5月にREIT指数が大幅安
5月に入ってREIT指数が大きく下落しました。
5月はほぼ一本調子で下げており、月末の時点(1741.01p、5/31)では1800pを割り込んでいます。月間でも3.7%安と大きく下落しました。
日本の長期金利上昇を警戒
5月に流れが悪くなった要因としては、長期金利の上昇が挙げられます。米国では市場予想を上回る経済指標が多く出てきたことで、長期金利が下がりづらくなりました。
それ以上に、日本の長期金利の上昇がクローズアップされました。国内不動産を運用対象とするJ-REITにとっては、日本の長期金利上昇は逆風となります。
円安進行で市場が金融引き締めを意識
では、この日本の長期金利上昇を促したのは何だったのでしょうか?
その要因の一つが円安です。
日銀は3月の金融政策決定会合で金融政策を転換しました。ただ、緩和的なスタンスは継続する意向を示しました。一方、米国では利下げに対する期待はありながらも、粘着質なインフレが続いて長期金利が下がりづらい状況が続きました。
この結果、日米の金利差が縮小するには時間を要すとの見方が強まり、4月に入ってドル円は円安(ドル高)方向への勢いを強めていきました。
4月の日銀金融政策決定会合の発表日は26日で、ここでは円安をけん制するメッセージが出てくるのではないかとみられていましたが、金融政策は現状維持となりました。この結果を受けて円安が加速し、29日には160円台に乗せました。
この160円台に乗せた29日に一気に154円台まで円高に振れており、介入が入ったと市場が受け止めたことから、円安にはブレーキがかかりました。財務省は5月31日に、4月26日~5月29日の間に9兆7885億円の為替介入を実施したことを公表しています。
ただ、この時の動きが介入であったことを多くの市場参加者が認識はしたものの、それで円高に勢いがついたわけではありませんでした。5月3日に151円台に入ったところで切り返すと、5月も仕切り直しのような格好で円安が進みました。
政府・日銀が何度も介入を行うことは健全ではなく、市場では日銀が早期に追加利上げに踏み切るのではないかとの見方が広がってきました。利上げをすれば日米の金利差が縮小して円安を食い止める効果が期待できます。
そのような中、日本の10年債利回りは5月22日に1%台に乗せ、30日には1.1%台に乗せました。30日は日経平均株価も一時900円を超える下落となり、円と株式と債券が売られる「トリプル安」の様相が強まりました。
政府・日銀が慌ただしくなると要注意
国内の不動産が投資対象になるJ-REITは、一般的には為替の影響は受けづらいとみられています。ただ、政府や日銀の関与が求められるくらいに為替に対する警戒が強まった際などには、その副作用として、今回のように長期金利にも影響が出てくることがあります。
とばっちりを受けているようでもありますが、マーケットは緩やかにつながっていますので、こういったことは今後も起こり得ます。為替や株式の値動きが荒くなり、政府や日銀のコメントがニュースなどで大きく取り上げられるような局面では、「長期金利にも動きがあるかもしれない」と構えておいた方が良いでしょう。
なお、円安が進行したとしても、それが緩やかであれば、為替介入への警戒は高まりません。また、日本の長期金利上昇に関しても、経済が良くなって利上げをする環境が整っていれば、不動産の賃料も上昇しやすくなっていると思われます。その場合には、金利が上昇したとしてもそれだけでREITが売り込まれる可能性は低いと考えられます。
6月に入ってからは、米国の長期金利に上昇一服感が出てきて円安にもブレーキがかかっています。5月とは環境に変化が見られますので、REIT指数にも反転の動きが出てくるか要注目です。