J-REIT入門

REIT市場は日銀の新体制を歓迎

先週(2023/2/20~2/24)のREIT指数には興味深い動きが見られました。


この週は22日まで目立った動きがありませんでしたが、金曜24日に大幅高。この日の上昇が貢献して週間でも上昇となりました。



日銀の新総裁候補が衆議院で所信聴取


大幅高となった24日には、衆議院で日銀総裁・副総裁候補者に対する所信聴取がありました。新総裁裁候補の植田和男氏の所信聴取は取引時間中の午前9時半から行われ、国内マーケットも植田氏の発言内容に注目しました。


その中で、植田氏からは、現行の金融政策が「適切」と認識していること、金融緩和を継続する意向であることが示されました。特に、緩和継続姿勢が確認できたことが、REITの買い材料になったものと推測されます。


金融政策修正に対する警戒が大きく後退


2月7日の「REITを見るには金利の方向性が重要に」では、REITの値動きが鈍いことについて取り上げました。ちなみにこの時は、市場は観測報道から現副総裁の雨宮氏の新総裁就任を織り込んでいました。ただ、副総裁が繰り上がりで総裁になったとしても、早晩金融緩和は修正されるのではないかとの懸念は根強く、株式との相対比較でもREITは見劣りする動きが続いていました。


2月10日(金)の夕方に、次の日銀総裁は雨宮氏ではなく植田氏であるとの観測が流れましたが、これを受けた13日(月)のREIT指数は下落しました。その後、各種ニュースから植田氏は海外からの評判も高く、次期総裁に適任の見方が強まりましたが、REITの反応はそこまで良くなりませんでした。「誰がなっても・・・」という疑心暗鬼な部分はこの時点でもくすぶっていたと思われます。


しかし、24日の所信聴取はこの不安をある程度払拭する内容となりました。所信聴取において植田氏は、市場を動揺させることがないよう、発言に細心の注意を払ったとは思われます。ただ、金融緩和を継続するつもりがないのにリップサービスをしてしまうと、就任早々から苦しくなってしまいます。このタイミングで新総裁候補から現行の金融政策を踏襲する姿勢が見られたことは大きな意味があると言えます。


J-REITに対する見方が改善する可能性も


実際のところは、引き続き4月27日~28日の新総裁下での最初の日銀会合を見極めないことには、何とも言えないところはあります。ただ、少なくとも4月後半までは、国内の金融政策を過度に警戒する必要がなくなったと言えるでしょう。植田氏が就任早々から豹変しなければ、緩和継続期待がその先も維持されるかもしれません。そして、国内の金利が大きく上昇する可能性が低下するのであれば、REITに対する市場の見方が変わってくる展開が期待できます。


米国の長期金利が高止まりしている点は警戒材料ではあります。ただ、日銀が緩和スタンスであるなら、海外REITとの比較でもJ-REITの優位性が高まる余地があります。ここから4月後半にかけてのJ-REITがどのような動きとなるかは要注目です。植田氏に対する市場の評価が高い状態が続くことが条件にはなりますが、REIT指数は今年1月につけた1783.39p(2023/1/20)で当面の底を打った可能性もあります。


この連載の一覧
米国の不動産王がJ-REITを刺激
住居系REITの急失速
REIT再び調整中
大型オフィスREITが急上昇
J-REITのアツい夏
デベロッパーと商社のタッグ
2024年上半期のJ-REIT市場振り返り
データセンターREITの誕生期待が高まる
円安とREIT安
日本株が大幅安の週にREIT指数が上昇
REITの逆襲
先週のJ-REIT市場では●●がゼロでした!
REIT指数、ここまで下げたらその先は・・・
出遅れるREIT指数
大江戸温泉+アパグループ
J-REITの好パフォーマンス銘柄
KDX不動産投資法人、始動!
米長期金利の5%乗せとJ-REIT
10月決算のREIT
REIT指数が1900p台に到達
中国の団体旅行解禁でホテル系REITが動意づく
日銀の「柔軟化」とJ-REIT
3社合併で巨大REITが誕生
6月決算のREIT
REIT指数が年初来高値を更新
REITの優待
【初心者向け】REITの買いタイミングの考え方
物流REITは売り出尽くし?
株安の中でJ-REITが存在感を示す
複数REITのスポンサー
REIT市場は日銀の新体制を歓迎
REITを見るには金利の方向性が重要に
J-REITは2月決算が多い
温泉以外も始めます
逆風下でのREITの投資戦略
日銀の政策修正でREITが急落
J-REIT入門【第13回】 ローカルREIT
J-REIT入門【第12回】 オンリーワンREIT
REITの合併で投資家が期待できるメリットは?
J-REIT入門【第11回】~不動産株かJ-REITか~
J-REIT入門【第10回】~J-REITで毎月分配~
J-REIT入門【第9回】~急落からの大幅上昇~
J-REIT入門【第8回】~米長期金利4%台の衝撃~
J-REIT入門【第7回】~総合型REITを攻略する~
J-REIT入門【第6回】~属性解説(住居編)~
J-REIT入門【第5回】~属性解説(ホテル・後編)~
J-REIT入門【第4回】~属性解説(ホテル・前編)~
J-REIT入門【第3回】~属性解説(物流編)~
J-REIT入門【第2回】~属性解説(オフィス編)~
J-REIT入門【第1回】~手軽に大家さん~

日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

小松 弘和の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております