ケネディクス系の3つのREITが合併
2023年6月13日に、ケネディクス・オフィス(8972)、ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト(3278)、ケネディクス商業リート(3453)の3つの投資法人が合併することを発表しました。
これらは名前を見てもわかるように、ケネディクス系のREITとなります。それぞれ、オフィス、住居、商業に特化したREITでしたが、これらが合併によって一つのREITになります。
存続投資法人はケネディクス・オフィスで、合併の効力発生日は2023年11月1日を予定しています。合併後の新商号はKDX不動産投資法人となる予定です。
資産規模ではトップクラスに
REITの合併に関しては、「REITの合併で投資家が期待できるメリットは?」でも取り上げていますので、そちらも参考にしてみてください。
今回、注目されるのは合併による資産規模です。会社資料によると、3つのREITの合併によって資産規模が1兆1498億円となり、これは日本ビルファンド(8951)、日本都市ファンド(8953)に次いでJ-REIT中、第3位になる予定とのことです。これにより、MSCI World Standard Index指数への組み入れも視野に入るとしています。実際、既に指数に組み入れられている投資法人のいくつかの資産規模を追い抜くことになると思われますので、J-REITの中で存在感が高まることが予想されます。
また、物件数は350となり、これはJ-REITで最多となる予定です。
特化型でカバーできなかった属性も組み入れ予定
今回の合併の意義の一つに、「投資対象セクターの拡大による持続的成長」が掲げられています。
合併対象となる3つのREITの従来の投資対象は、中規模オフィスビル、居住用施設、生活密着型商業施設、ヘルスケア施設となっていました。合併後は、これまで限定的にとどまっていた物流施設や宿泊施設にも積極的に投資を行うとしています。
これまではきっちり住み分けをしていた分、その枠に入りきらない属性には手を出しづらかったと言えます。合併によって枠が取り払われることにより、フレキシブルに物件を取得できるようになると思われます。
一方、現状ではそれぞれのREITで苦戦する面もあったからこそ、今回、合併に至ったという側面もあります。リリースによると、中規模オフィスビルにおいては、期待利回りが低く、厳しい物件取得環境が続いていたとのことです。居住用施設では収益の相対的な安定性から、取得競争が激化して取得機会が減少していく可能性があるとコメントしています。
合併により規模が大きくなれば安定性が増すことが期待されますが、各物件に対する目利き力が低下しないかや、中期的にパフォーマンスが高まるように属性の比率を上手にコントロールできるのかといった点には注意を払っておく必要があります。
大手総合系の誕生はREIT市場を刺激するか?
今回の合併により、総合系の大手が一つ誕生することになります。現時点で総合系REITで時価総額が上位のREITとしては、前述の日本都市ファンド(8953)のほか、野村不動産マスターファンド(3462)、大和ハウスリート(8984)、オリックス不動産(8954)などがあります。これらが合併REITに刺激されて価値向上に向けた新たな一手を打ち出してくるかが注目されます。
また、REIT内で統合・再編機運が高まってくるかという点も注目されます。投資法人サイドからすれば、単一属性でREITを組成するよりも総合型にした方が、リスクを分散しやすくはなります。資産規模を一気に拡大することを検討する場合にも、属性に縛りがない方がやりやすくなります。一方で、規模を追わず、得意分野に注力して収益性を高めていくという戦略もあります。各REITがそれぞれの観点で魅力を高めていく展開に期待したいところです。