6月25日の日本経済新聞1面(電子版では6月24日)では、NTTデータグループ(9613)がデータセンターを投資先とするREIT事業に参入すると報じました。記事によると、国内企業で初めてのデータセンター専門REITとなり、2026年3月期に最大約1000億円の資産規模で運用を始めるとのことです。
現状では人気を集めやすい属性
今回の報道では、「上場も視野に入れる」という内容にとどまっています。ですので、データセンター専門の上場REITが誕生するかどうかは、今後の推移を見守る必要があります。
産業界で生成AIに対する期待が高まる中、データセンターに対する需要もこの先、一段と高まっていくことが予想されます。株式市場では、TSMCの熊本進出やラピダスの北海道誘致などを手がかりに、電力消費の増加期待から九州電力(9508)や北海道電力(9509)などの電力株が強く買われる場面がありました。もし、データセンター専門REITが誕生した場合、現状では人気を集めやすい属性になると考えられます。
データセンターREITはハコ(施設)重視か
データセンターに関しては、地盤が安定している方が良く、立地も無視はできませんが、施設の性能という点がより重視されると思われます。セキュリティの高さであったり、災害時の備えがしっかりしている物件ほど、より高い評価がされるでしょう。ハコ(施設)重視という点では、物流REITが比較の対象となりそうではあります。
既存REITでは産業Fがデータセンターを組み入れ
既存のREITでデータセンターがポートフォリオに入っているREITとしては、産業ファンド投資法人(3249)があります。産業ファンドは「オンリーワンREIT」の回でも取り上げましたが、工場や研究開発施設など産業用不動産が組み入れ対象となっています。
ホームページで組み入れ物件を確認(2024年6月25日時点)すると、品川と大阪豊中の2カ所のデータセンターがポートフォリオに入っています。いずれも稼働率は100%となっています。ただ、108物件中の2物件ですので、全体に占める割合としては大きくありません。
ちなみに、今回、日本経済新聞の紙面でニュースが報じられた6月25日には、産業ファンドの投資口価格にも強い動きが見られました。データセンターREITに対する期待の表れのようにも見えます。
J-REITの裾野が広がる可能性
2024年に入ってから、J-REITがクローズアップされるのは投資口価格の下落など、ネガティブな話が多くなっています。それだけに、今回のニュースが良い意味での刺激材料になってほしいところです。データセンターは「成長」の要素がある属性ですし、日本経済新聞の記事ではNTTデータはデータセンター運営会社で世界3位と報じられています。REITが上場してくれば、新たな層からの資金が入ってくる可能性もあります。
複数の属性を組み入れる総合型のREITでも、今後はデータセンターの組み入れが増えてくるかもしれません。中身は精査していく必要がありますが、今回のニュースを機に、J-REITの裾野が広がる展開が期待できそうです。