「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はヤプリ(4168)をみていきます。
スマホアプリの開発・運用・分析をノーコード(プログラミング不要)で提供している同社は2020年12月22日に東証マザーズに上場しました。
同社の提供するクラウド型ソフト「ヤプリ」は、ドラッグ・アンド・ドロップなど直感的な操作により、ノーコードでしかもiOSとAndroidの両方を同時に開発できるということで、注目されました。
ただ、業績については赤字が継続していました。売上高は順調に伸びていたものの、TVCMなどの投入で広告宣伝費を大幅に増やしていたことが要因です。
では、ヤプリの上場後の株価の動きを見ていきたいと思います。
ヤプリの株価推移(上場から2021年12月)
2020年12月22日に上場した同社の初値は、公開価格3160円を大きく上回る5240円となりました。世界的にも例のないアプリ開発ツールを手掛けるとあって、海外投資家からの注目度も高く買いが殺到しました。
上場後も水準を切り上げる動きが続き、年明け早々に6000円の大台に到達。いったん売りに押されるものの1月25日に7690円まで上昇しました。これが上場来高値です。なお、ここから下落トレンドがスタートとすることになります。
株価が下落基調となるきっかけとなったのが、2021年2月15日に発表した通期決算です。20.12期通期の営業損益は5.9億円の赤字、21.12期通期の営業損益予想は9.4億円の赤字~8.8億円の赤字(レンジ形式)と発表しました。
中長期的な事業成長および企業価値の最大化に向けた積極的な投資フェーズであることから、赤字見通しとしました。積極的な投資フェーズなので、赤字は仕方のないことだと思いますが、これが嫌気されました。
この発表を受け、株価は5000円台まで一気に下落。その後も下落トレンドは続き、8月には3000円を一時下回りました。そこからいったん反発し11月に5000円の大台を回復したものの続かず、年末には4000円を割り込みました。
【ヤプリの週足チャート(上場から2021年12月まで)】
ヤプリの株価推移(2022年1月~2022年12月)
IPOのコロナバブルの状況では「赤字でも増収ペースのSaaS関連なら許される」という空気が広がっていましたが、2021年後半から風向きが変わり始めます。
2022年に入り、マザーズ指数は下げ足を速めますが、これは「米国金利上昇→グロース株売り→SaaSバブル崩壊」という流れだったと考えられます。
同社も赤字のSaaS関連であり、この影響をもろに受けました。公開価格3160円を割り込んだと思ったら、あっさりと2000円も下回りました。5月には1051円まで下落。あやうく1000円の大台を下回りそうになりますが、何とか大台は死守しました。しかし、大きな流れは変わらず。2022年12月にはとうとう1000円下回ることになりました。
【ヤプリの週足チャート(2022年1月~2022年12月)】
ヤプリの株価推移(2023年1月~7月20日)
2023年に入っても下落トレンドは継続し、4月に上場来安値742円をつけました。上場来高値7690円の10分の1以下ですね。ただ、5月に切り返しの動きとなります。
きっかけは、5月12日に発表した23.12期1Qの決算です。23.12期1Qの営業損益は7100万円の黒字(前年同期は3億9300万円の赤字)となり、初の四半期黒字化を達成しました。経営体質改善が寄与したとのことです。
同社は、2月13日に23.12期通期の営業損益予想を2400万円の黒字と発表していましたが、株価はそこからさらに下げていました。これは黒字転換を疑問視する人が多かったためと思われます。ただ、1Qでしっかりと結果を出したことで、今期業績への期待が高まったと考えられます。
【ヤプリの週足チャート(2023年1月~7月20日)】
今後について
一般的にSaaS企業は損益分岐点さえ超えられれば大きな収益を上げやすいといわれています。
同社の契約アプリ数は順調の増加しており、平均月額利用料も上昇が続いています。広告宣伝費次第という側面はあるものの、そこは会社側でコントロールできることから、2Q以降もしっかりとした利益が出る可能性は高いと思われます。
本格的な業績拡大となれば、さらなる株価の水準訂正が期待できます。数年後には「2023年5月が中長期的な株価上昇の起点だった」といわれているかもしれません。今後の動向にぜひ注目してみてください。