今週の原油相場は乱高下
今週の原油相場は荒い値動きとなっています。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の期近物は週明け21日に一時75ドル台前半まで売られ、今年1月以来10カ月ぶりの安値を更新する場面がありました。
米紙WSJが21日、「サウジアラビアなどOPEC加盟国が最大で日量50万バレルの増産を議論している」と報じたことがきっかけです。世界経済の減速懸念が強まるこの状況下で、仮に増産に踏み切れば、異例の対応となるため売りでの反応が大きくなりました。
ただ、サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は国営サウジ通信を通じて「OPECプラスが現在実施している日量200万バレル減産は2023年末まで継続される」との声明を発表。「需給バランスを取るため減産による追加措置が必要な場合に備え、われわれは介入する準備を常に整えている」として、米紙WSJ報道を否定しました。増産ではなく、あくまで追加減産に動く準備が常にできていると説明しています。
サウジが増産報道を否定したことで、75ドル前半まで売られていたWTI原油先物価格は80ドル台半ばまで急速に買い戻されることになりました。週明け早々6%超の急落から一転持ち直した格好です。市場では「産油国がここから一段と相場を押し下げるような行動に出る可能性は低いが、政治的な意味合いが強いだけに、実際に蓋を開けてみないと分からない」との指摘がありました。
ただ、この買い戻しの動きも長くは続かず。主要7カ国(G7)が導入するロシア産原油の価格上限制度を巡り、上限設定を「1バレル65-70ドル」とすることを検討していると伝わったことで再び売りが優勢となりました。検討中の上限価格が足もとのロシア産原油の相場とほぼ同水準だったことから、マーケットではロシア産の供給減少懸念が後退した格好です。
出所:Trading View
米感謝祭明けの動きが重要
今週は米国が感謝祭の祝日で24日が休場、本日25日も実質休場(米債券・株式・商品市場は短縮取引)となります。来週、連休明けのNY勢が戻ってきてからの動きが今後のトレンドを確認するうえで重要となりますが、短期的には強気な見方が多いようです。
景気悪化に伴う需要の落ち込みに対する懸念は依然として根強く、売り圧力は簡単には衰えそうにないものの、市場では「エネルギーは生活必需品であり、特に暖房が必要となる冬場は通常の経済活動が行われている限り、需要も極端には落ち込まない」との声が聞かれます。OPECプラスが増産を見送るのであれば、その後は年末に向けて需給は一段と引き締まります。さらに、在庫の取り崩しが進むのにつれて投機的な買いも入りやすいとの見立てもあります。また、「70ドル台前半まで値を切り下げることがあれば、米政府が戦略備蓄原油を買い戻すとの見方が浮上し、新たな下支えとなることも考えられる」との指摘もありました。
また、ウクライナで激しい戦闘が継続し、ロシアと欧米との関係が悪化の一途を辿る中、ロシアからの石油供給が大幅に減少する可能性もあります。さらに、イランがサウジに攻撃を仕掛ける準備をしているとの警告が発せられていることも、無視することは出来ず、「供給面の不安材料」に注意しておく必要もありそうです。