原油価格はまだまだ上がる!?
今年3月、ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格が値上がりし、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の価格は一時1バレル=130ドルを突破。2008年7月以来の高値を更新しました。そのあとは戻り売りなどに押される格好で伸び悩み、節目の100ドル近辺でもみ合う動きとなっていますが、市場では引き続き「上値をトライする」との声が多く聞かれています。
―――石油輸出国機構(OPEC)にはサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)以外の産油国に生産余力がほとんど残っていないうえ、米国ではシェールオイルの生産が予想外に伸び悩んでいる。戦略備蓄も現時点で予定されている以上の放出は難しく、突発的な供給不安に対する市場の耐性が大きく落ちている。サウジやUAEの石油施設がイエメンのイスラム武装勢力フーシによるドローンミサイルの攻撃を受けたり、国内情勢が不安定な産油国における反政府運動が激化、石油施設が攻撃目標となったりするシナリオは、いつ起こっても不思議ではない。投資不足の影響によって世界的に製油所の精製能力の拡充が遅れている中で、石油製品需給の逼迫が一段と進むとの懸念もあり、供給面で何か大きな問題が生じれば、史上最高値を一気に更新する展開となっても不思議ではない。(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅氏)
※出所:Trading View
原油の価格変動要因とは
「原油価格」は様々な要因で変動します。直近のニュースなどを見ると、「EIA在庫統計で原油在庫が積み増し」「リビアの原油生産が再開する」「景気減速で原油需要が落ち込むとの懸念」「OPECプラスの動向」「産油国における政治情勢」「ポジション調整」などと説明がありました。
では、基本的な原油の価格変動要因とは何でしょうか?
■供給面では産油国、特にOPECの動向が注目されます。OPECは原油価格を維持するために、年2回の定時総会と数回の臨時総会を開催し、OPEC全体での生産枠を協議します。前回の記事でも指摘した通り、OPECへの依存度は以前と比べると低下していますが、まだまだその支配力は残っています。
■需要面では世界の景気動向がポイントとなってきます。景気が良いときは需要が増加するとの観測から原油価格は上昇しやすく、景気が悪いときは需要が減少するとの見方から原油価格には下落圧力がかかります。特に米国と中国の景気・需要動向は注目されています。
■産油国の政情不安、テロなどの地政学リスクも材料視されます。これらの要因が供給不安につながるようなら、価格の上昇圧力となっていきます。
■新エネルギーの動向も原油価格に大きな影響を与えます。原油は最大のエネルギー資源ではありますが、近年、原油以外のエネルギー資源の供給が増え、原油価格の下押し圧力となっています。天然ガスや太陽光発電、風力発電などの新エネルギーと称される生産が年々増加しており、エネルギー資源のシェアは徐々に変わってきています。前回記事でも指摘したように、北米を中心に起こった「シェール革命」は原油の需要に大きな影響を与えると考えられています。
■外国為替市場でのドル相場の動向も原油価格に影響を与えます。原油はドル建てで輸出入されているため、為替の変動の影響を大きく受けます。ドル安が進むとドル建てで決済される原油の割安感が意識されるとの理由で原油価格は上昇しやすくなります。反対に、ドル高が進むと割高感が生じて原油価格の上値を圧迫します。
■季節的な要因として、これからの時期は夏になると米国のガソリンの供給ひっ迫懸念などが原油価格を押し上げる傾向があります。また、「ハリケーン」がメキシコ湾岸の石油関連施設へダメージを与える懸念なども原油価格の押し上げ要因となります。
価格上昇要因が全て揃うと
なお、2008年7月にWTI原油先物価格が史上最高値である147.27ドルを付けましたが、このときは世界的な原油需要の増加&中東の地政学リスク&米国での製油所トラブル&ハリケーン&為替市場でのドル安など、価格上昇要因がほぼ全て揃った状態となっていました。もっとも、その数カ月にはあの有名な「リーマン・ショック」の影響で株価急落と世界景気の悪化で30ドル台まで暴落することになりました。
※出所:Trading View
このような価格が上昇する要因しかない状況で―――。
仮にWTI原油先物を140ドルでロング(買い建)していたら………。
2008年7月から12月のわずかな期間で30ドル台までの暴落が直撃していたら………。
想像するのも悍ましいですね。