「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はnote(5243)をみていきます。
C to Cメディアプラットフォーム「note」、メディアSaaS(Software as a Service)「notepro」の運営を行う同社は2022年12月21日に東証グロースに上場しました。
想定価格は300円、そして仮条件は300円~340円となり、公開価格は上限の340円で決定しました。想定価格からはやや上振れです。では、noteの上場後の動きを見ていきたいと思います。
noteの株価推移(上場から2023年3月7日)
2022年12月21日に上場した同社の初値は、公開価格340円を大きく上回る521円となりました。
好調な初値でしたが、ベンチャーキャピタル(VC)などの持ち分(実質8名計438万1800株)については公開価格の1.5倍以上でロックアップが解除されるので、その解除価格510円が強く意識される展開が続きました。
上場2日目こそ終値は519円と解除価格を上回りましたが、翌日に急落。翌年の1月4日には401円まで下落しました。これが上場来安値となります。その後、一時的に解除価格を超える場面もありましたが、しっかりと終値で解除価格を上回ったのは2月8日となりました。
ベンチャーキャピタル(VC)などの売りに上値が抑えられるわかりやすい展開となりました。この水準を上抜けるためにはかなりのパワーが必要です。
noteの場合は、2月8日から明確に流れが変わり、終値で解除価格を上回りました。翌9日にはストップ高まで上昇。13日には終値が700円を超えました。
この上昇のきっかけは、最新のチャットAIを活用した創作支援ツール「note AIアシスタント(β)」を近日公開するにあたり、先行ユーザーの募集を2月8日より開始すると発表したことです。OpenAI社の「ChatGPT」にも搭載されている、GPT-3を採用したとのことで、期待が高まりました。
最近ではGPT-3やGPT-3.5などを採用したツールはめずらしくはなくなってきましたが、2月時点では数が少なかったので市場の注目を集めました。
さらに、2月21日にGPT-3と連携した創作支援ツール「note AIアシスタント(β)」の第2弾機能を公開したと発表、それを受け株価は急騰しました。
このような流れから株価は騰勢を強め、3月7日に上場来高値927円をつけました。ただ、期待先行という側面が強いといえます。
業績拡大による株価上昇の場合は、水準訂正となることが多く、値を保ちやすいといえますが、期待先行で上げた場合はその後の揺り戻しが警戒されます。実際に同社株も3月末にかけて下落していきました。
【noteの日足チャート(上場から2023年3月まで)】
noteの株価推移(2023年4月~2023年7月25日)
4月上旬はなんとか値を保っていたのですが、中旬から下げ足を早めました。これは、決算が要因です。
4月14日、従来未定としていた23.11期通期の営業損益予想を4.3億円の赤字~6.3億円の赤字(前期は7.3億円の赤字)にすると発表しました。先行投資により赤字継続を見込むとしています。併せて発表した、23.11期1Qの営業損益は2.2億円の赤字(前年同期は1.3億円の赤字)となり、前年同期比で赤字拡大となりました。
期待先行で上がっていた株価は、赤字継続予想を受けて下落が続きました。7月中旬には、解除価格である510円を下回る水準まで下落。7月14日の23.11期上期決算発表を受けて、やや持ち直しましたが、解除価格近辺での株価推移が続いています。
【noteの日足チャート(2023年4月~2023年7月25日)】
今後について
売上高は順調に増加していますし、コストマネジメント強化により、赤字幅は縮小傾向にあります。ただ、上場時に期待されていたほどには売上高が伸びていない印象です。早期の黒字化に向けたコストマネジメント強化の取り組みは評価できますが、コスト削減には限度があります。
なお、人員数については足元では採用活動を抑制していることで、23.11期1Qの180人から23.11期2Qは175人と減少しています。
赤字を縮小させることは重要ですが、上場してまだ1年も経過していませんし、採用抑制などのコスト削減に注力して大丈夫なのかと思ってしまいます。どこか成熟企業のような雰囲気が漂っているところが、株価の伸び悩みにつながっているのかもしれません。
23.11期の下期については、SNSプロモーション機能の導入など下期に向けてGMV(流通総額)拡大につながる施策を実施するとしています。それがしっかりと売り上げ増に結びつくか、注目したいと思います。黒字化に向かっているという認識をしっかりと投資家に持ってもらえれば、株価の評価は大きく変わると思われます。