「あの株はいまいくら?」では、話題になった株の現状を確認します。今回はクラウドファンディングプラットフォーム「Makuake」の運営などを行うマクアケ(4479)をみていきます。
2019年12月に上場したマクアケは、KSK ANGEL FUND(本田圭祐氏のファンド)や堀越寶世氏(市川海老蔵氏の本名)などの著名人が出資していることでも注目されました。
公開価格1550円に対し初値は2710円と好調なスタート。初値形成後も堅調な動きは続き、同月中に初値のほぼ倍となる5410円まで株価は上昇しました。では、その後の動きを追っていきます。
マクアケの株価推移(上昇局面)
上場直後こそ5000円を超える株価を付けましたが、新型コロナウイルス感染拡大による全体相場低迷の影響を受けたこともあり、しばらくは軟調な展開が続きました。
しかし、2020年4月から株価上昇がスタート、11月には上場来高値1万3770円をつけました。半年程度で株価は3倍はすごいですね。
【マクアケの週足チャート(2019年12月~2020年11月)】
上昇の要因(全体相場の影響)
その期間は新型コロナへの過度な懸念が和らぎ、相場が戻したタイミングでもありました。2020年3月から2020年10月にかけてマザーズ指数は2倍超上昇しています。まずは全体相場の影響があったと考えられます。
【マザーズ指数の週足チャート(2020年1月~2020年11月)】
上昇の要因(個別要因)
同社は2020年1月28日に上場後初めて決算発表を行いました。20.9期1Q(10-12月)の応援購入総額は21.8億円(前年同期比73.7%)、売上高は5.2億円(前年同期比63.9%)となりました。
2020年4月21日に行った20.9期上期の決算発表では、20.9期2Q(1-3月)の応援購入総額は26.0億円(前年同期比2.2倍)、売上高は6.0億円(前年同期比2.1倍)となりました。
2020年4月は同社の株価上昇がスタートした時期です。応援購入総額が順調に増加していることが、成長期待を高めたと考えられます。また、新型コロナの感染拡大による外出自粛などの流れから巣ごもり消費が注目を集め始めた時期でもあります。
2020年7月21日に行った20.9期3Qの決算発表では、20.9期3Q(4-6月)の応援購入総額は46.3億円(前年同期比3.4倍)、売上高は9.7億円(前年同期比3.1倍)となりました。
2020年10月27日に行った20.9期4Qの決算発表では、20.9期4Q(7-9月)の応援購入総額は52.5億円(前年同期比3.1倍)、売上高は11.3億円(前年同期比2.7倍)となりました。
このように応援購入総額、売上高ともに大きく伸びています。さらに、20.9期3Qの営業利益は2.9億円と大幅に増加。投資家が「今後も利益が伸び続けるのではないか」と期待するのは当然のことでしょう。これが1万円超えの株価につながったと考えられます。
20.9期4Qは応援購入総額、売上高ともに順調に伸びたものの、営業赤字となりました。この赤字はプロモーションへの投資を実施したためであり、この時点ではそれほど懸念材料にはなっていません。しかし、プロモーションへの投資で応援購入総額、売上高を伸ばしたことの反動が次期(21.9期)に出たようです。
マクアケの株価推移(下落局面)
2020年11月に上場来高値1万3770円をつけましたが、そこから下落トレンドとなりました。2022年10月3日には1149円まで下落し、上場来安値を更新しています。
上場来高値からみると株価は10分の1以下となっていますので、下げ止まりそうな水準ではあります。ただし、直近で2022年3月安値を下回ってきたことから、さらに一段安となる可能性も捨てきれません。
【マクアケの週足チャート(2020年11月~2022年10月)】
下落の要因(全体相場の影響)
マザーズ指数は2021年12月から大きく下落しました。マクアケの株価下落の後半部分に影響を与えた可能性は高いと考えられますが、下落トレンドに転じた要因ではなさそうです。
【マザーズ指数の週足チャート(2020年11月~2022年10月)】
下落の要因(個別要因)
21.9期1Qでは、営業黒字転換したものの、応援購入総額、売上高ともに20.9期4Qを下回る結果となりました。
21.9期2Qは応援購入総額、売上高は伸長したものの、先行投資として人件費・広告宣伝費が増加したことで、再び営業赤字となりました。
21.9期上期は投資と利益のバランスをとるのに苦慮していたように感じます。
21.9期下期は先行投資の効果が出たのか、応援購入総額、売上高ともに堅調推移となりましたが、20.9期ほどの高成長になりませんでした。そして、22.9期は応援購入総額、売上高ともに伸び悩む展開となっています。
21.9期~22.9期にかけて徐々に成長期待がはく落していったことが株価下落の主因のようです。また、同社は21.9期、22.9期と2期連続で業績の下方修正を行っています。投資家から見通しが甘いとみられても仕方ないでしょう。
同社については、上場してすぐに新型コロナの感染拡大という特殊要因の影響を受けました。上場したてで巣ごもり消費の追い風を受けたことで、バランスが崩れてしまったように感じます。そして、巣ごもり消費が落ち着いたことで反動が出てしまい、なかなか体制を落ち着かせることができなかったのでしょう。
なお、同社は22.9期3Qの決算説明会資料において、経済活動再開が加速し始めた2022年5月以降、事業者、消費者のオフラインへの一時的な戻り傾向が顕在化しつつあり、4Qにかけて影響が拡大すると予想しています。コロナ禍の反動の影響はもうしばらく残りそうですね。
最後に
22.9期3Qの決算説明会資料には、「Makuake」があるからこそ世の中にデビューすることができた大企業の尖った商品が次々と登場し、人気を集めているとのことや、SDGs関連プロジェクトが増えてきていることが記載されています。クラウドファンディングの社会インフラとしての価値が高まれば、同社が再評価される流れも期待できそうです。
業績も株価も新型コロナに翻弄されましたが、23.9期は徐々に影響が薄れてくると思われます。急成長とはいかなくても、安定成長が確認できれば、そこが株価の底入れタイミングになるはずです。23.9期以降しっかりと増益基調に戻せるかに注目したいと思います。