原油価格の下落が加速 約1年3カ月ぶりの安値
足もとで原油価格の下落が加速しています。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)4月限は今週、1バレル=65.65ドルと2021年12月以来およそ1年3カ月ぶりの安値を付けました。米国の銀行破綻に続き、欧州ではクレディ・スイス・グループの経営不安が高まり、欧米株式相場が軟調に推移。価格変動リスクの高い原油先物が売られました。金融不安で銀行の融資が減少し、世界景気に悪影響が出るとの連想から、原油先物に売りが出た面もありました。
WTI原油先物価格の日足チャート
出所:Trading View
市場関係者からは、欧米の金融不安について「大手銀行によるデレバレッジ(債務圧縮)を引き起こし、石油への投資を減らし、相場が他のリスク資産よりも大きく下落する原因となっている」との声が聞かれています。今週発表の米エネルギー情報局(EIA)の週間の米石油在庫統計では、原油在庫が市場予想以上に増加。足もとの需給の緩みも売りを促したようです。
昨年ロシアによるウクライナ侵攻後に付けた約13年8カ月ぶりの高値130.50ドルからほぼ半値となったことになります。
景気や物価に先行する指標として注目の「CRB指数」
コモディティに興味がある、ないにかかわらず、金融関係者やトレーダーの多くがウォッチ・リストに加えている指数があります。それがこの「CRB指数」。下のチャートはCRB指数のここ5年の動きです。
CRB指数の日足チャート
出所:Trading View
CRB指数は米国のNYFEで取引されている代表的な商品先物指数のひとつです。正式には「ロイター・コアコモディティーCRB指数(Thomson Reuters/CoreCommodity CRB Index)」と呼ばれており、米英の各商品取引所の先物取引価格から算出される国際商品指数です。この指数は1952年に米国のCRB社により28品目の指数として開発され、その後、構成品目の入れ替えなどの修正が行われています。2005年9月の修正時に「ロイター/ジェフリーズCRB指数」という名称になりました。世界的な物価や景気の先行指標、特にインフレ動向の先行指標として注目度が高い指数です。
「CRB指数は幅広い商品で構成されているが、中でもアルミニウムや銅など、製品原料として使用される商品を多く含むため、景気や物価に先行する指標として注目しているよ」なんて声は株式・FXトレーダーなどからも多く聞かれています。
ある市場関係者からは「CRB指数はかなり下がったが、米連邦準備理事会(FRB)は112あたりまで下げたいのか?」と揶揄する声も。ちなみに、112は2020年4月に付けた安値です。このとき、日本では新型コロナウイルス感染拡大による「緊急事態宣言の発令」、「総額25兆円を超える規模の政府補正予算成立」などの出来事がありました。
欧米金融機関の経営不安が幾分和らぐ
昨日16日は重要なイベントがありました。欧州中央銀行(ECB)が理事会で政策金利を0.50%引き上げることを決めたと発表。声明では「現在の市場の緊張を注意深く監視している」としながらも、インフレ抑制を優先する姿勢を崩しませんでした。市場では金融システムが不安定化するとの警戒が高まり、リスク回避の動きが強まる場面もありました。
ただ、NY市場では「JPモルガン・チェースやモルガン・スタンレーなど大手銀行は経営危機に陥っている米地銀ファースト・リパブリック・バンクへの支援策を検討」との報道が相次いで伝わり、実際に米銀11行が合計300億ドルの無保険預金を米地銀ファースト・リパブリック・バンクに預け入れると発表しました。
これを受けて、欧米金融機関の経営不安が幾分和らぐと、一時300ドル超下落したNYダウは400ドル超上昇。WTI原油先物相場も4日ぶりに反発しています。16日の終値は前日比0.74ドル高の68.35ドル。
サウジアラビアからの報道で「アブドルアジズ同国エネルギー相とロシアのノバク副首相はこの日会談し、原油市場の安定維持に取り組み、『OPECプラス』による現行の減産方針を堅持する方針を確認した」と伝わったことも原油反発につながったようです。
原油相場の今後については、このところ話題にあがっている欧米金融機関の経営不安を煽るようなニュース、そしてOPEC絡みの報道に注意していく必要がありそうです。