J-REIT入門

J-REITの好パフォーマンス銘柄

2023年も早いもので、あと約1カ月を残すのみとなりました。今回は一足先に、今年のパフォーマンスが良好なJ-REITについて、特徴的な動きをしている銘柄をいくつか取り上げてみたいと思います。


分配金回復を受けて大きく上昇したINV


まずは、インヴィンシブル投資法人(8963、以下:INV)です。属性解説(ホテル編)6月決算のREITでも取り上げていますが、ホテル系の中では時価総額が最も大きいREIT(2023年11月28日時点)となっています。



昨年末から11月28日までの騰落率は+18.0%。なお、同期間の東証REIT指数はー3.1%となっていますので、INVのここまでのパフォーマンスはかなり良いと言えます。


分配金が、21.6期は15円、21.12期と22.6期が166円であったのに対して、22.12期は832円、23.6期は1464円と大きく増加しました。23.12期は1441円、24.6期は1466円を会社では計画しています。分配金が順調に回復してきたことを受けて、投資口価格にも強い動きが見られています。


6月以降に動きが良くなってきた大和オフィス


続いて大和証券オフィス投資法人(8976)です。同投資法人はオフィス系のREITで、中でも高い需要が見込まれるエリアに投資するスタンスを採っています。千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の「東京主要5区」を最重点投資エリアとし、このエリアへの組み入れ比率を60%以上、それ以外のエリアも首都圏や地方の主要都市としています。



値動きの方は、右肩上がりで推移していたINVとは異なり、年前半は下げ基調が続いていました。しかし、6月に反転すると、以降は強い動きが続いています。安値圏では出来高も増加しており、底打ち期待が高まりました。ちなみに、昨年末から11月28日までの騰落率は+5.6%となっています。


分配金は22.11期、23.5期が1万3700円で、23.11期、24.5期も1万3700円を会社では計画しています。投資口価格は、今年の安値(11月28日時点)が5月30日につけた55万7000円となりますが、年間2万7400円(1万3700円×2)で計算した当時の分配金利回りが4.92%でした。好立地のオフィスを抱えるJ-REITで5%近い利回りが期待できる状況となったことで、見直し買いが入ったと考えられます。なお、11月28日時点(67万6000円)での予想分配金利回りは4.05%となっています。


年前半の成績が良かったコンフォリア


続いてはコンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)です。住居系のREITで、東京圏の賃貸住宅に重点的に投資しています。


2022年12月の日銀の金融政策修正により、J-REITは2023年のスタートから向かい風を受けました。しかし、それにより、REITの中で相対的にディフェンシブ性を有している住居系には資金が向かいました。外部環境と属性の関係については、「逆風下でのREITの投資戦略」でも触れていますので、参考にしてみてください。


2023年は米国の長期金利上昇が続いたことで、年前半の値動きは力強いものとなりました。一方、投資口価格の上昇により、分配金利回り面からの妙味は徐々に薄れてきました。同投資法人は7月が決算月となりますが、今年の高値(11月28日時点)35万8500円を7月27日につけています。分配金の権利を取って上昇が一服した格好となっています。ただ、それでも前半の貯金が大きく、昨年末から11月28日までの騰落率は+8.2%となっています。


2023年は属性間でも格差がついた


2023年は今のところ、J-REITにとっては厳しい環境となっています。11月28日時点では昨年末比で2桁の下落率となっている銘柄も多く、同じ属性でもパフォーマンスには差がついています。


米国の長期金利にはようやく上昇一服感が出てきてはいますが、まだ水準自体は高いことから、個別の選別というのは引き続き重要となってくるかもしれません。今回取り上げた3銘柄も、トレンドはそれぞれ異なりますので、この先の値動きにも注目してみてください。



この連載の一覧
米国の不動産王がJ-REITを刺激
住居系REITの急失速
REIT再び調整中
大型オフィスREITが急上昇
J-REITのアツい夏
デベロッパーと商社のタッグ
2024年上半期のJ-REIT市場振り返り
データセンターREITの誕生期待が高まる
円安とREIT安
日本株が大幅安の週にREIT指数が上昇
REITの逆襲
先週のJ-REIT市場では●●がゼロでした!
REIT指数、ここまで下げたらその先は・・・
出遅れるREIT指数
大江戸温泉+アパグループ
J-REITの好パフォーマンス銘柄
KDX不動産投資法人、始動!
米長期金利の5%乗せとJ-REIT
10月決算のREIT
REIT指数が1900p台に到達
中国の団体旅行解禁でホテル系REITが動意づく
日銀の「柔軟化」とJ-REIT
3社合併で巨大REITが誕生
6月決算のREIT
REIT指数が年初来高値を更新
REITの優待
【初心者向け】REITの買いタイミングの考え方
物流REITは売り出尽くし?
株安の中でJ-REITが存在感を示す
複数REITのスポンサー
REIT市場は日銀の新体制を歓迎
REITを見るには金利の方向性が重要に
J-REITは2月決算が多い
温泉以外も始めます
逆風下でのREITの投資戦略
日銀の政策修正でREITが急落
J-REIT入門【第13回】 ローカルREIT
J-REIT入門【第12回】 オンリーワンREIT
REITの合併で投資家が期待できるメリットは?
J-REIT入門【第11回】~不動産株かJ-REITか~
J-REIT入門【第10回】~J-REITで毎月分配~
J-REIT入門【第9回】~急落からの大幅上昇~
J-REIT入門【第8回】~米長期金利4%台の衝撃~
J-REIT入門【第7回】~総合型REITを攻略する~
J-REIT入門【第6回】~属性解説(住居編)~
J-REIT入門【第5回】~属性解説(ホテル・後編)~
J-REIT入門【第4回】~属性解説(ホテル・前編)~
J-REIT入門【第3回】~属性解説(物流編)~
J-REIT入門【第2回】~属性解説(オフィス編)~
J-REIT入門【第1回】~手軽に大家さん~

日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

小松 弘和の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております