後付け解釈しやすいマーケット
今週に入り、市場では急に景気悪化に関するコメントが多く聞かれています。発表された経済指標が悪い内容だったこともありますが、これまでにも「やばい」と言われるような経済指標は多く出ており、株価が連日下げるような内容だったかと問われると疑問符が付きます。要するに「後付け解釈しやすいマーケット」となっており、その時々のセンチメントに踊らされている地合いと言えそうです。
米国株式市場ではダウ工業株30種平均=NYダウが今週に入り連日下落。下げ幅は1200ドルを超えています。下のチャートはNYダウの日足チャートです。16日の月曜日はキング牧師誕生日で休場。連休明けの17日から昨日までの3日間で先週の上げを全て消した格好となっています。
NYダウの日足チャート
出所:Trading View
高まる米景気後退(リセッション)懸念
米商務省が18日発表した12月米小売売上高は前月比1.1%減と2カ月連続で減少し、市場予想を下回りました。インフレ下の年末商戦で家具や電子機器などの裁量消費が振るわず、百貨店やインターネット通販の売り上げが伸び悩んだことが背景です。市場では「ブラックフライデーやクリスマス商戦の苦戦が響いたようだ」との声が聞かれました。
また、米連邦準備理事会(FRB)が同日発表した12月米鉱工業生産も前月比0.7%低下と前回から悪化し、予想を下回る結果に。「借入コストの上昇が商品需要の打撃となり、製造業の勢いが急速に失われていることが示された」との指摘がありました。
調子が良い時(!?)は、経済指標の悪化⇒FRBが利上げペースを緩める、もしくは米金融引き締めが長期化するとの懸念が和らぐ⇒株式の買い安心感というトンデモ理論(実際に多くのメディアはこのロジックを使っています)を背景に、株価は上昇します。ただ、今週は経済指標の悪化⇒リセッション懸念拡大⇒株式の売りという、ある意味素直な反応となっているようです。
もちろん、金融引き締めのペースが鈍化し、経済が軟着陸(ソフトランディング)するとの期待も根強くあります。株式市場ではこういったことを理由に、押し目を買う動きも見られます。マーケットでは【慎重論】と【楽観論】が交錯し、上げたり下げたりしている状況となっており、不安定な値動きはしばらくは続く可能性が高そうです。
やっぱり金相場は上値を試すか!?
コモディティ市場では相変わらず、金相場の底堅さが目立っています。NY商品取引所(COMEX)で取引の中心となる2月限は1トロイオンス=1923.9 ドルで19日の取引を終えています。中心限月としては昨年4月以来約9カ月ぶりの高値。米リセッション懸念が拡大したことで、安全資産とされる金は「質への逃避先」として選好されたようです。
NY金先物相場の日足チャート
出所:Trading View
前週の記事でもお伝えした通り、市場では「目先、強気の流れが続く」との予想が聞かれます。現在のように景気悪化懸念が高まってくると、「安全資産」としての需要が意識され、相場の押し上げ要因となってきます。市場の注目が将来的な景気動向に移りつつある中で、「2000ドルの大台はすでに視野に入っている」と言えそうです。
関連記事
第18回「ドルは天井を打ったのか!?金や原油などコモディティには追い風」
第20回「やはりドルは天井を打ったのか!? 金(ゴールド)には追い風!!」
第28回「米インフレ鈍化でドル安 金(ゴールド)には追い風」