2022年の9月後半から10月にかけて、東証REIT指数が調整色を強めています。
この時期に米国の長期金利が大きく上昇しており、米10年債利回りが4%台に乗せてきたことが影響していると推察されます。今回は、足元の動きを振り返りながら、REITと金利の関係について整理していきます。
REITを見る上では金利動向が重要に
まず、REITを見る上では、長期金利の動向が重要となります。分配金利回りがある程度安定しているREITは、金融商品としては債券的な側面もあります。そのため、長期金利の水準によってREITの人気が高まったり低下したりします。
あるREITが、概ね安定的に3%程度の分配金利回りで推移していたとします。長期金利(債券にも色々ありますが、ここでは同じ国の国債とします。)が1%程度の水準であった場合には、3%は魅力的に映ります。しかし、長期金利が5%程度の水準であった場合には、逆に投資対象ですらなくなる可能性があります。
債券は基本、保有時にはクーポン(利息)を受け取り、満期時には元本が返ってきます。国債であれば、国が破綻するといった大事とならない限り、元本が毀損するリスクは極めて小さいです。REITは元本保証の商品ではありませんし、分配金も債券の利息のように一定ではありませんので、安全面での比較では国債>REITとなります。ですので、国債よりも安全度が低いのに利回り面でも妙味の乏しいREITがあった場合、投資家からはソッポを向かれます。
安全面では国債>REIT>株式
米国は2022年に入ってから、政策金利を引き上げ続けており、これを受けて米国の長期金利も上昇基調が続いています。ですので、そもそも今の状況は、REITにとってはあまり歓迎される環境ではありませんでした。
それでも、REIT指数は今年1月に大きく崩れて年初来安値を更新した後は、比較的値を保っていました。先ほど、安全面での比較では国債>REITであると述べましたが、株式とREITを比較した際にはREIT>株式となりますので、株式が崩れる際にもREITはディフェンシブ性を発揮する場面がありました。また、日本では行動制限がなくなったことで、不動産賃料の回復期待が高まったことも下支え要因になったと考えられます。
米長期金利の4%台乗せにより絶対水準で見劣り
ただ、ここにきてJ-REITが崩れだした背景には、米長期金利の「4%」という水準が大きいように思われます。
J-REITは中長期でみれば、分配金利回りで3~4%台が一つの目安となっていました。ブランド力が高い大型オフィス系REITなどは、不人気になって投資口価格が下落しても、3%台後半から4%台に近づくと値ごろ感からの買いが入りやすくなります。
そのような中、米国の10年債利回りが4%台に乗せてきました。世界の運用資産の中で安全面ではピカイチと言える米国債で4%程度のリターンが期待できるとなると、いくら日本の大型REITが優良不動産物件をポートフォリオに入れていても、投資対象としては見劣りします。米国債には為替リスクがあります。ただ、足元では円安進行が連日のようにニュースで報じられるような状況です。日本の投資家からすれば、為替差益も期待できるという点で米国債の方がより魅力的に映るかもしれません。
なお、日本の10年債利回りは足元で0.2%台と低水準ですので、これとの比較ではJ-REITは依然として優位性があります。ちなみに現状ではその兆しは全く見えませんが、仮に日本の長期金利が4%台に乗せてくるような局面が到来した場合、その時にJ-REITの一般的な分配金利回りが今と同程度であった場合には、日本国債には為替リスクがありませんので、J-REITの水準は大きく切り下がることになると推測されます。
米長期金利の高止まりが続くようならJ-REITはもう一段の調整も
米国の長期金利が2%台、3%台で推移していた際には、相対評価はともかく、絶対評価ではJ-REITが勝てる部分がありました。しかし、絶対水準で期待リターンが同程度、もしくはJ-REITが見劣りするとなると、話は変わってきます。
この先、米国の長期金利(10年債利回り)が4%を上回る状態が定着するようなら、投資家はJ-REITにもっと高いリターンを要求することになるでしょう。とはいえ、世界的に金利が上昇傾向にある中で収益性を高めていくのは簡単ではありません。そうなると、投資口価格が調整される(すなわち下落する)ことで落としどころを探ることになると思われます。
また、もしそのような状況になった場合、抜本的な収益性の改善に向けて、J-REITの合併、再編などが進む可能性があります。単独では収益力を高めることが難しいREITは淘汰されるかもしれません。ただ、そういった大きな動きが出てくることが、長い目で見た時にJ-REITの評価を高めることもあります。目先は厳しい状況が続くかもしれませんが、変化の芽には注意を払っておきたいところです。