「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はmonoAI technology(5240 以下、monoAI)をみていきます。
2022年12月20日に東証グロースに上場した同社は、メタバースプラットフォーム「XR CLOUD」を運営しています。「XR CLOUD」は、だれでも、どこからでも、大勢で同時接続できる仮想空間共有技術プラットフォームとのことです。
同社のメタバースサービスでは、仮想空間内で行われるライブ・展示会などの需要に対し、顧客ごとのシステム開発およびオンラインゲーム開発、顧客の要望によってはライブ・展示会などのイベント運営、集客代行、運営支援を行っています。
2022年12月はリオープン(経済再開)の動きが出始めたころであり、一部のアナリストは仮想空間イベントのニーズの先行きについて不透明感を持っていましたが、全体としてはメタバース関連への市場の注目度はまだまだ高く、初値高騰が見込まれていました。では、monoAIの上場からの動きを見ていきます。
monoAIの株価推移(上場から2023年3月まで)
2022年12月20日に上場した同社の初値は1280円と公開価格660円を大きく上回りました。高騰したものの倍値には届きませんでした。これは前日の米国株安に加え、昼休み中に日銀が突然の実質利上げを決めたことで後場は大混乱となったことが響いたとみられています。
上場後は実質利上げに伴う外部環境の悪化を受けて同社株もいったん売りに押されますが、年末年始のタイミングで切り返しの動きとなり、年が明けた1月16日には一時2000円の大台に乗せました。
そして、2月14日に通期決算を発表。22.12期通期の連結営業利益は7000万円の黒字(前の期は1億3600万円の赤字)となりました。なお、23.12期の連結営業利益予想は1.0億円の黒字としました。
決算発表を受けた株価反応は、買い先行もその後は売りに押される展開。しかし決算発表後から上昇トレンドとなり、3月7日に上場来高値2390円をつけました。なお、ここから下落トレンドが始まります。
【monoAIの日足チャート(上場から2023年3月まで)】
monoAIの株価推移(2023年4月~2023年7月)
3月7日に上場来高値2390円をつけてから株価は下落トレンドとなり5月に入りようやく下げ止まりました。
そして、5月26日には久しぶりに大きな動きが出ました。同社は26日12時に、Epic Gamesが配信しているオンラインゲーム「フォートナイト」に特化した法人向けのメタバース空間制作サービスを開始すると発表。これが材料となりました。
26日はストップ高まで上昇。しかし翌営業日となった29日は高くスタートするもその後は売りに押されました。ここまで大きく下げてきましたので戻り待ちの売りも多かったのでしょう。その後も株価は水準を切り下げ、7月後半にはいよいよ1000円の大台割れが視野に入ってきました。
【monoAIの日足チャート(2023年4月~2023年7月)】
monoAIの株価推移(2023年8月~2023年10月24日)
8月に入っても1000円の大台はキープしていましたが、8月14日にあっさりと割り込みます。きっかけは上期の決算発表です。
同社は8月10日に23.12期上期(1-6月)決算を発表。連結営業損益は8900万円の赤字(前年同期は1200万円の黒字)となりました。通期の営業損益予想については1.0億円の黒字を据え置きましたが、上期は赤字であり通期の黒字化さえも「大丈夫なのか?」という状況ですので、売りが殺到しました。決算発表を受けた14日の株価は急落し、終値は822円となりました。そして、翌15日には800円台を割り込みました。
その後も米国の金利上昇そして高止まり懸念などを背景に厳しい地合いが続き、同社の株価は9月21日に終値で700円を下回りました。そして、10月に入り大きな動きが発生します。きっかけは通期業績の下方修正の発表です。
同社は19日、23.12期通期の連結営業損益予想を従来の1.0億円の黒字から1.5億円の赤字(前期は0.7億円の黒字)に下方修正すると発表しました。
メタバースサービスが主要取引先からの大幅な売上高減少などにより予想を下回ることになったことなどにより、前期比で減収の見通しとなったことが響くとしています。
通期業績未達懸念はあったものの、一転赤字は想定外だったようで株価は急落。10月23日にストップ安となり515円まで下落。24日には一時476円まで下落し、上場来安値を更新しました。
【monoAIの日足チャート(2023年8月~2023年10月24日)】
今後について
メタバース関連として期待が先行していた面はありますが、株価低迷の要因は業績の先行きが不透明であることと考えます。
10月19日に発表した業績の下方修正では、メタバースサービスが主要取引先からの大幅な売上高減少などにより予想を下回ったことが要因として挙げられています。
上場時点で、一部のアナリストは「仮想空間イベントのニーズの先行きについては不透明感がある」と指摘していましたが、その指摘が当たっていたという印象です。
足元は世界的な経済再開の流れもありリアル重視になっていますが、メタバースの盛り上がりがなければmonoAIの成長どころか、黒字転換も望みづらいでしょう。今年4月には、「米Metaがメタバース事業から撤退する」という憶測が広まりました。これは誤報でしたが、そのような話が出てくるということは、メタバースが盛り上がっていない証左といえるでしょう。monoAIに投資するにしても、再度メタバースが脚光を浴びる状況になる、またはその兆しが出てくるまで、少し様子を見たほうが良いと考えます。