「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回は魁力屋(5891)をみていきます。
2023年12月15日に東証スタンダードに上場した同社は、 ラーメンチェーン「京都北白川ラーメン魁力屋」を展開しています。
自身も2年ほど前に京都で魁力屋のラーメンをはじめて食べました。ラーメンはもちろんおいしかったのですが、店員の方の声が大きく、お店の雰囲気が非常に良かったことが印象に残っています。
IPOについては、長期的な国内店舗数の目標を700店舗とし、出店攻勢をかける外食株として高い評価が期待される一方、物価高のなかで値上げの難しい業態でもあることが懸念されていました。では魁力屋の初値からの動きを確認していきます。
魁力屋の株価推移(上場から2024年3月29日まで)
同社の初値は1822円と公開価格1400円を大きく上回りました。コロナ収束後の再成長が期待されたこともあり、堅調な初値となりました。ただ、終値は1680円と初値を下回る結果となりました。なお、上場初日の安値1610円が上場来安値となっています。
その後の株価推移については、上場後にIPOラッシュ本格化が控えていたこともあり、懸念する声もありましたが、杞憂に終わります。上場3日目に一時的に2000円の大台乗せ、年末年始にさらに一段高となり、2000円台を定着させました。
その後も堅調な株価推移は続き、株価は2000円台半ばまで上昇。このタイミングで上場後初の決算発表を迎えました。
2024年2月14日に発表された23.12期の営業利益は6.8億円(前の期比78.3%増)となり、上場時点の会社予想6.0億円を上回りました。
併せて発表した24.12期の営業利益予想は7.4億円(前期比9.1%増)でした。原材料価格の高止まりや人件費の上昇などの懸念材料はあるものの、売上高の増加などにより増益を見込むとしています。
前期の増益率と比べると今期の数値は物足りない印象です。決算発表を受けた株価は売りでの反応となり、大幅に下落しました。しかし、下落は一時的なものとなり、切り返しの動きとなります。
株価上昇を後押ししたと考えられるのが、月次の売り上げ速報です。2月14日に発表された24.12期1月度直営店売上速報では、既存店売上高が8.1%増、同客数が5.4%増となりました。
さらに、3月5日発表された24.12期2月度直営店売上速報では、既存店売上高が11.7%増、同客数が7.0%増と順調に伸びています。
このような好調な月次売り上げの後押しもあり、3月に株価は3000円の大台に乗せます。そして3月21日に3535円まで上昇、これが上場来高値となっています。
【魁力屋の日足チャート(上場から2024年3月29日まで)】
魁力屋の株価推移(2024年4月1日~5月30日まで)
3月21日の上場来高値を付けましたが、堅調だったのはここまで。そこからずるずると下値を切り下げる展開が続き、4月半ばにようやく下げ止まります。しばらく2000円台後半でもみ合いますが、5月半ばに急落。これは決算発表を受けたものです。
5月15日に発表した24.12期1Qの営業利益は2.2億円(前年同期比9.4%増)、純利益は1.4億円(前年同期比比3.3%減)となりました。
気になったのは、営業利益率が7.5%(前年同期は8.0%)と低下していたことです。これは、前期4Qの公募増資に伴い租税公課が前期比約1800万円増加したためとしています。
営業利益率の低下が響いたのかはわかりませんが、この発表を受けて翌16日の株価は窓を開けて急落。新興市場全体が軟調だったこともあり、その後も下げが続き足元の株価は2000円台前半で推移しています。
【魁力屋の日足チャート(上2024年3月29日~5月30日まで)】
今後について
2024年4月末時点で全国に151店舗を展開しています。2024年12月末には163店舗(2023年12月末は145店舗)まで増加させる計画です。
同社は出店余地を約600店舗としており、さらなる店舗増が期待されます。さらに、「京都北白川ラーメン魁力屋」のブランド力を活かし海外進出の検討を進めているとのことですので、成長が楽しみな銘柄ではあります。
しかし、ラーメン業界は原材料価格の高止まりや人件費の上昇など厳しい市場環境が続いています。店舗数の増加がしっかりと営業増益につながるということを確認すべきと考えますので、いまのところは様子見が良いでしょう。
ただ、上場に際して優待制度導入に前向きな社長発言が出ていました。上場来高値からはかなり下げてきてますので、優待導入に期待して安値で拾っておくというチャレンジはありだと思います。