原油先物価格、下落が続く
今週の原油先物相場は軟調な展開となっています。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)で5月限の20日の終値は前営業日比1.87ドル安の1バレル=77.29ドル。今週発表の米経済指標が低調となり、景気停滞によるエネルギー需要減少への警戒感が高まったことなどが背景にあります。終値ベースでは先週末14日からの下げ幅が5ドル超にも広がりました。
直近、話題となっていた石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の追加減産報道ですが、当初は窓を大きく開けて上昇し1週間程度は相場の支援材料となっていました。12日には1バレル=83.53ドル付近と昨年11月中旬以来約5カ月半ぶりの高値を更新しました。
WTI原油先物価格の1時間足チャート
出所:Trading View
ただ、今週はさえない米経済指標と米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続観測がドルを押し上げ、ドル高による需要減退への懸念が強まりました。市場では「金融引き締めが石油需要を弱めたという懸念を増幅。ドル高も投資家の意欲を減退させた」との声が聞かれました。
なお、今週発表された米エネルギー省(EIA)の週間在庫統計では、原油の取り崩し幅は想定以上となり、下げ渋る場面もありましたが買い戻しは一時的でした。
出所:EIAホームページ
目先の強気予想は多く
市場では強気の流れがしばらくは続くと予想する声が多く聞かれています。リセッションやそれに伴う需要の落ち込みに対する懸念は依然として強く、足元では売り圧が強まっているものの、「『OPECプラス』の追加減産で、将来的に需給が一段と逼迫するとの見通しが強まったことはそれ以上に大きな押し上げ要因となる」との指摘があります。「価格が下げた場面では追加減産が打ち出されるとの安心感が更なる押し目では投機的な買いを呼び込むのではないか」(よそうかい・グローバル・インベスターズ・インク代表 松本英毅)。「産油国の情勢不安や突発的な供給停止に対する警戒感も緩めるべきではない」といいます。
100ドル突破の声と下落継続の声
「OPECプラス」の減産がかなりのサプライズとなったことから、1バレル=100ドルが再び視野に入ってきたとの声も聞かれていますが、「価格急落の兆候がある」と警鐘を鳴らす市場参加者もいます。
OPECの3月の原油生産量は前月比7万バレル減の日量2890万バレルであり、OPECの生産量が目標に達しない状態が継続。3月の遵守率は2月の169%から173%に上昇しています。「今回の減産決定は実際の生産量に近づいただけで、市場へのインパクトはほとんどない」とする向きも。OPECの自主減産発表後にロシア産原油の価格も1バレル=60ドルを超える水準に上昇し、輸出量もウクライナ侵攻前の水準に戻っていています。
問題は需要サイドにもあります。中国の3月の原油輸入量は2020年6月以来の高水準となっていますが、石油製品の輸出需要にけん引された格好となっており、中国国内の需要がさほど伸びているわけではありません。くわえて、世界最大の需要国である米国の製造業も不振に陥っており、「米中製造業の不振が原油需要にとってマイナス」とするマーケット参加者もいます。
原油価格の1バレル=100ドル突破の声が聞かれる中、個人的には逆張り的に「原油価格の下落」を期待したいところです。日本でもガソリン価格など暮らしに影響が及ぶ可能性がありますしね。