2022年12月に日銀が金融政策を修正したことで、J-REITには逆風が吹いています。政策修正の発表があった2022年12月20日には、東証REIT指数が大幅安(日銀の金融政策でREITが急落)となりました。いったん持ち直したものの2023年に入って再び売られる流れとなり、1月16日には直近12月20日につけた安値を下回りました。
日本の金利がこれから上昇しそうとの見方が強まっていることが、利回り商品のREITには逆風となっています。そういった向かい風の局面で、各属性のREITがそれぞれどう評価されやすいかについて解説します。
住居系は逆風下でディフェンシブ性を発揮
【住居】
住居系は金利上昇局面において、ローリスクという側面がクローズアップされやすくなります。他の属性との相対比較で空室率上昇リスクが小さいことが背景にあります。株式で言えばディフェンシブ株に近い性質を持っているため、REITに対する逆風が長く続くとの見方が強まった方が、より選好されやすくなるといえます。
【オフィス】
オフィスに関しては、基本的にはミドルリスク・ミドルリターンの性質を持っています。ただ、時価総額でトップクラスの日本ビルファンド(8951)とジャパンリアルエステイト(8952)が、REITが嫌われる局面では象徴的に売られやすくなるという傾向があります。ではこの銘柄を避ければ良いかというと、小型のオフィス系REITは資金調達の面で苦戦したり、大型のテナントが撤退するといった懸念があります。そのため、REITに対する風向きが悪くなる初期段階では、実力以上に売られることも多い属性となります。
【物流】
厳しい立ち位置が予想されるのが物流系です。物流系は成長期待が高く、株式で言えばグロース株に近い性質を持っています。高い評価がされている分、分配金利回りは抑えられているものが多いです。REITが下げ基調に入った時に下げ止まるかどうかのよりどころの一つが分配金利回りとなりますが、この点で投資妙味がなかなか高まらないという側面があります。
それでも、景気が良いから金利が上がるという状況であれば業績面で買われる要素がありますが、今はそこまでではありません。2022年のパフォーマンスが悪かった銘柄も多く、需給面で見切り売りに押されやすくもなっています。
【ホテル】
ホテル系は平時であれば、金利上昇時には景気減速が意識されるため嫌われる属性となります。
ただ、今はコロナ禍からの立ち直り局面にあり、業績回復への期待が高いという点が他の属性とは大きく異なります。実際、中国のゼロコロナ政策が転換されたこともあり、足元ではホテル系には強く買われている銘柄もあります。教科書的には金利上昇時には敬遠したい属性ですが、今の環境では最も選好されやすい属性になっていると言えます。
ホテルは現時点では人気を集める側に
本来、金利の上昇がREITの逆風となる局面では、住居>オフィス>物流>ホテルとなりやすいです。ただし、今は特殊要因で、ホテル>住居>オフィス>物流という序列となりやすい環境と言えます。
総合型に妙味が出てくる?
最後に、総合型に関して触れておきます。総合型に関しては、各属性をどの程度保有しているかによって評価が変わってきます。現状の環境では、ホテルなどレジャー物件や、住居の割合が高い銘柄の方が選好されやすいと思われます。
また、総合型に関しては、特化型と違ってポートフォリオの割合を調整できる余地があります。特化型はその属性に対する見方が厳しくなると、その中で優良物件を保有していたとしても、それだけでは評価がなかなか上がらないこともあります。一方、総合型であれば、評価が高まりそうな属性の物件を新たに加える、低くなりそうな属性の物件を売却するなどして、金利上昇への耐性をつけるといった対応が可能となります。
不動産の収益性は長期で見ていくため、拙速な入れ替えが失敗するリスクもありますが、REITに対する逆風が長引いた場合には、変化が期待できる銘柄に対する評価が高まる可能性があります。その点では総合型の中からREITに資金を呼び込む銘柄が出てくるかもしれません。