2022年12月6日時点で、J-REITでは61銘柄が上場しています。今回はその中から、オンリーワン色の強い銘柄をいくつか紹介します。
空港や港湾関連の施設を抱える産業ファンド
まずは産業ファンド投資法人(3249)です。国内唯一の産業用不動産REITとなります。工場や研究開発施設のほか、羽田空港のメインテナンスセンターといった空港関連施設、港湾関連施設など、インフラ施設がポートフォリオに含まれています。
なお、ポートフォリオの約半分近くは物流施設が占めており、属性としては物流系に近いと言えます。インフラ関連の施設は景気の影響は受けづらいですが、研究施設などは企業がリストラを実施することで研究から撤退するといったことは起こり得ます。基本的には安定成長が期待できますが、物流REIT同様、不況のような状況になった場合には弱いという側面はあるでしょう。
ヘルスケア特化型のヘルスケア&メディカル
次は、ヘルスケア&メディカル投資法人(3455)です。ヘルスケア特化型としては唯一のREIT(2022年12月6日時点)となります。有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅(サ高住)、医療関連施設などがヘルスケア関連の物件となります。東証プライムに上場しているシップヘルスケアホールディングス(3360)などを主要スポンサーとしています。
有料老人ホームなどは日本の高齢化が進む中、需要の高い状況が続くと見込まれます。同投資法人では稼働率が100%に近い状態が長期で続いています。物件に関しては、属性的には立地も重要な要素ではありますが、施設内の設備が整っているかや、老人ホームであれば入居者目線に立った作りになっているかといったことが、物件の価値を高める点ではより重視されると言えるでしょう。また、運営企業のブランドイメージも、高稼働を維持するには重要な要素と考えられます。
温浴施設に重点投資する大江戸温泉
続いて紹介するのは、大江戸温泉リート投資法人(3472)です。大江戸温泉物語グループが運営する温泉や温浴施設に重点投資するスタンスを採っています。レジャー系というくくりでは、ホテル系に近いです。実際、ポートフォリオに含まれる物件は温泉がついた宿泊施設となっていますので、ホテルREITの解説の際に説明したADR、稼働率、RevPARといった指標が同投資法人を分析するのにも重要な要素となります。
人気は独り占め、しかし注目されないリスクも・・・
こういったオンリーワンタイプのREITは、他のREITとの単純比較がしづらいという点で、人気になれば買いを集めやすいという性質があります。その一方で、オンリーワンの分、そのジャンルに注目が当たらなければ、物色の蚊帳の外に置かれるリスクもあります。また、業績が悪くなった場合なども、他との比較で妥当な水準を見定めづらい分、敬遠されやすくなると言えます。
こういった振れ幅が大きくなる傾向を投資で活用するとすれば、上に大きな動きが出てきた時に、短期で値上がり益を取りに行くといった戦略が考えられます。逆に風向きが変わった場合には、手じまいを急ぐといった決断も必要となるかもしれません。中長期の視点では、人気が離散して下にオーバーシュートした際に仕込むといった戦略が有効と考えられます。
なお、3つのREITの2022年に入って12月6日までのパフォーマンスを見ると、ヘルスケア&メディカルがプラス13.4%と強く、11月には上場来高値を更新しています。一方、産業ファンドはマイナス28.7%と厳しい結果となっています。これは2021年までのパフォーマンスが良かった反動が大きく出ているのと、2022年は欧米の金融引き締め強化により、景気悪化に対する警戒が高まったことが逆風になったと推測されます。大江戸温泉は経済活動正常化の恩恵はあるものの、コロナ禍において財務リスクが高まったこともあり、マイナス9.7%と復活道半ばといった状況です。