ゴールドマン、コモディティ相場に強気見通し
米金融大手ゴールドマン・サックスは今週、コモディティ相場について「投資家のヘッジ解消で穀物や石油などの在庫が前例のない速さで減少しているため、主要経済がリセッションを回避できれば年内に急騰するだろう」と予想しました。同社のアナリストチームは「最終需要にリセッションの兆候が現れず、供給側で投資が安定していないことがわれわれのような強気派を安心させている」と指摘。景気後退懸念や金利高、世界のモノの供給制約の緩和が資源の在庫削減につながっているとしています。
石油需要については「年末にかけて力強い増加を見込み、需要の7割が欧米や中国のサービス部門と関係しており、同部門の回復余地が十分にある」との理由を挙げていますが、「ロシア産原油の供給が制裁や価格上限の設定にもかかわらず大幅に減っていないため、相場が引き続き圧迫される可能性もある」との見方も示しています。
なお、指標となるS&P・GSCI商品指数では、1年間のリターンが30.3%になると予想しています。
S&P・GSCI商品指数の年初来パフォーマンス
出所:Trading View
エネルギーや金属などのコモディティ相場は今年に入り下落しており、S&P・GSCI商品指数は5月上旬に年初から約10%下げ、終値ベースで2021年12月以来の安値を付けています。中国の「ゼロ・コロナ」解除後の景気回復が予想より低調なほか、米金融当局がインフレを抑制するため一連の積極的な利上げを行った結果、米経済は今やリセッションに向かっているとの懸念が値下がりの主な要因です。
S&P・GSCI商品指数とは
S&P・GSCI商品指数は「S&P・GSCI コモディディ・インデックス」とも呼ばれ、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出・公表する、世界のコモディティ市場全体の動きを表す商品指数をいいます。元々は、1991年にゴールドマン・サックスにより開発され、2007年にS&Pによって買収。「GSCI」から「S&P・GSCI」に名称変更されました。
この指数は世界のコモディティ生産量の時価総額の加重指数で、現在は5つのセクターの24種類の商品先物で構成されています。また、本指数以外にエネルギー、原油、ノン・エネルギー、リデュース・エナジー、ライト・エナジー、産業用メタル、貴金属、農産物、畜産物などのサブ・インデックスも用意されています。
S&P・GSCI商品指数の週足チャート(5年)
出所:Trading View
一般的にこの指数はコモディティ市場の投資パフォーマンスを図るベンチマークとして、世界の機関投資家などに広く利用されています。また、本指数の先物およびオプションは、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)に上場されています。ただ、この指数は構成上、エネルギーの比率が高いため、原油価格には「CRB指数」以上に敏感に反応します。
CRB指数とは
「CRB指数」は米国のNYFEで取引されている代表的な商品先物指数のひとつです。正式には「ロイター・コアコモディティーCRB指数(Thomson Reuters/CoreCommodity CRB Index)」と呼ばれており、米英の各商品取引所の先物取引価格から算出される国際商品指数です。この指数は1952年に米国のCRB社により28品目の指数として開発され、その後、構成品目の入れ替えなどの修正が行われています。2005年9月の修正時に「ロイター/ジェフリーズCRB指数」という名称になりました。世界的な物価や景気の先行指標、特にインフレ動向の先行指標として注目度が高い指数です。
CRB指数の週足チャート(5年)
出所:Trading View
「CRB指数」は幅広い商品で構成されていますが、中でもアルミニウムや銅など、製品原料として使用される商品を多く含むため、「景気や物価に先行する指標」として注目されています。