トランプ氏が大統領選で勝利を収めて以後、第1次政権以上に過激な言動が増えています。
更に、「Make America Great Again」という言葉は、自国を有利にするのは政治家としては当然なのかもしれませんが、あまりにも偏りすぎて、他国のことを顧みないことがさらに問題になっています。
第1次政権の時は、国際的な秩序がある程度保たれると世界中は期待していましたが、(公約通りでもありますが)米国第一主義というよりも米国(もっと言えば自分)のこと中心の行動でした。
そして、これからの4年間も同様になると、世界中の政治家たちは気が付いています。
脱米国ができない国・・・
日本は歴史を振り返っても、地政学的にもロシア、中国、北朝鮮に囲まれていることもあり、脱米国が進むことはないでしょう。
カナダ、メキシコは「すでに全輸入品に25%の関税をかける」と課税強化を宣言させられていますが、両国とも南と北に米国が位置することで、なかなか米国離れは難しそうです。
脱米国が起きそうな国・・・
このように地政学の問題や、核の傘下などの問題もあり、米国頼りから抜け出せない国はあります。
しかし、そのような問題を抜きにした国はどうでしょうか?
先々週、トランプ次期大統領は「ドルに代わる通貨の創設を支持する経済圏の加盟国に100%の関税を課す」と警告しています。
これはBRICS+が新通貨の創設を計画しているという誤った報道に対しての発言ですが、いかにもトランプ氏らしくドルが基軸通貨から外れるのを避けるために脅しをかけました。
しかし、今後これらの国は米国から圧力をかけられたとしても、その圧力に屈しない可能性があります。
例えばロシアは政治的だけではなく、軍事的にも米国と関係が悪化する一方です。
中国も大幅課税強化を宣言されるなど、経済的に良好な関係に戻ることが難しいかもしれません。
これまで米国から一定の恩恵を受けていたブラジル、インド、南アなどの国も、脅迫を繰り返す米国に嫌気をさしつつあります。
そして、米国に依存をするよりも、中国や他の大規模経済の方が魅力的になりつつあるでしょう。
実際に、南アなどは最大の通商相手国は中国ですし、南アの豊富な鉱物資源を買ってくれるのは中国です。
そしてBRICS+(プラス)とプラスを書いているように、BRICSは5国だけではなくイラン、エジプト、UAE、エチオピアも加入予定です。
この9カ国の人口は今年10月のデータで35.6億人、一方でトランプ大統領がお山の大将のG7は7.7億人です。
BRICS+はGDPが27.3兆ドルでG7が47.3兆ドルなので、経済規模はG7が大きいですが、この差も徐々に縮まってきています。
要するに、これまでのようにアメリカ(トランプ氏)の脅しに屈しない国が、どんどん増えることが予想されます。
なぜならば、米国と取引するよりも、中国をはじめとした他国と取引する方が有利だから当然のことでしょう。
FXもすでに脱米国の動きも
各国の経済規模などの話をしていてもFXにはつながらないと思われるでしょうが、そうではありません。
例えば先週月曜の動きを振り返ってみましょう。
この日に中国政府が金融政策のスタンスを「適度に緩和的」と2011年以来、約13年ぶりに変更しました。
中国の中央銀行は、「緩和的」「適度に緩和的」「穏健な」「適切に引き締め的」「引き締め的」の5つの政策スタンスがあり、「穏健な」から一段階下げたわけです。
この発表があり、FX市場はどう動いたでしょうか?
まずは、円が多くの通貨に対して売られました。
市場がリスク選好の動きになるとの予想で、円売りが始まったわけです。
これはおそらく想定通りでしょう。
しかし、欧米株の反応は非常に限定的でした。
ドイツ株は反落、米国株も主要3指数ともにマイナスで引けています。
これまでは中国経済の拡大は、世界経済にも好影響を与えることで、米株にも買いが集まったでしょう。
しかし、トランプ政権が発足すると、中国の景気が浮揚しても米国とは課税合戦のために米国にはあまりプラスには働きません。
だから、中国の今回の政策変更でも米株は弱含んだのです。
一方で、中国とともにBRICSのメンバーのブラジル、南ア株は急上昇しました。
また、ランドも約1カ月ぶりとなる水準までランド高・ドル安が進みました。
要するに、中国経済の浮揚でも、トランプ政権後は、これまで以上に米国にはメリットがなくなっていくのです。
よって、中国経済の浮揚策が出た場合は、中国と密接に結びついている国の通貨を買うべきです。
今回は円売りが進みましたが、今後は円もこれまで通りに動くとは限られないでしょう。
これまでのように、米国が吠えたら、他国がそれに従う時代ではなくなることを頭に入れておかなければいけないと思われます。