ホテルが大幅安の一方で物流がしっかり
2023年3月第3週のJ-REIT市場では、属性別で濃淡が色濃く出てきました。個別の週間騰落を見ると、ホテル系で大きく下げているものが多い一方、物流系では値を保っているものが多くありました。
この週は、海外で金融不安が高まったことから、J-REIT市場は軟調となりました。前回、株式市場がリスクオフとなる中でREIT指数が健闘したことについて触れましたが、その後、スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの経営不安が高まり、米国でも地銀のファースト・リパブリック・バンク株が乱高下するなど、欧米の金融不安を警戒する流れが続きました。
そのような中、REIT指数も下げ止まりとはならず、週間では2.95%安と大きめの下落。昨年来の安値を更新しました。
ホテル系と物流系はここまで対照的な動き
この週に大きく売られたいちごホテル(3463)と、週間でプラスを保った三井不動産ロジスティクスパーク(3471)のチャートを見比べてみると、対照的な動きをしていることがわかります。
いちごホテルは直近までは右肩上がり、一方、三井不動産ロジは下値模索が続いていました。逆風下でのREITの投資戦略で、属性の序列がホテル>住居>オフィス>物流となりやすい環境であることを紹介しましたが、2023年3月上旬までは米国の長期金利は上昇傾向にあり、その一方で訪日客は回復傾向にありましたので、J-REITでもホテル系と物流系では値動きが真逆と言えるくらいの格差がついていました。
軟調相場で弱い物流系が下げ渋る
この週の東証REIT指数は軟調でしたし、株式市場もリスクオフの様相が一段と強まりましたので、ここまでの動きが良かったホテル系が大きく売られることに関しては、そこまで驚きはありません。ただ、物流系に対する売り圧力がそれほど強くなかったことはやや意外感があります。
REIT指数が一段と水準を切り下げてきたのですから、足元のモメンタムが弱い物流系は見切り売りが加速しても不思議ではない状況でした。しかし、この週に関してはそうはなりませんでした。
投資口価格の下落により、物流系の分配金利回りは3%台後半から4%台のものが多くなっています(2023年3月20日時点)。物流系の属性解説のところで、この属性は成長期待が高い分、利回り妙味は低いことを紹介しましたが、中長期の視点では結構魅力的な水準に入ってきたと言えます。リスクオフの地合いの中で冷静にこの点を評価した買いが入っているのであれば、それは好ましい動きと言えます。
物流やオフィスの動向に要注目
もし、REITの中で敬遠されていた属性である物流系が下げ止まり、持ち直してくるようであれば、REIT全体にも好影響が期待できます。この週に関しては、ホテル系が大きく下げた一方、物流系は相対的に底堅かった程度ですので、下げ止まったかどうかに関しては、もうしばらく推移を見極める必要があるでしょう。
ただ、世界的な金融システム不安が高まる中で、米国の長期金利は大きく低下しています。金利の上昇局面に比べると、REITに注目が向かいやすい環境にはなっています。ここから金利が上がりづらくなるようだと、先ほどの序列(ホテル>住居>オフィス>物流)が逆になる可能性もあります。物流系に加えて、オフィス系の動きが良くなってくるかどうかにも注意を払っておきたい局面です。