REIT指数が12月に一段安
東証REIT指数が軟調に推移しています。
2024年の後半は下値を探るような動きが続いていましたが、12月に入ってからは一段と下方向に勢いがついています。11月27日から12月10日までは10日続落と売りが止まらない状態となりました。
8月の水準を下回り年初来安値を更新
12月18日の終値は1620.60pでした。
日経平均が大暴落した今年8月5日の終値が1621.75pで、これを下回り年初来安値を更新しています。なお、8月5日の取引時間中には1618.96pまで下げていますが、指数の高値・安値の更新は終値ベースで判別します。
10日続落となった後、8月安値を前にしてはいったん踏みとどまっていました。しかし、12月18日は持ちこたえられず取引終盤に崩れており、この日は安値引けとなっています。
J-REITの投資環境は好転せず
弱い動きが続いているのは、J-REITの投資環境がなかなか良くなってこないことが背景にあると考えられます。
REITは利回り商品だけに、長期金利の動向が重要となります。まず、日本に関しては、現状で日銀は緩やかながら金利を引き上げるスタンスを採っています。景気が非常に良い状況下で金利を引き上げるのであれば、不動産価格や賃料収入の増加も期待できます。
ただ、今は長く低金利政策を続けてきたことで低すぎる水準となった分を修正しているような状態ですので、そこまで景気が良くなったという実感がありません。金利引き上げのプラスの効果が期待しづらく、マイナスの影響はじわじわときているため、J-REITが買われづらくなっています。
米国や欧州の中央銀行は、2024年に入って利下げのスタンスに舵を切っています。ただ、米国の長期金利は高止まりしています。FRBが利上げを続けていた局面でも景気が底堅く、利下げに踏み切った後も良好な経済指標が多く出てきていることから、長期金利が下がりづらくなっています。
日本はまだまだ金利の上昇が続きそう、米国は金利の低下度合いが緩慢ということになると、J-REITの投資妙味は低下します。
FOMCと日銀会合の結果を見る直前に安値を更新
REIT指数が年初来安値を更新した12月18日は、FOMCと日銀金融政策決定会合の結果を確認する前の日でした。事前観測ではFOMCでは利下げが実施され、日銀は利上げを見送るとの見方が強まっており、これらはどちらもJ-REITには安心材料ではあります。ただ、それにもかかわらず、これらの中央銀行イベントを前にREIT指数は年初来安値を更新しました。
REITを見る上では、長期金利の大きなトレンドを捉える必要があります。日銀に関しては、12月の会合で利上げが見送られたとしても、それで利上げが打ち止めになるとの見方は強まりません。むしろ、「12月に据え置きなら次回以降では利上げの可能性が高い」との警戒が浮上します。
米国に関しては、2025年に入ると毎回のFOMCで利下げをするのではなく、スキップ(見送り)を挟んでいくのではないかという見方が出てきています。「日本の長期金利は方向としては上、米国の長期金利は方向としては下だけど、急激には下がりそうにない」というJ-REITにとって逆風の流れが変わることへの期待を抱きづらくなっています。
高利回り銘柄と時価総額上位銘柄をウォッチ
日米の長期金利の観点からは、J-REITを強く推せない環境が2025年も続きそうではあります。一方、個別では投資口価格が下落したことで、分配金利回りが上昇した銘柄が多くあります。2024年12月18日時点では大半の銘柄の分配金利回りが4%以上となっており、6%を超える銘柄も多くあります。
REIT全体で底打ち感が出てくるかどうかを見極めるという点では、まず、利回りの高い銘柄の動向が注目されます。REITは安定した分配金が見込めます。利回りの高い銘柄の動きが良くなってくれば、下値不安が和らいできたと考えられます。
また、時価総額が大きい銘柄にも要注目です。大底を打ったとの見方が強まれば、流動性の高い銘柄に資金が向かいやすくなります。大型REITは業績に対する安心感から、早めに押し目買いが入ることもあります。12月の下げに関しては、今年のパフォーマンスが良くなかったことで、見切り売りが加速してしまった可能性もあります。安値を更新したことでさすがに下げ過ぎとの見方が強まることもありますので、年明け辺りでいったんの売り一巡感が出てくるかが注目されます。