「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はVRAIN Solution(135A 以下、VRAIN)をみていきます。
2024年2月22日に東証グロースに上場した同社は、製造業界向けAIベンチャーであり、具体的にはAIシステムとDXコンサルティングの2つを提供しています。同社では、製造業に向けて両ソリューションを提供している企業は国内において多くなく、これが優位性につながっているとしています。
AIシステムでは、人の目に頼らず省力化・自動化を可能にするAI技術を活用したAI外観検査システム「Phoenix Vision/Eye」の開発・販売を行っています。
なお、同社は自社のAIシステムの強みとして、「製造業に対する豊富な知識」、「企画から導入までワンストップ対応」、自社開発のAI技術による外観検査処理」、「汎用性の高さ」を挙げています。
DXコンサルティンでは、AIやIoTなどの新しい技術を活用したDX推進を支援するサービスを提供しています。同社のコンサルタントが顧客のDXプロジェクトにおいて、課題設定フェーズから運用フェーズまでのプロジェクト全体に携わっているとのことです。
2023年の夏以降、AIベンチャー人気には陰りが出てきていました。しかし、業績が急拡大しているタイミングでの上場だったこともあり、好調な初値が期待されていました。では、上場からの動きをみてきます。
VRAINの株価推移(上場から2024年4月30日まで)
同社の初値は5190円と公開価格2990円を大きく上回りました。さらに大引けにかけて強い動きとなり、上場初日の終値は5810円と初値を大きく上回りました。
上場2日目も勢いは継続し終値は6810円となりましたが、上昇ペースが速かったことから上場3日目からは軟調な展開となります。しかし、5000円台半ばまで調整したところで、上昇に転じます。その後に上値を7440円(3月7日高値)まで伸ばしました。
残念ながら、今回も勢いは続かず、また5000円台半ばまで調整します。同社株のすごいところは、ここからまた切り返しの動きになったことです。3月のIPOラッシュ前の空白期間だったこともあり、3月21日には7890円まで上昇しました。なお、これが上場来高値となっています。
ただ、3月21日からIPOラッシュがスタートしたこともあり、一転して株価は下落基調となります。グロース市場が弱かったことも重なり、4月5日には4420円まで下落。ただ、そこから決算期待で上昇し、4月15日の決算発表を迎えました。
4月15日に発表された24.2期通期の営業利益は5.1億円(前の期比7.9倍)と非常に好調でした。併せて発表された、25.2期通期の営業利益予想は7.7億円(前期比51.8%増)となっています。24.2期に比べると25.2期はどうしても物足りない印象です。
この発表を受けて株価は急落。決算発表翌日はストップ安となりました。ストップ安しても下げ止まらず、4月22日に3635円の安値を付けたところで、ようやく下げ止まりました。
【VRAINの日足チャート(上場から2024年4月30日まで)】
VRAINの株価推移(2024年5月1日~6月27日まで)
5月に入ると株価は4000円を中心として上下500円程度でのレンジでの推移となりました。しかし6月に入ると徐々に下値を切り下げはじめ、6月14日に3130円まで下落。これが上場来安値となっています。
長く下落基調が続いていましたが、6月後半にようやくトレンド変化の兆しが出てきました。グロース市場が復調してきたこともあり、同社にも買いが向かい、株価は4000円の大台を一時回復しました。なお、直近で5日線が25日線を上回るゴールデン・クロスを形成、さらに25日線が上向いてきています。
【VRAINの日足チャート(2024年5月1日~6月27日まで)】
今後について
24.2期の利益が大きく伸びすぎたことで25.2期が物足りなく見えますが、成長が期待できるAIベンチャーであることには変わりありません。なお、同社は25.2期の方針として、増収増益を維持しつつ、採用を中心に事業成長に向けた投資を実施し、基盤を固めるとしています。同社はまだ上場したばかり。ここでしっかりと基盤づくりを行ってほしいと思います。
また、同社の決算説明会資料には、「日本の生産年齢人口は2020年から2070年にかけて2974万人の減少が見込まれる。人手不足により後継者不在が顕著となり、自動化・DX化が求められている」との記載があります。したがって、今後も自動化・DX化ニーズを取り込みながらの成長が期待されます。成長投資枠の活用など長期視点での投資を検討している人には、上場来高値から大きく調整している今の状況はチャンスであると考えます。