日経平均が大幅安の一方でREIT指数は上昇
2023年3月14日に、日経平均は610円安(前日比2.2%安、27222.04円)と大幅に下落しました。この日の日本株は、ほぼ全面安となったのですが、そのような中で、東証REIT指数は7.5p高(同0.4%高、1822.89p)とプラスで終えています。
不動産関連が強かったかというと、不動産大手の三井不動産(8801)株は日経平均同様に下落していますので、この日のREIT指数の動きは注目されます。
米金融機関の破綻で株式はリスクオフ
3月10日に米国のシリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻したことで、それ以降の株式市場ではリスクオフの様相が強まっています。米国では同行以外にも、8日にシルバーゲート・キャピタルが傘下の銀行の精算を発表したほか、12日にはシグネチャー銀行が破綻するなど、金融業界に関するネガティブなニュースが相次いでいます。
SVBの破綻規模がリーマン・ショック以来と報じられたこともあり、市場ではクラッシュを警戒する声もあります。一方で、SVBは米国のスタートアップ企業との関係が深く、一般的な銀行とは毛色が違うこと、米財務省やFRBが即座に預金保護の姿勢を打ち出したことなどから、混乱は一時的ではないかとの見方もあります。
長期金利低下がREITの買い材料、だけど・・・
一連の騒動の中で米国の長期金利が大きく低下しており、このことが3月14日のREIT指数の上昇につながったものと推測されます。「ショック」が意識されたことで、FRBが利上げに及び腰になる⇒この先も米国の金利は上がりづらくなる、といった連想も働きます。
ただ、長期金利低下を好感したのであれば、もっと早くにREITは買われても良かったようには思われます。三井不動産など不動産株も買われても良いはずです。そうならなかった背景には、今回の問題が銀行絡みであったという点が大きいと考えられます。
金利の急低下は景気の悪化も意識させる
以前、「REITを見るには金利の方向性が重要に」でも触れましたが、金利の急低下は景気の悪化を意識させます。特に今回は金融機関の破綻も発生していますので、この先、金融機関が融資に慎重になってしまうようだと、不動産市場に悪影響が出てくることも懸念されます。そのため、REIT指数が金利低下に好反応を示すのに若干のタイムラグが生じたものと思われます。
また、「不動産かJ-REITか」で説明しましたが、金融商品として不動産株とJ-REITを比較した際に、業績面で安定感があるのはJ-REITです。ショックが意識されるくらい市場が冷え込んだため、不動産株よりもリスクが相対的に小さいJ-REITにまず買いが入ったものと考えられます。
ショックかどうかを見極める指針
REIT指数が1日上昇したからといって、この先も買いが続くとは限りません。ただ、マーケットが弱材料に敏感になっている時に、いち早くREITがディフェンシブ性を発揮したことは特筆されます。3月14日に日本株が大幅安となった中でREITに買いが入ったということは、今のマーケットを俯瞰で捉えた投資家が、冷静に買える要素のある属性に資金を振り向けたということでしょう。
今は、「不動産バブルが崩壊したわけではなく、それでいて米国の長期金利は大きく低下した」という状況です。SVBは金融機関ではありますが日本では事業を展開しておらず、米国のスタートアップ企業と日本の不動産市場との関係性は薄いというか、あまり関連する点がなさそうです。足元の混乱が一時的であれば、J-REITは最も買いが入りやすい部類に入るかもしれません。国内不動産株も同様でしょう。言い換えれば、これらにいつまでたっても買いが入らないようであれば、マーケットはまだ何かを警戒している可能性があります。
J-REITを見る上では
・不動産関連の悪材料が出てこないかどうか
・米国や日本の長期金利が急上昇しないか
といったことがここから先の注目点となります。
まだ市場の混乱が続くのであれば、REITの上昇も単発にとどまると思われます。一方、上昇基調を強めていった場合には、市場が落ち着きを取り戻しつつあると考えられます。そして、後者であれば早晩日本株の動きも良くなってくるでしょう。普段からREITに注目している方はもちろん、REITにあまり興味はない方も、今のグローバルマーケットが「SVBショック」に突入しているのかどうかを見定める意味で、REIT指数の動向をチェックしておくことをお勧めします。