中国株投資を始めるためのキーワード

「ラブブ」:ポップマートのキャラクターが世界を席巻、第2・第3のラブブにも期待


中国のデザイナーズトイ最大手、ポップマート(09992)が手掛ける「LABUBU(ラブブ)」が世界的にブームとなっています。ラブブとは、香港生まれオランダ育ちの龍家昇(カシン・ロン)氏の絵本シリーズ「ザ・モンスターズ」に登場するキャラクターの1つで、森に住む小さなエルフがモデルとされており、大きな目に長い耳、ギザギザの歯などが特徴となっています。


BLACKPINKのリサが火付け役、レディ・ガガも愛用

ラブブが初めて登場したのは10年ほど前になりますが、韓国のガールズグループ、BLACKPINKのメンバー、リサが最近の一大ブームの火付け役とも言われています。リサは多数のコレクションを所有しているとされ、8月中旬に行われたロンドン公演では、自身がラブブを模したピンク色の長い耳のマスクを着用し、腰には特注のラブブ人形を下げて登場したことで世間の注目を集めました。


リサ以外にも、韓国のボーイズグループ、BTSのVやSEVENTEENのジョシュアなど多くの人気アイドルがラブブを持ち歩く姿が目撃されており、米国ではレディ・ガガが自身のツアー衣装や髪型を模したラブブ人形をカバンに付けているほか、デザイナーのマーク・ジェイコブスや歌手のシェールなど、海外セレブにもラブブのファンが多くいるようです。


日本では、ユニクロが8月25日にザ・モンスターズとコラボしたTシャツなどを発売しましたが、商品はあっという間に売り切れ、高額転売が続出する事態となっており、人気の高さがうかがえます。


ポップマートの25年6月中間決算、純利益は5倍

ラブブの人気と同様にポップマートの業績も絶好調で、8月中旬に発表された2025年6月中間決算では、売上高が138億7600万元、純利益が45億7400万元となり、前年同期比でそれぞれ3倍、5倍に拡大しています。ポップマートを創業した王寧会長は業績発表会で、上期には想像できないようなサプライズが相次ぎ、ラブブが世界的なキャラクターに成長したと指摘。年初時点では25年の売上高目標を200億元に設定していたものの、現時点では300億元も容易に達成できそうだと自信を示しています。



一方、業績発表会では、8月下旬にミニ版ラブブの投入を予定していることも明らかにされました。ラブブ人形はこれまでカバンに付けることが一般的だったものの、ミニ版はスマートフォンへの取り付けも可能で、会社側は大きなヒット商品になる可能性があると期待を寄せています。王会長は、世界的に有名なキャラクターは話題性が低下しても商業価値は高い状態が維持されているとし、ラブブも同様のポジションを目指していきたいと意欲をみせています。


第2、第3のラブブの登場に期待 モリーなど

市場では、ラブブの「マンネリ」や人気後退を懸念する声も聞かれていますが、業績発表会で王会長が手にしたミニ版ラブブに対し、SNSでは「欲しい」との声が多く聞かれており、現時点でネガティブな兆しはみられていないようです。


ポップマートの6月中間期の売上高をキャラクター別にみてみると、ラブブを含む「ザ・モンスターズ」が前年同期比7.7倍の48億1000万元と全体の34.7%を占め、最大の稼ぎ頭となっていますが、「MOLLY(モリー)」は73.5%増の13億6000万元、「SKULLPANDA(スカルパンダ)」は2.1倍の12億2000万元、「CRYBABY(クライベイビー)」は3.5倍の12億2000万元、「DIMOO(ディムー)」は2.9倍の11億1000万元といずれも高い伸びを示しており、売り上げは5つのキャラクターで10億元、13のキャラクターで1億元をそれぞれ突破するなど好調。今後、第2、第3のラブブの登場にも期待がかかります。



ポップマートは9月8日付でハンセン指数・中国企業指数に採用へ

一方、ポップマートを巡っては、香港市場を代表するハンセン指数への採用が決まったことも追い風となっています。株価指数を運営するハンセン・インデックシズは四半期ごとに行っている各種指数構成銘柄の見直し結果を公表し、9月8日付でポップマートとチャイナ・テレコム(00728)、京東物流(02618)の3銘柄をハンセン指数に採用し、ポップマートの1銘柄を中国企業指数に採用すると発表しました。


ポップマートは採用基準を満たしながらも過去2回の見直しでは採用が見送られていた経緯もあり、ようやくハンセン指数構成銘柄に加わることになります。今後は指数への組み入れによりパッシブ運用による買いなども予想され、ラブブとともにポップマートの注目度はさらに高まるとみられています。




この連載の一覧
「ラブブ」:ポップマートのキャラクターが世界を席巻、第2・第3のラブブにも期待
「固体電池」:低空経済からEVへ、実用化が加速する未来技術
「内巻」:過当競争で業界全体の成長力が低下、反内巻の取り組み加速へ
「人型ロボット」:長期的な成長に大きな期待
「限韓令」:韓国コンテンツの流入禁止措置に緩和の兆し 新大統領就任で一気に加速も
「文化広場」:全国規模の株式取引マーケットの形成に歴史的な役割
「上場廃止問題」:中国企業のADRにリスク再浮上、香港証券取引所の役割に期待
「初のブル相場」:上海総合指数は99日続伸や105%高を記録
「ナタ2」:空前の大ヒット、興行収入は160億元到達の予想も
「胖東来」: 中国で「小売業の奇跡」と称賛される地方都市のスーパーマーケット
「栄耀」:華為から分離・独立、株式制改革完了で上場に現実味
「一簽多行」:深セン住民を対象にマルチビザの発給開始、香港経済回復を後押し
「打風不停市」:悪天候下での通常取引、初回は混乱なく通過
「上海証取の株券ペーパレス化」:世界に先駆けて実現
「新中国の証券取引所の誕生」(その2):“正式開業”は上海が第1号
「新中国の証券取引所の誕生」(その1):“営業開始”は深センが第1号
「市場介入の始まり」:投機熱抑制と相場救済
「先A後H」:A株企業の香港上場、美的集団で注目 新たなトレンドに
「証券口座の開設者急増」:中国で株式投資ブームが再来?
「香港小売業」:かつての「買い物天国」、中秋節・国慶節で巻き返しに期待
「無人タクシー」:商業化に熱い期待
「プライマリー上場切り替え」:アリババ集団が手続き完了、本土投資家も近く投資可能に
「蘋果概念株」:iPhone16発表控え再注目、代表銘柄に瑞声科技やBYDなど
「パンダ寄贈」:国慶節に香港へ2頭、経済効果に期待高まる
「中国股民の誕生」:冷淡から熱狂へ 1990年の株式投資ブーム
「相互取引制度」:本土投資家は香港株に、海外投資家はA株に投資が可能 制度の整備進む
「新中国の証券取引市場の誕生」:発行市場の広がりで流通市場が生まれる
「中国恒大集団」:本土不動産子会社に罰金、仲介機関や監査事務所にも波及
「新中国の株券の誕生」:株式制度の原点からのスタート
「金と中国」:人民銀は21年11月から買い増し継続、産金株は高値更新相次ぐ
「万科企業」:中国不動産市場と資本市場発展の縮図
「白名単」:融資に適した不動産プロジェクトを集めたホワイトリスト
「中国不動産市場の誕生」:1980年代に初の分譲物件
「景勝地運営」:上場企業を通してみる中国観光地、黄山や玉龍雪山など
「辰年相場」:過去4回は平均14%上昇、風水では年後半に上昇か
「映画市場」:23年興行収入は4年ぶり高水準、国産映画が圧倒的存在感
「胡潤百富榜」:英会計士が趣味で始めた長者番付、トップは農夫山泉の会長
「三条紅線」:不動産企業が超えてはならない3本のレッドライン
「シグナル8」:台風襲来で取引停止、制度見直し議論本格化
「中国人民銀行」:中国の中央銀行
「中央1号文件」:新年最初の政策文書 20年連続で「三農」がテーマ
「房住不炒」:不動産投機を封じ込む中国の不動産政策基調
「人口問題」:61年ぶり人口減、かつては第2子で高額罰金
「香港証取の2通貨建て取引」:人民元グローバル化推進の一環
「一線都市」:近年は「新一線都市」も登場
「新エネ車」:高まる中国の存在感 BYDは日本進出
「明星株」:台湾歌手の関連銘柄が香港デビュー
「国務院」、最高国家行政機関
「中央経済工作会議」、経済関連の最高会議
「広州交易会」:年2回開催、貿易動向を占うバロメーターとして注目
「n中全会」、5年間に7回開催の重要会議
「共産党大会」、事実上の中国の最高指導機関
「最低賃金」:地域ごとに決定、上海は月給が10年で6割増
「結婚事情」:婚姻件数激減、背景には中国古来の固定観念?
「失業率」:若年層は5人に1人が失業、諦めムードも
「全国政協」、全人代と合わせて「両会」
「全人代」、国家最高権力機関
「中国の祝日・イベント 」:国務院が祝日スケジュールを年末に発表、近年は「独身の日」も台頭

中国株情報部 アナリスト

竹内 なつ子

大学卒業後、日本の証券会社に勤務。中国・北京での語学留学を経て、日系証券会社の上海駐在員事務所や台湾の会計士事務所で翻訳業務に従事。2級FP技能士。

竹内 なつ子の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております