株式投資では株を保有している投資家への特典の一つとして株主優待があることが広く知られていますが、J-REITにも優待制度があります。今回はJ-REITの優待について解説します。
なお、個別の優待についても触れていますが、それぞれの内容に関しては、執筆時点(2023年4月18日)のものとなります。変更されることもありますので、各投資法人のHPで内容を確認することをお勧めします
REITの優待は「投資主優待」
J-REITは不動産投資信託という位置づけのため、保有者を言い表す言葉は株主ではなく、投資主となります。投資主に付与される特典も、株主優待ではなく投資主優待という表現を使います。
権利確定日までに該当の銘柄を保有する必要があるなど、優待の権利を得るための流れは株主優待と同様となります。
ヘルスケア系はサービスを身近に感じてもらう優待を提供
ヘルスケア系の物件がポートフォリオに含まれているREITでは、優待を実施している投資法人がいくつかあります。介護施設の無料体験入居であったり、施設入所の割引サービスなどを提供していることが多いです。オンリーワンREITで紹介したヘルスケア&メディカルほか、以下のREITがこのタイプの優待を実施しています。
ヘルスケア&メディカル投資法人(3455、決算期:1月、7月)
ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人(3278、決算期:1月、7月)
大和証券リビング投資法人(8986、決算期:3月、9月)
利用ニーズのない方にはおまけのような優待ですが、家族・親族に有料老人ホームの入居を検討される方がいる場合などは、サービスを体験できるメリットがあります。
ホテル系では宿泊割引サービスを提供
ホテル系では、ホテルの宿泊割引サービスなどを提供しています。2023年4月18日時点で優待を実施しているのは、以下のREITとなります。
いちごホテルリート投資法人(3463、決算期:1月、7月)
投資法人みらい(3476、決算期:4月、10月)
インヴィンシブル投資法人(8963、決算期:6月、12月)
ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985、決算期:12月) 10口以上
ホテルの利用機会が多い方などにはメリットが感じられる優待と言えるでしょう。いちごホテル、みらい、インヴィンシブルでは利用回数に制限を設けていません。なお、割引サービスに関しては、割引の率などは物件によって変わるところが多いです。また、適用除外となる日を設けているものもあります。
いちご系列ではJリーグ関連の優待制度を導入
いちごホテルリート投資法人(3463)といちごオフィスリート投資法人(8975、決算期:4月、10月)では、スポンサーのいちご(東証プライム上場企業:2337)がJリーグの「トップパートナー」となっており、Jリーグ全クラブ・全試合を対象とする抽選式の優待制度を導入しています。抽選という条件がつきますが、Jリーグファンの方には楽しめる優待と言えるでしょう。
2023年4月17日には、5月に開催される「Jリーグ30周年記念イベント」の参加者を募集するリリースを出しています。なお、当該優待に関しては、2022年7月末時点の投資主が対象となっています。
優待を実施しているJ-REITは多くはない
実際のところ、J-REITで投資主優待を実施している企業はそれほど多くはありません。銘柄数そのものが少ないというのもありますが、J-REIT自体が利益の大半を分配金で投資主に還元する性質の商品であるため、コストをかけて優待を充実させることを投資主がそれほど望んでいないという背景もあります。
タカラレーベン不動産投資法人(3492)はヤマダHD(9831)の買い物優待券を送付していましたが、22.8期をもって廃止しています。大和ハウスリート投資法人(8984)はホテルの割引優待を実施していましたが、スポンサーの関係で23.2期をもって廃止しました。ホテル系で人気の高い星野リゾート・リート投資法人(3287)も優待を実施していた時期がありましたが、今は廃止しています。この先も実施企業が増えるかと言われると、その可能性はあまり高くはありません。
ただそれだけに、優待を実施しているところは他のREITと比べて差別化できる要素があると言えます。REIT自体が分配金を受け取りながら長期で投資するのに適した商品でもあります。気に入った優待を見つけることができれば、多くの人がなかなか気づかないプラスアルファのメリットを存分に享受することができるでしょう。