日銀がYCCの修正を決定
日銀は2023年7月27~28日の日銀金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:YCC)の修正を決定しました。結果発表日の7月28日は、事前に観測報道も伝わったことで日経平均が乱高下しましたが、J-REIT市場にも大きな動きが見られました。
この日は日銀が金融政策を修正するとの観測報道が流れたことで、日本のマーケットが開く前の27日の米国債券市場で長期金利が上昇。米国株も上昇していたところから下げに転じ、ダウ平均は14日ぶりに反落しました。
直前では7月会合で日銀は動かないとの見方が多かったことから、この報道はネガティブサプライズと受け止められ、REIT指数は大きく水準を切り下げて始まりました。日銀は観測通り、長期金利に関して0.5%を「めど」に、一定の上昇を容認することを決定しました。これに加えて、10年物国債の「指し値オペ」の水準を1%に引き上げることも決定されたことから、国内長期金利上昇に対する警戒が台頭。REIT指数は終盤には持ち直したものの、場中には鋭角的に下を試す場面がありました。
日銀会合の直前では年初来高値を更新
REIT指数は日銀会合の直前では強い動きを見せていました。7月26日には今年に入って初めて1900p台に乗せ、年初来高値も更新しました。この時の買いを呼び込んだのがFOMCでした。7月25~26日に開催されたFOMCでは利上げが決定されましたが、市場では7月の利上げに関しては織り込み済みで、これで打ち止めになるとの期待が高まっていました。米国ではダウ平均が連日で上昇していたこともあり、米国の長期金利上昇に対する警戒が大きく後退。J-REITに関しても、FOMCの結果を確認する手前から上昇基調を強めてきました。
REIT指数は今年に入って何度か上を試す場面がありましたが、1900pに近付くと跳ね返される動きが続いていました。それだけに、重要イベントであるFOMC近辺で1900pを超えてきたことは、さらなる上昇への期待を高めました。しかし、日銀会合の結果発表日に乱高下して1900pを割り込むと、7月31日と8月1日は連日で下落しています。日経平均の方は混乱は1日で収束し、7月31日と8月1日は大幅高となりましたが、J-REITに関しては、日銀会合を境に売られる展開となっています。
日本の長期金利には上昇圧力
今回の日銀会合を受けて、日本の10年債利回りは0.5%を大きく上回り0.6%台に乗せるなど上昇傾向にあります。ただ、今すぐ1.0%を試すような動きにはなっていません。また、米国の10年債利回りは足元4%近辺で推移しており、絶対水準としてはまだ大きな開きがあります。
日銀としては、ここから金利をガンガン上げてインフレを抑制するといったことは考えていない、ただ、10年債利回りの1%くらいまでの上昇は容認する、それにより、この先に起こり得るマーケットのリスクに柔軟に対応できるようにするといったスタンスに変更したということになります。
7月31日、8月1日の日経平均が大きく上昇したのは、7月28日の下げが終わってみればそこまで深刻なものとならなかったということもありますが、「日銀が投機筋に攻撃されて国内マーケットが大混乱し、長期金利が急上昇する」ことに対するリスクが低下したことが背景にあると考えられます。
一方、日本株が強いのにJ-REITが弱いのは、「10年債利回りが急上昇はしないまでも、1%に向けて水準を切り上げていく」との警戒が強まったことが背景にあると考えられます。
J-REITに関しては、米国の金利が上がりづらくなりそうということと、日本の金利が上がりそうということ、このどちらの影響が強く出てくるかが注目されます。米国の長期金利低下が鮮明となってくれば、押しは軽微にとどまり、改めて年初来高値を更新していく展開にも期待が持てます。一方、米国の長期金利がなかなか下がらず、インフレ長期化に対する警戒が強まった場合には、日本の金利も上がりやすくなるでしょうから嫌われる部類に入ると予想されます。国内マーケットが日本の長期金利上昇を警戒しているかどうかを見定めるという点からも、REIT指数が持ち直すのかそれとも下げ基調が続いてしまうのかを注意深く見ておく必要があります。