J-REIT入門

J-REIT入門【第1回】~手軽に大家さん~

J-REITは金融商品の中で、商品の特徴が分かりやすく、安定した分配金が期待できるという特徴があります。株式やFX、暗号資産などと比べると、ちょっと地味ですが、じっくりコツコツと資産形成したい人にとっては、使い勝手の良い金融商品の一つと言えるかと思います。

 

不動産物件からの賃料収入がリターンの源泉

 

REITは「Real Estate Investment Trust」の頭文字を取っており、日本語で言えば不動産投資信託となります。国内REITは日本(Japan)の「J」を取ってJ-REIT(Jリート)と呼んでいます。

 

具体的にJ-REIT創業時から存続しており、時価総額最大級の日本ビルファンド投資法人を取り上げ、REITについて掘り下げていきます。株式同様に4桁のコードがあり、証券コードは8951です。日々値動きがあるのも株式と同様です。

 

投資口価格(株式でいう株価)は2022年8月1日時点で70万8000円。REITは単位が1口なので、最低単位購入するのに約70万円必要となります。70万円は決して安くはないですが、実物不動産の運用となると桁が変わってきます。なお、この銘柄はJ-REITの中でも投資口価格が高い部類に入ります。8月1日時点では10万円台のものが多いですが、10万円以下で買えるものも幾つかあります。

 

REITは多くの不動産物件を所有しており、そこから得られる賃料収入がリターンの源泉となります。ホームページを見ると、実際にどういった物件を所有しているのかの詳細を確認することもできます。ちなみにビルファンドは不動産大手の三井不動産系のREITで、都心部の好立地に多く物件を持っています。

 

安定した分配金が魅力

 

J-REITの魅力は何といっても安定した分配金となります。REITは利益の90%超を配当すると法人税が実質免除になるため、利益の大半が分配金に回されます。その利益も、賃料という比較的「堅い」性質を持つ収入をもととするため、ブレが比較的少ないという特徴があります。

 

以下はビルファンドの分配金の推移となります。


 


分配金は変動もしますし、前の期から減ることもあります。リーマン・ショックが起こったのが2008年9月で、15期(2008年12月期)以降はしばらく分配金の低下傾向が続きました。ただ、悪い時期だからといって、いきなりゼロになるといったことはありませんでした。また、ある程度のところで落ち着いていることが見て取れます。ビルファンドはオフィスビルが投資対象となっています。多少景気が悪くなってもオフィスは必要ですし、優良な物件であればテナントが退出しても新たなテナントをすぐに見つけやすいため、賃料が下がりづらいという点があります。


一般的にREITは年2回分配金が支払われます。ビルファンドの決算期は6月と12月になります。現状水準であれば、ざっくり分配金利回りは3%台となります。株式では、配当利回りが4~5%台となっているものもあります。それとの比較で言えば見劣りはしますが、株式の配当の源泉となる利益は大きく変動することもあります。REITは保有物件の入れ替えがなければ分配金の水準は大きくは変化しません。分配金が突然大きく上がる期待は持ちづらい一方、大きく下がる懸念も少ないと言えます。


なお、ホテル系のREITなどは、新型コロナウイルスの感染拡大により、宿泊需要が蒸発するといった事態が発生しました。こういった場合には分配金が急減する可能性はあります。REITの中でも属性の違いがありますので、それらの特徴や投資における注意点については次回以降で触れていきます。


REITの利点とリスク 

 

REITの利点としては

(1) 少額からの投資が可能

(2) 安定的に分配金が受け取れる

(3) 流動性が高い

(4) 実物不動産投資と比べると手間がかからない

といった点が挙げられます。

 

一方

(1) 株式同様に投資口価格が日々変動する

(2) 対象としている不動産物件が倒壊する可能性

(3) 商業系REITでは需要が蒸発する可能性

(4) リモートワークの浸透により大規模オフィスの需要が低下する可能性

 といったリスクがあります。


高配当利回りの株式同様、分配金を取り続けても投資口価格が大きく下がってしまうと、資産が目減りすることはあります。それでも、株式に比べるとリスクが抑えられた金融商品ではあります。今後もREITについて実例を交えながら解説していく予定ですので、利点とリスクの両方について、じっくり理解を深めていただければと思います。

この連載の一覧
米国の不動産王がJ-REITを刺激
住居系REITの急失速
REIT再び調整中
大型オフィスREITが急上昇
J-REITのアツい夏
デベロッパーと商社のタッグ
2024年上半期のJ-REIT市場振り返り
データセンターREITの誕生期待が高まる
円安とREIT安
日本株が大幅安の週にREIT指数が上昇
REITの逆襲
先週のJ-REIT市場では●●がゼロでした!
REIT指数、ここまで下げたらその先は・・・
出遅れるREIT指数
大江戸温泉+アパグループ
J-REITの好パフォーマンス銘柄
KDX不動産投資法人、始動!
米長期金利の5%乗せとJ-REIT
10月決算のREIT
REIT指数が1900p台に到達
中国の団体旅行解禁でホテル系REITが動意づく
日銀の「柔軟化」とJ-REIT
3社合併で巨大REITが誕生
6月決算のREIT
REIT指数が年初来高値を更新
REITの優待
【初心者向け】REITの買いタイミングの考え方
物流REITは売り出尽くし?
株安の中でJ-REITが存在感を示す
複数REITのスポンサー
REIT市場は日銀の新体制を歓迎
REITを見るには金利の方向性が重要に
J-REITは2月決算が多い
温泉以外も始めます
逆風下でのREITの投資戦略
日銀の政策修正でREITが急落
J-REIT入門【第13回】 ローカルREIT
J-REIT入門【第12回】 オンリーワンREIT
REITの合併で投資家が期待できるメリットは?
J-REIT入門【第11回】~不動産株かJ-REITか~
J-REIT入門【第10回】~J-REITで毎月分配~
J-REIT入門【第9回】~急落からの大幅上昇~
J-REIT入門【第8回】~米長期金利4%台の衝撃~
J-REIT入門【第7回】~総合型REITを攻略する~
J-REIT入門【第6回】~属性解説(住居編)~
J-REIT入門【第5回】~属性解説(ホテル・後編)~
J-REIT入門【第4回】~属性解説(ホテル・前編)~
J-REIT入門【第3回】~属性解説(物流編)~
J-REIT入門【第2回】~属性解説(オフィス編)~
J-REIT入門【第1回】~手軽に大家さん~

日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

小松 弘和の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております