米インフレ鈍化でドル安
米労働省が12日発表した12月の米消費者物価指数(CPI)は前月比▲0.1%/前年比6.5%と予想の前月比横ばい/前年比6.5%とほぼ一致。エネルギーと食品を除くコア指数も前月比0.3%/前年比5.7%と市場予想通りの結果となりました。CPIの伸び率は11月の前年比7.1%から鈍化し、2021年10月以降で最小となりました。なお、前年比のピークは6月の9.1%で、1981年11月以降で最大の伸びを記録していました。
米国の記録的なインフレが和らぎ、米連邦準備理事会(FRB)の利上げのペースが減速するとの見方が強まると、米長期金利の低下とともに外国為替市場ではドル売りが優勢となりました。この結果を受けて、1月31-2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利上げペースをさらに減速させる可能性が高まっています。
下記チャートは主要通貨に対するドルの値動きを示すドルインデックスの1時間足。年明けから買い戻しが先行し105台半ばで上昇していましたが、その後失速。昨日の米CPIの結果が伝わると102台前半まで低下しています。市場では「現在の軌道はソフトランディング(軟着陸)や雇用市場の強まり、FRBのタカ派姿勢軟化という結果につながる可能性がある」との声が聞かれています。
なお、バイデン米大統領は「私の計画が奏功している証拠」と自慢げ。「米世帯が一息つく猶予を与える」とし、ディスインフレ傾向を歓迎していますが、市場参加者は「昨日のバイデン氏の会見は物価改善を誇るために設定されただけ」との冷ややかな声もありました。
出所:Trading View
金相場は上値を試すか!?
コモディティ市場では特に金価格の上昇が目立っています。NY商品取引所(COMEX)で取引の中心となる2月限は1トロイオンス=1898.8ドルで12日の取引を終えています。米インフレが落ち着きつつあることが確認される中、米長期金利の低下やドル安の進行を好感する形で買いが加速し、一時1906.5ドル前後と昨年5月以来の1900ドル台乗せとなりました。終値ベースでは昨年4月29日以来の高値となっています。
NY金先物相場の日足チャート
出所:Trading View
市場では「目先、強気の流れが続く」との予想が聞かれます。「米インフレ圧力の後退が確認でき、今後はインフレやFRBの利上げに対する懸念が大きな売りを呼び込む場面は少なくなるだろう。将来的な景気動向に市場の注目が移っていく中で、安全資産としての需要がそれ以上に大きな押し上げ要因となっていくのではないか。今後、2000ドルの大台が視野に入ってくるような展開になってもおかしくない」(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅)。
なお、金相場については昨年10月と11月に記事を掲載しましたが、振り返って見るとあのあたりが「底だった」と思われます。
第18回「ドルは天井を打ったのか!?金や原油などコモディティには追い風」
第20回「やはりドルは天井を打ったのか!? 金(ゴールド)には追い風!!」
2月FOMCでは0.25%の利上げが濃厚
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、1月31-2月1日のFOMCでは0.25%の利上げ確率が11日時点の76.7%から94.7%まで上昇しています。1カ月前は35.1%でした。一方、0.50%の利上げ確率は23.3%から5.3%まで低下しています。1カ月前は51.0%となっていました。
出所:CME FedWatch Tool