あの株はいまいくら?

第10回「ヘアカット専門店「QBハウス」のQBネットHD」

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は低価格ヘアカット専門店「QBハウス」を全国展開するキュービーネットホールディングス(6571 以下、QBネットHD )をみていきます。

「QBハウス」の知名度は高かったものの、同社のIPOはファンドの出口案件といえましたので、厳しいスタートになることが懸念されていました。

では、QBネットHDの上場からの株価の動きを振り返ります。



QBネットHDの株価推移(上場から1年)

2022年6月8日に上場した同社の初値は、公開価格(2250円)を下回る2115円でした。ファンドの出口上場で人気が乏しいにもかかわらず、公開規模は大きいことから、売りを吸収できませんでした。また、上場当日は米国株安を受けて相場が全面安でした。これも影響したと考えられます。

上場から1年の株価推移をみるときれいに公開価格(2250円)で頭を押さえられているようにみえます。吸収金額の大きな銘柄が公開価格割れするとこのような動きになりやすいので、注意が必要です。


【QBネットHDの週足チャート(2018年3月~2019年3月)】



QBネットHDの株価推移(2019年3月~2021年1月)

株価は2019年3月に2000円の大台を下回る局面はあったものの、その後は持ち直し、2000円台前半から半ばまでのレンジ内での動きとなりました。

株価水準に大きな変化が出たのは2020年2月です。新型コロナウィルスが世界的に拡大し始めた時期ですね。全体相場が大崩れしたこともあり、株価は一気に1500円を下回る水準まで下落しました。

ただ、その後過度な懸念が後退し全体相場はリバウンド局面となり、同社の株価も5月に2000円の大台を回復しました。しかし、回復は一時的。2021年1月まで株価は下落トレンドが続き、1300円台まで下落しました。これは行動制限などの影響が意識され、業績懸念が台頭したことが要因と考えられます。


【QBネットHDの週足チャート(2020年1月~2021年1月)】



QBネットHDの株価推移(2021年1月~2023年2月)

2021年は新型コロナへの過度な警戒が薄れはじめた時期です。同社の業績についても、19.6期の営業利益19.7億円→20.6期の営業利益2.4億円→21.6期の営業利益4.6億円→22.6期の営業利益14.0億円とV字回復しています。

このような状況もあり、2021年の株価は1500円~2000円のレンジで推移しました。

しかし、2021年11月から株価は再び下落トレンドとなります。これは全体相場が崩れ始めた時期と一致しますので、個別の要因というよりもマーケット全体の影響と考えられます。2022年5月24日には上場来安値となる1228円まで下落。その後はやや切り返すも1000円台半ばで株価は推移しています。


【QBネットHDの週足チャート(2021年1月~2022年10月)】



最後に

「QBハウス」全店にて2023年4月から、通常価格を税込み1200円から同1350円に値上げするとしています。値上げは、収益性の向上はもちろん、待遇改善などにより、高止まりしている退職率(国内正社員の23.6期上期の退職率10.7%)の低下にもつながることが期待されます。

値上げ後に客数が減少しないか、5月初旬に発表される4月の月次来店客数を確認したいところです。ただ、これだけモノ・サービスの価格が上昇している状況ですので、顧客に理解されやすいはずです。今回の値上げで客数が大幅に減少することにはならないと考えます。


業績については、23.6期の会社予想の営業利益は15.0億円(前期比7.3%増)となっています。コロナ前の水準(19.6期の営業利益19.7億円)をまだ超えられない状況です。ただ、24.6期の市場コンセンサスは20.9億円となっています。アナリストは来期の大幅増益を見込んでいます。コロナ禍からの完全復活となり、アナリストの予想どおり業績が伸びれば、いまの株価(1000円台前半)には水準訂正の余地は十分にあると考えます。



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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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