あの株はいまいくら?

第53回 半導体製造装置部品の販売・修理の「TMH」 利益率が注目ポイント

「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はTMH(280A)をみていきます。


同社は越境ECサイト「LAYLA-EC」などを活用した半導体製造装置部品の販売および修理サービスを提供しています。「LAYLA-EC」を通じて世界中の装置や部品情報を集約し、半導体製造装置の調達プロセスを効率化。また世界中のエンジニアリング会社やサプライヤーと連携し、多様な顧客ニーズに応えるソリューションを提供しています。これにより、半導体工場は必要な装置や部品、修理サービスをスムーズに受け取ることが可能となっています。

なお、日本国内の半導体工場の50%以上が「LAYLA-EC」を利用しているとのことです。


同社の上場については、政府の旧型半導体工場誘致の追い風を受け業績が急成長していたことから、堅調な初値形成が期待されていました。では、TMHの株価の動きをみていきます。



TMHの株価推移(上場から2025年1月8日まで)

2024年12月4日に東証グロースに上場した同社の初値は2128円と公開価格1500円を大きく上回りました。上場初日に2208円まで上値を伸ばしましたが、この2208円が上場来高値(2025年1月23日時点)となっています。


昨年後半のIPOでセカンダリーの好調が目立ったのは、機関投資家の参戦余地がある銘柄に限られ、上場規模が小さく、個人主体の銘柄は苦戦を強いられる状況でした。公開規模が10億円程度だった同社も例外ではなく、上場後は軟調な展開となりました。


上場2日目に大幅安になると、その日から7日続落となり、公開価格1500円を下回る水準まで下落。その後、1400円前後での推移が年末まで続きました。年末年始の直近上場株物色の流れからようやく上昇局面となり、1月8日には1827円まで上昇しました。


このような状況で1月14日に上場後初の決算発表を迎えます。24.11期通期の営業損益は3.2億円の黒字(前年同期は1.3億円の赤字)となりました。上場時点の予想は3.6億円の黒字でしたので、小幅ながら上場時点の予想を下回りました。


25.11期の営業利益予想は3.0億円の黒字(前期比8.4%減)~3.7億円の黒字(前期比13.2%増)のレンジとしました。上限は同社の想定する年間業績予想であり、下限は2025年11月における大型案件の売り上げが翌期にずれた場合としています。


この決算を受けた翌営業日の株価は窓を開けて急落。23.11期から24.11期が黒字転換となったことから、25.11期の業績拡大期待が高まっていました。会社予想は上限でも物足りない数値だったと想定されますので、株価下落は仕方のないものと考えます。その後の株価も下落が続き、足もとの株価は1100円台となっています。



【TMHの日足チャート(上場から2025年1月23日まで)】



今後について

25.11期の業績予想はそれぞれ上限で売上高は83.6億円(前期比39.0%)、営業利益は3.7億円(前期比13.2%)としています。営業利益率は4.37%です。24.11期の実績は60.2億円(前期比3.4倍)、営業利益は3.2億円(前年同期は1.3億円の赤字)で、営業利益率は5.37%です。


このように25.11期は営業利益率が低下する見通しとなっています。ただ、決算説明資料では、中期的なマージンターゲットとして、営業利益率目標15%が掲げられています。これは、売り上げの拡大に伴う販管費率低下や収益性の高いビジネスを実現するとともに、効率化を追求することで 成長期においても経費削減を実現し、達成をめざすとしています。


最後に、同社は、25.11期に半導体業界に特化した人材プラットフォーム事業開始し、それにより新たなニーズを掘り起こすとしています。また、広島、北海道など新たな半導体工場建設が加速しており、25-27年にかけて重要顧客に隣接したエリアに営業拠点を設け市場拡大を狙うとしています。

これらの施策がしっかりと収益に結び付き、利益率改善が進めば株価も大きく上昇することが期待されます。まずは26.11期にしっかりと利益率を改善できるかが注目です。短期というよりは長期でみていきたい銘柄であると考えます。



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日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

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