日経平均は節目の3万円を上回った後も、バブル崩壊以降の高値を更新するなど、強い動きとなっています。REIT指数もそれに比べると迫力不足ではありますが、5月に入って年初来高値を更新しています。このように、国内投資商品の値動きが良くなってくると、投資に関心を持つ人々が増えることで、市場に新たな資金が入ってくる展開が期待できます。
そこで今回は、決算期の近い6月決算銘柄のREITについて、いくつかご紹介します。なお、銘柄の推奨を目的とはしておりませんので、その点はご了承ください。
地方特化型のマリモ地方創生
まずは、マリモ地方創生リート投資法人(3470)です。銘柄名にも「地方創生」というワードが入っていますが、「地方から日本を強くしていく」ことを基本理念に、運用対象も地方物件が中心となっています。以前、東京の物件の比率が低い銘柄を「ローカルREIT」で紹介しましたが、この銘柄もローカル色の強いREITと言えます。
ポートフォリオは北海道から九州まで広範囲に及んでおり、東京の割合が少ないことが特色です。地域別では、九州(沖縄)が23.6%と最も高く、東京圏が8.5%と最も低くなっています。物件はレジデンス(住居)、商業施設、ホテル、オフィス、物流など幅広く、属性としては総合型ですが、住居と商業施設がそれぞれ4割強と、これらの割合が大きくなっています(ポートフォリオ関連のデータは2023年3月31日時点)。
「マリモ」というのはスポンサーの社名で、マリモ社は広島に本社を置き、分譲マンション事業、収益不動産事業などを展開しています。2023年の3月にはイオンモール(8905)との資本業務提携を発表しています。
時価総額がREIT全体で見れば下から数えた方が早く、流動性には難ありですが、その分、分配金利回りは高めとなっています。
SBIグループがスポンサーの日本リート
次は日本リート投資法人(3296)です。メインスポンサーはSBIグループ。SBIホールディングス(8473)として株式市場に上場しています。かつては商社の双日(2763)がスポンサーでしたが、2022年の11月にSBIグループに変更しています。
属性は総合型。オフィスと住宅を2大柱としており、商業施設も投資対象としています。オフィスでは都心6区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、品川)に重点投資、住宅は三大都市圏を中心としており、オーソドックスに需要の強いところを抑えているREITと言えます。
オフィスで成長性、住宅で安定性を追求するスタンスですが、予想分配金が23.6期、23.12期と減少傾向となっており、投資口価格は下落基調となっています。現状ではオフィスの比率が高くなっているため、反転できるかはオフィス市況の動向がカギとなりそうです。
分配金が回復傾向のインヴィンシブル
次はインヴィンシブル投資法人(8963)です。「属性解説・ホテル 前編・後編」でも取り上げましたが、ホテルに強みを持つREITです。用途別ではホテルが大半となっていますが、住宅もポートフォリオに入っています。
ホテルでは「マイステイズ」「コンフォートホテル」などのブランドの物件が多いほか、浦安にある「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテル」の優先出資証券を有しています。
属性解説で取り上げた2022年9月26日時点では、22.12期の分配金は未定でしたが、実績は832円となり、22.6期の166円からは大幅に増加しました。この期に業績が大きく回復したことが要因ですが、先の予想分配金予想は、23.6期は1362円、23.12期は1037円とさらなる増加が見込まれています。分配金の回復が顕著となったことから、投資口価格も上昇傾向となっています。
時価総額トップのビルファンドも6月決算銘柄
時価総額がトップクラスで前回、「REIT指数が年初来高値を更新」でも取り上げた日本ビルファンド投資法人(8951)も6月決算銘柄です。オフィス系、ホテル系、地方注力型など、6月決算銘柄は属性的にバラエティに富んでいると言えます。
予想分配金利回り(2023年5月30日時点)を見ると、ここで挙がっていない銘柄も含めて4%台で推移しているものが多く、マリモ地方創生は5%を超えています。利回り面では投資妙味のある水準となっていますが、属性が様々な分、足元の値動きが強いものもあれば、そうでないものもあります。それだけに、ここから権利確定に向けて約1カ月間、それぞれがどういった動きを見せるか興味深いところです。また、権利取りに向けては、出来高が増えてくるかどうかといった点も注目されます。