1月20日に、大江戸温泉リート投資法人(3472)が決算と併せて規約の一部変更を発表しました。
同投資法人からのリリースのうち、規約変更についての文を抜粋すると、
「ポートフォリオ利回りを確保しつつリスク分散を図るという観点から、従来の温泉・温浴関連施設をはじめとする余暇活用型施設に加え、新たに賃貸住宅その他の住宅の用に供されるアコモデーション施設(賃貸住宅、学生マンション、社員寮、サービスアパートメント、シェアハウス及び高齢者施設・住宅等その他の住宅の用に供され又は供されることが可能な施設をいいます。)への投資を可能とするため、規約の変更を行うものです。」
とあります。なお本件については、2023年2月27日予定の投資主総会で承認されれば、効力発生となります。
同社については以前、独自色の強いREITとして紹介しました(オンリーワンREIT)。ただ、今回のリリースは、「これからは温浴施設以外も投資対象に加える可能性がありますよ」ということを示唆しています。
オンリーワン色は薄れる可能性
「アコモデーション」とは一般的には宿泊施設のことを言います。ただ、大江戸温泉リートが挙げているアコモデーション施設のそれぞれは、同じ宿泊施設でも温浴施設などレジャー用途とは異なり、ある程度「堅い」需要が見込まれるものが多いと言えます。実際、決算説明資料の中でも、「今後も安定的な運用が見込めるアコモデーション施設を付加することで安定性の向上を目指す」といった記載があります。
同社が現在注力している温浴施設ではまだコロナ禍の影響を受けており、前期においては、大江戸温泉物語グループから固定賃料の時限的減免要請などもあったとのことです。今後は、「温浴施設に特化」という点でのオンリーワン的要素は薄れていくと推測されます。
他の属性の割合が大きく増加するかどうかに注目
今回のリリースはあくまで規約の変更にすぎません。これが承認されたと仮定して、この先、同社がアコモデーション施設をどの程度増やしていくかが注目されます。
今は国内は経済活動が正常化しており、この先はインバウンド需要の盛り上がりにも期待できます。ですので、あくまで別の属性も入れられるようにルールを変更しておくにとどまるかもしれません。その場合は、温浴施設のADR、稼働率、RevPARなどの回復度合いが引き続き重要となります。
一方、温浴施設ではない施設の割合が大きく増えた場合には、同社は現状の運営を厳しいと捉えていると推測されます。その場合、将来的には他の属性の比率が増すことで、大江戸温泉という看板が変わる可能性も想定されます。
変化をチャンスにできるか
前回、逆風下でのREITの投資戦略でも述べましたが、単一の属性の場合、逆風になれば自助努力だけでは本格的な回復に時間がかかることがあります。同社に関しては、レジャーの中でもさらに温浴施設に特化していた分、より選択肢が狭まりやすい状況でした。温浴施設に限らず、賃貸住宅、学生マンション、社員寮などが加わることで、同社が指摘しているようにポートフォリオに安定感は出てくると考えられます。
そう遠くないうちにポートフォリオには変化が出てくると思われます。「温浴施設に特化したREIT」ではなくなるかもしれませんが、「温浴施設に強みを持ち、かつ安定物件も保有しているREIT」として、市場の同社に対する評価が変わってくる可能性はあります。まずは、新たにどういった属性の物件をどのくらいの割合で組み入れてくるかが注目されます。