「あの株はいまいくら?」では、話題になった銘柄の現状を確認します。今回はPHCホールディングス(6523)をみていきます。
2021年10月に上場したPHCHDは、旧パナソニックヘルスケア(現PHC)の持ち株会社です。パナソニックの完全子会社でしたが、14年3月に親会社の財務改善を目的に米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に売却されました。KKR傘下入り後はパナソニック以外からの事業買収を進め、18年4月には現商号に変更し、パナソニックを社名から外しています。
同社は各種ヘルスケア機器・サービスの開発・製造・販売を行っており、特に糖尿病分野が稼ぎ頭となっています。では、上場からの株価の動きを振り返ります。
PHCHDの株価推移(上場から3カ月)
2021年10月14日に上場した同社の初値は、公開価格3250円を下回る3120円でした。
投資家から不人気なファンドの出口案件であったこと、出口案件のなかでも財務内容が悪かったこと(有利子負債比率は約6割、のれん無形資産・資本倍率は2.6倍)、上場の過程で公開株数が大きく引き下げられことなどにより、当初から初値苦戦が予想されていました。結果は、予想通りの厳しいスタートとなりました。
同社は初値が上場来高値となっており、初値天井です。ただ、一般的に初値天井は「上場初日に過度に人気化し、その後は株価が伸び悩むこと」を指すことが多いです。同社の場合は公開価格割れであり、初値天井ですが人気化したとは言い難いですね。
株価は上場直後からきれいな右肩下がりとなり、3カ月で初値の半値の水準まで下落しています。その間、証券会社から強気のレポートもいくつか出ましたが、流れを変えることはできませんでした。
【PHCHDの日足チャート(2021年10月~2022年1月)】
PHCHDの株価推移(2022年2月~12月)
2022年の株価推移は週足でみていきます。上場から下落の続いていた株価ですが、1500円どころでいったん下げ止まり、4月には2000円に近づく場面もありました。
その流れを変えたのは、業績の下方修正です。同社は4月28日、22.3期通期の連結営業利益予想を従来の273億円から89億円(前期比49%減)に下方修正すると発表しました。従来予想は55%増でしたので一転減益です。
そこから株価は下落基調となり、6月には上場来安値1193円をつけました。なお、ここで株価は底打ちし、以降は1500円を挟んだレンジでの動きが年末まで続きました。
【PHCHDの週足チャート(2022年2月~12月)】
PHCHDの株価推移(2023年1月~5月)
2023年に入っても1500円を挟んだ動きでしたが、2月に窓を開けて急落しています。これも業績の下方修正が要因です。4月10日に、23.3期通期の連結純損益予想(IFRS)を従来の167億円の黒字から97億円の黒字(前期は85億円の赤字)に下方修正すると発表しました。
4月26日にはさらなる業績の下方修正を発表。23.3期通期の連結純損益予想(IFRS)を従来の97億円の黒字から33億円の赤字(前期は85億円の赤字)に下方修正しました。要因は約87億円ののれんの減損損失の計上を見込むためとしています。
【PHCHDの日足チャート(2023年1月4日~5月11日)】
今期はV字回復見通し
同社は5月10日に通期決算を発表。23.3期通期の連結純損益(IFRS)は32億円の赤字(前期は85億円の赤字)と計画通りの着地となりました。24.3期通期の連結純損益予想は156億円の黒字とV字回復になる見込みです。病理事業のマージン改善の加速により減損を計上した前年比では大幅な増益を想定するとのことです。
株価は安値圏にありますので、順調な業績進ちょくが確認できれば、見直し買いが入る可能性は十分にあると思います。
ただ、上場してから業績の下方修正が続いています。会社予想が強気すぎるのではないかとみられてもしょうがないでしょう。また、23.3期末時点でものれんは1997億円計上されていますので、のれんの減損リスクも考慮すべきです。V字回復見通しでも株価の反応がいまいちなのはこのような要因があるからと考えられます。