資家からの評価は散々のようです。

 



今年のコモディティ市場は?


さて、今年1年のコモディティ市場を振り返ってみると、年前半は「金利上昇下で圧迫されるセクター(テクノロジー)から、経済成長にとってより重要な分野(コモディティ)に軸足が移った」と言えます。リスクマネーがコモディティ市場に流入し、主要コモディティの価格が上昇。石油、リチウム、銅、金、銀が記録的なパフォーマンスを上げました。

 

年後半になると、米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融引き締めを背景にドル高が進むにつれて失速。FRB以外の主要中銀が歩調を合わせたような金融引き締めを続けていることも世界的な景気見通しを悪化させ、コモディティ価格は一転下落しました。もっとも、そのあとはある程度の水準で横ばいの動きとなっており、年初来のパフォーマンスはプラスを維持しています。

 

下のチャートは23種のコモディティ先物価格(エネルギーから素材、農産物まで)を追跡するBloomberg Commodity Index(コモディティ投資の際のベンチマークとして広く利用されている総合商品指数)と、多くの機関投資家が運用指標とする米国株のS&P500種株価指数の今年1年間のパフォーマンスです。Bloomberg Commodity Indexは今年13%弱のプラス、S&P500は20%弱のマイナスとなっていることが分かります。


出所:Trading View




コモディティ市場は再び強気になる?


今月13-14日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場予想通りFF金利の誘導目標が0.50%引き上げられました。4会合続いた0.75%の利上げから0.50%に利上げ幅縮小となりましたが、これは織り込み済み。声明は11月とほぼ同じ内容で、利上げ継続が適切との文言や、利上げペースは金融引き締めの累積効果などを考慮して決めるなどの文言が維持されました。政策金利見通し(ドット・チャート)では2023年末時点の中央値が5.125%(5.00-5.25%)と前回の4.625%(4.50-4.75%)から引き上げられ、市場の想定である5%近辺を上回りました。FOMC後のマーケットは株が不安定な値動き、金利は低下、ドルは失速する展開となりました。

 

なお、パウエルFRB議長の発言によると、米国の物価の伸びや経済成長が想定以上に鈍化すれば、利上げペースはドット・チャートで示された数値よりも緩やかな軌道をたどることになります。市場の見方としては「金融政策は現在、金利の最終到達点を探る段階であり、インフレと大幅利上げを過度に懸念する局面は終了しつつある」と言えます。あるマーケット参加者は「今後は利上げの一時停止期待が高まれば、物価高を背景とした継続的な利上げに怯えてきたコモディティ市場は再び強気になるだろう」と指摘しています。

 

なお、今年私がおススメした私が考える最強の「コモディティ関連ETF」。1年間のパフォーマンスを見てみると・・・


出所:Trading View




これは『GSG・DBC・DBA・MOO』S&P500の比較チャートで、縦軸は値動きの比率になります。これを見ると、GSGが22%超の上昇で上昇率トップ。2位がDBCで17%超高、3位がDBAで2%超高となっています。4位はMOOで9%超の下落となっています。実は一番のおススメはMOOでしたが、残念な結果に終わっています。

 

 

『GSG・DBC・DBA・MOO』の内容は以下の通りです。

 

★GSG 『iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト』

 

GSGはS&P・GSCI(R)トータルリターン・インデックス(SPGSCITR)と同等の投資成果を目指しており、幅広いコモディティ先物グループで構成されています。エネルギー・工業用・希少金属・農業・畜産市場への手軽なアクセスが可能。ただし、通常のETFではありません。1940年投資会社法に基づき登録された投資会社でなく、高いリスクを伴っていることに注意が必要です。

 

 

★DBC 『インベスコDBコモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド』

 

DBCはDBIQオプティマム・イールド・ディバーシファイド・コモディティ・インデックス・エクセス・リターンと同等の投資成果を目指しています。世界で最も頻繁に取引される重要な14の現物商品先物契約で構成されています。

 

 

★DBA 『インベスコDBアグリカルチャー・ファンドETF』

 

DBAはDBIQ農業多角化・インデックス・エクセス・リターン(DBLCDBAE)に連動する投資成果を目指しています。最も流動性が高く広く取引されている農産物の先物契約で構成されています。

 

 

★MOO 『ヴァンエック・アグリビジネスETF』

 

MOOはMVISグローバル・アグリビジネス・インデックス(MVMOOTR)の価格および利回りと同等の投資成果を目指しています。農薬や動物用医薬品、肥料、農業機械、養殖、漁業、家畜、栽培、農産物の取引などに携わる企業で構成されています。




*記事内では個別銘柄に言及しておりますが、当該銘柄を推奨するものではありません。また、特定銘柄および株価動向の上昇または下落を示唆するものではありません。最終的な投資の意志決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。




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為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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