あの株はいまいくら?

第20回「月額制ファッションレンタルサービスのエアークローゼット リオープン関連株の出遅れ?」

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はエアークローゼット(9557)をみていきます。


月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」を運営するエアークローゼットは、2022年7月29日に東証グロースに上場しました。


「airCloset」は、「自らの好みやサイズなどを登録した上で、パーソナライズされたレンタルアイテムを受け取り、返却期限やクリーニングを気にすることなく楽しみ、返却するというシンプル なサービスであり、気に入った洋服は買い取りが可能」とのことです。


収益構造は、月額会費および販売による売上が90%以上を占めており、そこから変動費{物流オペレーションコスト(配送・クリーニング含む)+ スタイリング費用など}を差し引いたものが限界利益となり、そこから固定費{洋服仕入に伴う償却費 (レンタル用資産償却費)+広告宣伝費+人件費など}を差し引いて営業利益を計算します。収益構造はシンプルですので、財務分析は行いやすいと考えられます。


上場時点では前22.6期の営業損益は5100万円の赤字予想となっており、さらに円安や原油価格の高騰により今後の物流オペレーションコスト(配送・クリーニング含む)の上昇が懸念される状況でした。一方、アフターコロナで再び成長性が高まることへの期待もありました。

では、エアークローゼットの上場からの株価の動きを振り返ります。



エアークローゼットの株価推移(上場から2022年末まで)

2022年7月29日に上場した同社の初値は910円。公開価格800円を上回る堅調なスタートとなりました。赤字上場への警戒感は強かったものの、米国株が続伸していたことでマザーズ指数が3カ月ぶりの高値を付けて始まるなど、環境改善が後押しとなりました。


上場当日の終値は1060円、土日を挟んで上場2日目の8月1日には一時1250円まで上昇しました。これが上場来高値となります。


同社については上場直後こそ盛り上がりましたが、そこから下落トレンドとなりました。8月半ばには公開価格800円を下回り、その後も短期的な切り返しはあっても、下落基調は変わらず、年末には500円どころまで株価は下落することになりました。



【エアークローゼットの日足チャート(2022年7月~2022年12月)】



エアークローゼットの株価推移(2023年1月~2023年6月)

2023年に入っても緩やかな下落基調は続き、5月には株価は400円を下回る水準まで下落、これは公開価格800円の半値の水準です。そして、6月2日に上場来安値368円をつけました。


5月の株価下落は、業績の下方修正が要因です。同社は5月15日に23.6期通期の営業損益予想を1.1億円の黒字から2.2億円の赤字に引き下げました。

この要因としては、新規会員獲得が期初における見込みを下回り、会員数が計画比で未達となったことにより、売り上げが想定を下回る見込みとなったことが挙げられています。


上場直後から下げ続けてきた株価ですが、6月上旬を底に上昇トレンドに転じています。また、株価上昇を後押しする以下の材料も出てきています。


6月16日には、独自のデータ解析・AI開発について紹介する特設ページ「airCloset Data Science Collection」に、生成系AIを含む最新の研究成果を公開したことを発表。ファッションの体験データを用いたAI・データ活用には大きな可能性が秘められており、今後も実サービスへの導入に向けた研究開発を進めていくとしています。

6月22日には、柴咲コウさんがプロデュースする「MES VACANCES」とのコラボ企画で、「airCloset」のデータを活用し、限定アイテムを共同で企画・開発することを発表。7月 10日から、「MES VACANCES」と「airCloset」の公式サイトにて、販売・レンタル提供を開始するとしています。



【エアークローゼットの日足チャート(2023年1月~7月6日)】



リオープン(経済再開)関連株の出遅れ?

同社の23.6期3Qの決算説明会資料では月額会員一人当たり限界利益については前期と同水準で推移しているとの記載があります。これは物流オペレーションコストをうまくコントロールできているということです。したがって、会員数を伸ばすことができれば、業績は大幅に改善することになるでしょう。


経済再開の後押しもありますので、24.6期(来期)は会員数をさらに伸ばせる可能性は高いと考えられます。そうなれば、24.6期(来期)の黒字転換が見込まれます。


8月中旬に予定されている通期の決算発表において、実現できるかはともかく、24.6期の強気な見通しが出されれば、株価は大きく反応する可能性があります。株価は上場以来下げ続けてきました。リオープン(経済再開)関連株の出遅れとして、株価上昇に期待してみるのも面白いと考えます。


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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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