先週(2022年10月24日~28日週)のJ-REITには、大きな動きが見られました。前回、米国の長期金利が上昇し、J-REIT市場が大きく崩れたことについて取り上げましたが、足元でリアルに起きていることが、良い教材となりそうですので、値動きを振り返りながら、J-REITの属性などについても掘り下げていきます。
米長期金利の上昇一服でJ-REITが大幅高
2022年10月24日~28日週の東証REIT指数は、5.5%高と大きく上昇しました。その前の週に、一部メディアの報道から、米国の利上げペースが減速するのではないかとの期待が高まりました。これを受けて、米国の長期金利も低下基調を強める場面がありました。
この週の日経平均は0.8%高、TOPIXは0.9%高ですので、REIT指数の上昇は突出しています。同じ期間のダウ平均が5.7%高となっており、REIT指数はこれに近いパフォーマンスとなっています。日本のREITが米国の長期金利に大きく刺激されたことが見て取れます。
大型・物流がアウトパフォーム
ここからは、この期間にREIT指数をアウトパフォームした個別の銘柄について見ていきます。
先週は主力ど真ん中の銘柄、オフィス系の代表格であるジャパンリアルエステイト(8952)が8.6%高、日本ビルファンド(8951)が7.5%高と大きく上昇しました。時価総額上位の野村不動産マスターファンド(3462)も6.8%高と大幅高となっており、J-REITの水準が切り上がる中で大型の銘柄が素直に買われています。
また、プロロジス(3283)が6.5%高、GLP(3281)が6.4%高と、物流系も大幅高となっています。これらは大型REITにも該当しますが、物流系ではほかにも、三菱地所物流(3481)が8.1%高と急伸しました。
ホテル系がアンダーパフォーム
一方、追い風に乗り切れなかったのが、ホテル系のインヴィンシブル(8963)で、0.2%安とマイナスとなりました。2.5%高となった星野リゾート・リート(3287)、2.1%高となったジャパン・ホテル・リート(8985)など他のホテル系も、やや見劣りする動きとなっています。
主役級の銘柄が上昇した安心感
ここに挙げた以外にも値動きが大きかった銘柄は多くありますが、先週は、上がってほしい主役級のREITがしっかり買われた週であったと言えます。
安値圏で大型の銘柄や、分配金利回り面での妙味が相対的に低い物流系に買いが入ったことは、J-REIT底打ちへの期待を高めます。
その一方で、アンダーパフォームとなったホテル系に関しては、直前でインバウンド需要回復期待で買われていたものが多くあります。アンダーパフォームといっても大きく下げているわけではありません。ある属性が買われている時に別の属性が売られるようだと、J-REITの中だけで資金が移動しているという可能性もありますが、先週に関しては、全体で底上げが進んだ印象があります。
米金利には引き続き留意、物流株の動向に要注目
J-REITの急伸に関しては、米国の長期金利が影響した可能性が高いため、引き続き米国の金利動向には注意を払っておく必要があります。ただ、厳しい下げを見た後に、主力銘柄が大きく上昇したところを見ると、売りの峠はいったん超えたとみて良いかもしれません。大底かどうかの判断は難しいですが、こういう嵐が通過して戻りが確認できた後というのは、仕込み場と言えるでしょう。
特に物流系の今後の動向は注目されます。物流系は利回り妙味が低い一方で成長期待は高く、株式市場でいうグロース株的な側面があります。10月の株式市場では、ソフトバンクグループ(9984)や半導体株などグロース系の銘柄に見直し買いが入ったことで、全体の動きも良くなってきました。米国の長期金利上昇や景気減速懸念から物流系は足元で敬遠されていましたが、これらが持ち直してくるようであれば、REIT全体の見直し機運がもう一段高まる可能性があります。