あの株はいまいくら?

【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」

「あの株はいまいくら?」では、話題になった株の現状を確認します。今回は2018年の最注目IPOだったフリマアプリのメルカリ(4385)の株価と業績をみていきます。


メルカリの株価推移

2018年6月19日に上場したメルカリの初値は5000円でした。公開価格3000円を大きく上回り、同日に6000円まで上昇しています。下のチャートは上場日から2022年8月までの週足チャートです。これをみていただくとわかりやすいのですが、上場後はさえない動きが続きます。そして、2018年の年末に2000円割れ、いったん持ち直すも2020年3月19日に上場来安値1557円を付けました。



転機になったのは、新型コロナウィルスの感染拡大です。2020年3月19日を底に株価は上昇トレンドに転換。2021年には上場直後につけた株価6000円をようやく上回り、11月22日に上場来高値7390円を付けました。


ただ、そこから急落。世界的な金融引き締めによるグロース株売りの流れを受けて、足元では3度目の株価2000円割れの局面となっています。



メルカリの業績推移

メルカリの業績ですが、売上高は順調に増加しています。一方で、営業利益は18.6期から20.6期まで3年連続の赤字となり、とくに20.6期に営業赤字193億円と大幅な赤字となりました。21.6期は営業黒字に転換したものの、22.6期はふたたび赤字に転落しています。


単位:百万円



20.6期の大幅な赤字は、成長を最優先した投資を継続する勝負の年として、メルカリUS事業(米国でのメルカリ事業)やメルペイ事業の拡大をめざしたことが背景にあります。

この投資が奏功したのか、メルカリUSは21.6期にGMV(流通取引総額)を大きく伸ばすとともに、4Qに営業黒字を達成しました。また、メルペイも5月単月営業黒字を実現しました。このようなこともあり、21.6期は営業黒字に転換しました。



22.6期決算にみる2つの懸念点

21.6期は営業黒字となりましたが、22.6期はふたたび赤字となりました。しかし、赤字が懸念なのではありません。

メルカリJP(国内メルカリ事業)が利益を出しているので、他の事業(メルカリUSやメルペイなど)でどれだけ投資を行うかによって、黒字になるか赤字になるか変わります。言い方を変えれば、会社側が投資を抑えることで黒字化しようと思えばできると考えられます。では何が懸念なのかをみていきましょう。


1つ目の懸念はメルカリJPの成長頭打ちです。メルカリJP について、同社では22.6期のGMV成長率を20%以上と想定していましたが、結果は予想を下回る12%でした。在宅時間の減少や不正対策の影響、投資方針のアップデートによりGMV成長率が一時的に鈍化したとのことです。


2つ目の懸念はメルカリUSのGMVのマイナス成長です。22.6期のGMV成長率はメルカリJP と同様に20%以上を想定していましたが、GMV成長率は-2%となりました。

特に4QのGMV成長率は-12%と大きく落ち込んでいます。前年度4Qのハードルに加えて、インフレをはじめとする外的要因によって購入が鈍化したことが要因とのことです。


メルカリJP、メルカリUSどちらも一時的に成長率が鈍化しただけかもしれません。しかし、もし低成長率やマイナス成長が続くようなら、成長期待のはく落により同社の株価がさらに低迷する可能性があります。



最後に

同社の足元の株価は上場して3度目の2000円割れのタイミングとなっており、過去の株価水準から言えば割安と判断できないこともありません。

しかし、米国の景気減速懸念もあり、「22.6期のGMV成長率の鈍化はあくまでも一時的なもの」と判断することは難しいと思われます。

同社株を購入する場合は、業績推移、とくにGMVの状況をみながら慎重にタイミングを判断したほうがよいでしょう。


この連載の一覧
第38回 勤怠管理システムの「ヒューマンテクノロジーズ」 株価は上場来安値圏で公開価格も下回るが
第37回 ポケットマルシェ運営の「雨風太陽」 赤字縮小も株価は下落傾向
第36回 自転車専門店の「ダイワサイクル」 決算受け株価は水準訂正 営業利益10億円も近い?
第35回 AI関連として注目集まる「ABEJA」 足もと株価は上場来高値の半値水準
第34回インフラ分野特化のAIベンチャー「グリッド」  初値天井も株価は逆襲局面
第33回 サーモンの養殖、水産品の加工・販売の「オカムラ食品」 上場日の高値を12月に更新
第32回 名刺管理サービスの「Sansan」 大きな流れの変化のタイミングは近い?
第31回 オーダーメード型AI開発の「ラボロAI」 24.9期は組織の土台づくり優先へ
第30回 航空機エンジン部品の製造・販売の「エアロエッジ」 キラリと光る下請け製造業
第29回 メタバースプラットフォーム運営の「monoAI」 とうとう公開価格割れ
第28回 月面開発事業の「ispace」 資金調達懸念も夢は大きい
第27回 キャッシュレス決済サービスの「TMN」 株価はついに公開価格割れ 底打ちはまだ?
第26回 単結晶ダイヤモンドの「EDP」 1Q赤字転落も状況は改善
第25回 AI技術活用したサービス開発の「HEROZ」 株価10分の1からの逆襲局面
第24回「不眠治療用アプリのサスメド 不眠大国ニッポンの救世主?」
第23回「ビジネスコーチ リスキリングが追い風」
第22回「CtoCメディアプラットフォーム運営のnote 黒字化はまだまだ先?」
第21回「クラウド型ソフト“ヤプリ”を提供するヤプリ 初の四半期黒字化達成でトレンド転換か」
第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」
第19回「音楽著作権管理のネクストーン 過度な期待のはく落はチャンス?」
第18回「マイクロ波技術ベンチャーのマイクロ波化学 夢の技術も業績が」
第17回「ライブ配信プラットフォーム「ツイキャス」の運営のモイ 急騰でトレンド転換?」
第16回「完全栄養食の開発・販売のベースフード 利益率改善で黒字化なるか」
第15回「航空会社国内3位のスカイマーク 経済再開で需要回復だが懸念も」
第14回「クラウドインテグレーター大手の日本ビジネスシステムズ ChatGPTで再注目?」
第13回「ヘルスケア機器の開発・販売のPHCHD V字回復見通しだが・・・」
第12回「農工大発の創薬型バイオベンチャーのティムス 臨床試験開始再評価の発表で株価急落」
第11回「アルゴリズム開発のパークシャテクノロジー 来期は大幅増益なるか」
第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」
第9回「にじさんじ運営のエニーカラー ホロライブのカバー上場で需給はさらに悪化?」
第8回「ロボアドのウェルスナビ 預かり資産の増加ペース鈍化?」
第7回「高級家電のバルミューダ 上場来安値更新も?」
【あの株はいまいくら?】第6回「SIXPADのMTG インバウンド消滅響くも反撃に期待」
【あの株はいまいくら?】第5回「クラファンのマクアケ 2年続く下落トレンド 底入れ間近?」
【あの株はいまいくら?】第4回「ユーチューバー事務所のUUUM 株価10分の1からの再出発?」
【あの株はいまいくら?】第3回「ペッパーフードサービス 直近株価は急落 復活はあるか?」
【あの株はいまいくら?】第2回「フリマアプリのメルカリ 株価は底値圏のようだが・・・」
【あの株はいまいくら?】第1回「パズドラのガンホー」

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

河賀 宏明の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております