石油はあと30年から50年で枯渇する
石油メジャーの英BPの統計『BP Statistical Review of World Energy 2021』によると、2020年末時点の世界の原油確認埋蔵量は1兆7324億バレルとなっており、これを石油生産量で除した可採年数は約50年となっています。なお、確認埋蔵量とは、現時点で技術的、経済的に採掘できる原油の量のことを言います。
1970年代のオイル・ショック時には当然、石油資源の枯渇が懸念されていました。私が子供時代(1980年代)の頃、「石油はあと30年から50年で枯渇する」と言われていましたが、今もなお「可採年数は50年」となっています。もしかしたら、50年後も「あと50年」と言われているのかもしれません・・・。
この理由には回収率の向上や新たな石油資源の発見・確認があります。近年では、米国のシェールオイル、ベネズエラやカナダにおける超重質油の埋蔵量確認があります。特に、北米を中心にシェール革命が起こり、飛躍的に産油量が増えていることが全体的な可採年数を底上げしています。
世界の石油埋蔵量
2020年末時点で、世界最大の確認埋蔵量を有するのはベネズエラであり、長らく1位であったサウジアラビアは2010年以降2位となっています。ベネズエラの確認埋蔵量は3038億バレルで世界全体の17.5%のシェアを占めています。サウジアラビアの確認埋蔵量は2975億バレルで世界シェア17.2%、次いでカナダ、イラン、イラク、ロシア、クウェート、アラブ首長国連邦となっており、中東だけで8359億バレルと世界全体の原油確認埋蔵量の約48%を占めています。
出典:BP Statistical Review of World Energy 2021
世界の石油生産量
世界の原油生産量は近年、少しずつ増加しています。新型コロナウイルス感染症が世界的に流行し始め、株価が大暴落した2020年は特殊として、2019年まで原油生産量は増加傾向にありました。
英BPによると、2020年の世界の原油生産量は日量8839万バレルとなっており、内訳を見ると石油輸出国機構(OPEC)が日量3064万バレルと世界全体の約34%を生産しています。地域別では、世界有数の産油国であるサウジアラビアを中心とした中東諸国で日量2766万バレルが生産され、約31%を占めています。非OPECの中では『シェール革命』が起こった米国が日量1648万バレルで、サウジアラビアやロシアを上回り、一気に首位に躍り出ています。2位はサウジアラビアの日量1104万バレル、3位はロシアの1067万バレルとなっています。
出典:BP Statistical Review of World Energy 2021
1970年代前半には中東諸国が中心となって組織したOPECの産油量が世界全体の約半分以上を占めて、原油価格の決定権はOPECが握っていました。しかしながら、1974年にOPECが原油価格を大幅に引き上げたことで第1次オイル・ショックが起こると、各国はこれを契機にOPECへの依存度を下げるため、省エネ化や代替エネルギー開発を促進してきました。また同時に、北海や中南米で油田が開発されました。
2000年代に入ると、カスピ海沿岸やベトナム沖、西アフリカ、中央アジアなどの世界各地で新たな油田が発見されたうえ、シェール革命で米国中心に北米の産油量が急増しました。将来的には、OPECのウエートはさらに低下していくものと予想されています。