東証REIT指数が5月に入って年初来高値を更新しました。2023年は3月までJ-REITには厳しい局面が続きましたが、4月以降は風向きが変わっています。
J-REITに2つの好材料
REIT指数は3月20日に1750.69ポイントまで下落し、年初来安値(終値ベース)を更新しました。この時期、欧米で金融不安が再燃したことで不動産市場への悪影響が懸念され、REITの売り材料となりました。
しかし、2つの材料がREITの再評価機運を高めることになりました。1つは日銀の新総裁から金融緩和継続の姿勢が示されたこと、もう1つは米国の利上げに打ち止め感が出てきたことです。日本と米国の両方で、長期金利が急上昇することへの警戒が大きく後退したことで、利回り商品のREITには買いが入りやすくなりました。5月16日には1888.60ポイントまで上昇し、年初来高値を更新しました。
戻り基調が続いて中期でも底打ち感
REIT指数のチャートを見てみると、3月中旬にストンと下げましたが、4月に入って切り返し、戻り基調が長く続いていることが見て取れます。
上のチャートは日足ですが、週足でもう少し長い期間の値動きを見てみると、こちらでも底打ち感が出てきているように見えます。
REITを取り巻く環境が好転
REITに投資する際には、今の時点から金利が上がりそうなのか、下がりそうなのか、それとも大きな動きがなさそうなのか、といった先の金利の方向性が重要となります。
米国の長期金利はまだ高水準ではあり、インフレへの警戒はくすぶっています。ただ、FRBがこの先、大幅利上げを連続して行うとみている市場参加者は少ないです。日本の長期金利は低水準であるため、政策修正への警戒は常によぎります。しかし、新総裁は現時点では市場がそういった警戒を高めないよう、十分に配慮しているように見受けられます。
金利の方向性という点では、米国はどちらかといえば下、日本は大きな動きがなさそうですので、J-REITには悪くない環境と考えられます。
出遅れREITの動向に注目
REIT指数が年初来高値を更新したといっても、年初から弱かった分を取り戻したにすぎません。中期ではようやく下げ止まったかどうかといった程度ですので、まだ上昇余地はありそうです。ここからREITの動きがもう一段良くなるかどうかを探る意味では、出遅れ感のあるREITをウォッチしておきたいところです。
J-REITの中で時価総額上位である日本ビルファンド(8951)とジャパンリアルエステイト(8952)は、足元でもまだ下値模索が続いており、REITが再評価される中でその恩恵を受けていません。
2023年5月22日時点では、両投資法人とも予想分配金利回りが4%を超えています。REIT指数が年初来高値を更新している中でこれらが安値圏で放置されているというのは、いびつな動きのようにも見えます。見直し買いが入るようであればJ-REIT全体でもさらなる底上げが期待できますので、両銘柄の動向が注目されます。