あの株はいまいくら?

第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はPKSHA Technology(パークシャテクノロジー、3993)をみていきます。

同社は自然言語処理、画像認識、機械学習/深層学習技術を用いたアルゴリズムソリューションを各種ハードウエア端末(サーバ、スマートフォン、医療機器、各種IoT機器)向けに開発・提供しています。


2017年9月に上場したパークシャテクノロジーは、技術力を武器にした最先端分野のIT(情報技術)ベンチャーとして人気化しました。では、上場からの動きを振り返ります。



パークシャテクノロジーの株価推移(上場から1年)

2017年9月22日に上場した同社の初値は、公開価格1200円(分割を遡及修正)を大きく上回る2740円(分割を遡及修正)でした。ただ、日本郵政の大規模売り出しを控え、個人マネーが動きにくいタイミングだったこともあり、初値売買代金は63億円にとどまりました。お祭り級IPOとしてはやや物足りない初値および初値売買代金となりました。


この初値に関してアナリストは「ザラ場に余力を残している可能性に期待したい」と指摘していましたが、上場後の株価は驚異的な上昇となりました。10月10日に7225円(分割を遡及修正)まで上昇。20日程度で公開価格の6倍、初値に対しても2.6倍となり、初値買いでも大儲けすることができました。

その後いったん調整するもさらに一段高となり、2018年1月29日に8365円(分割を遡及修正)まで上昇。なお、これが上場来高値です。ここを天井として株価は下落していくことになります。


【パークシャテクノロジーの週足チャート(2017年9月~2018年9月)】




パークシャテクノロジーの株価推移(2018年1月~2019年7月)

2018年は1月に高値を付けてからほぼ右肩下がりとなり、年末には3000円台まで下落しました。

業績については、18.9期の連結営業利益は6.0億円(前の期比50.9%増)であり、2017年11月に発表した会社予想の5.6億円を上回る着地となっています。業績の面で悪材料が出たわけではないですね。期待で上がりすぎた株価に調整が入ったと考えるべきでしょう。


2019年は年初から株価は切り返しの動きとなります。売られ過ぎと考える人が多かったのでしょう。2月には普通株式を1株につき2株の割合で分割すると発表。これも株価上昇を後押ししました。


【パークシャテクノロジーの週足チャート(2018年1月~2019年7月)】



パークシャテクノロジーの株価推移(2019年7月~)

2019年は年初から株価上昇が続いていましたが、7月の公募増資から流れが変わります。需給悪化懸念から株価は下落することとなりました。


さらに11月に発表した20.9期の連結営業益予想7.5億円が市場コンセンサスの8.0億円を下回ったこと、翌年2月に発表した20.9期1Qの連結営業利益が1.1億円(前年同期比37%減)と大幅な減益となったことも嫌気されました。

結局、20.9期の連結営業利益は6.3億円(前期比12%減)と当初予想を下回る着地となりました。

この要因は、成長戦略に基づいた先行投資を実施し、給与などおよび地代家賃などが増加したこと、新型コロナ感染拡大により事業活動に一部遅延が発生し売上高が押し下げられたことだと会社側は説明しています。


きかっけは需給懸念でしたが、その後に業績懸念が台頭したことで株価は大きく下落。2020年3月19日に上場来安値1329円をつけました。ただ、その後は切り返しの動きとなり、2021年には4000円の大台を回復する場面がありました。しかし、それを維持できず、2022年以降は2000円から上下500円程度の値動きとなっています。


【パークシャテクノロジーの週足チャート(2019年7月~2021年12月)】



今後の株価は?

いまだにPERは100倍を上回っていますので、成長期待は高いと考えられます。しかし、コロナ禍もあり今のところ期待ほどではないと感じます。

22.9期通期の連結営業利益は15.7億円(前期比2.4倍)と急回復しましたが、23.9期通期の連結営業利益予想は16.0億円(前期比2.2%増)とほぼ横ばいです。なお、市場コンセンサスの24.9期の連結営業利益予想は18.5億円(前期比16%増)となっています。

このようにアナリストは来期16%程度の増益になると予想していますが、これも上場時点で期待されたほどの成長ではないと思います。


ただ、今年3月には大規模言語モデルの社会実装を加速する「PKSHA LLMS」をリリース。4月には清水建設が同社グループのAIヘルプデスクを導入しました。また、同月に東京海上日動と大規模言語モデルを活用した保険業界特化の対話型AIの開発に着手することも発表しています。このように期待できる材料も出てきています。


24.9期の会社計画が市場コンセンサスを上回ってくるようなら、再評価されるはずです。11月に発表される通期決算や来期の会社計画を占ううえでも、まずは5月に発表される上期の決算に注目したいと思います。


この連載の一覧
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております